猫の目の色
猫の目は虹彩(こうさい)が大きな割合を占めており、人間でいう「白目」(眼球結膜)は見られません。虹彩とは、角膜と水晶体の間にある薄い膜で、瞳孔の大きさを調節して網膜に入る光の量を調節する組織です。「猫の目の色」と言った場合は、通常虹彩の色を指します。
猫の目の色・基本編
猫の目の色は、おおむね以下に示した色調の範囲内に分類されます。
グリーン(緑)
ヘーゼル
ヘーゼルナッツの殻は単一色ですが、「ヘーゼル」という目の色はグリーンからブラウンのグラデーションになっています。しかしグリーンの色調が弱いため、ブラウンかカッパーに間違われることもしばしばです。
メラニン色素の量は中程度で、通常は外側が濃い色(カッパーやイエロー)で中央が薄い色(グリーン)という配列になっています。
アンバー(琥珀)
アンバーとは琥珀色のことです。ヘーゼルとよく似ていますが、ヘーゼルが複数色であるのに対し、アンバーは黄色系統の単一色から成り立っています。やや薄めのアンバーはイエロー、やや濃い目のアンバーはゴールドなどとも呼ばれます。
人間においてはメラニン色素のほか「リポクローム」と呼ばれる色素を含んでいると考えられますが、猫においては定かではありません。なお白目が黄色くなることを医学用語で「黄疸」(おうだん)と言いますが、猫のアンバーカラーは白目(結膜)ではなく虹彩が黄色くなった状態ですので全く問題ありません。
カッパー(銅)
カッパーとは銅色のことです。メラニン色素を多量に含んでおり、長い波長の光と短い波長の光の両方を吸収するため、全体としては黒っぽい色調になります。純血種の猫ではボンベイやブリティッシュショートヘアなどでよく見られます。
「黒っぽい」といっても人間のアジア人に見られるような限りなく黒に近い色は見られず、猫ではせいぜい濃い茶色程度です。これは人間では黒色を作り出す「ユーメラニン」が多く含まれているのに対し、猫では黄色を作り出す「フィオメラニン」が多く含まれているためです。
猫の目の色・特殊編
猫の目の色は通常、グリーンからカッパーまでの範囲内に入りますが、まれに違うパターンを示すこともあります。以下はその代表例です。
ブルー(青)
猫のブルーの瞳は、グリーンの場合と同様「レイリー散乱」と呼ばれる現象によって生み出されています。これは目の虹彩に含まれる少量のメラニン色素が長い波長の光を全て吸収し、残った青色や紫色だけを優先的に散乱するという現象のことです。ちょうど空気中を浮遊している細かい粒子が光を散乱し、空が青く見えるのと同じ現象ですので「瞳の青は空の青」といったところでしょう。純血種の猫ではシャムとその長毛種であるバリニーズ、ペルシャとその長毛種であるヒマラヤンなどで多く見られます。
市販の猫関連書籍の中には「ブルーの色素がある場合に目が青くなる」としているものがありますがこれは誤りで、逆に色素が極端に少ないからこそ短い波長の光(紫や青)の散乱が起こり、人間の目には青く見えます。
猫においては青い瞳に関連した遺伝子が4つ確認されており、その多くは遺伝的疾患とも結びついています。具体例としては内斜視(シャム)や聴覚障害(単一ホワイト)などです。しかしオホサスレスのブルーを生み出している遺伝子だけは別で、今のところ遺伝的疾患との明確な関連性は確認されていません。
猫においては青い瞳に関連した遺伝子が4つ確認されており、その多くは遺伝的疾患とも結びついています。具体例としては内斜視(シャム)や聴覚障害(単一ホワイト)などです。しかしオホサスレスのブルーを生み出している遺伝子だけは別で、今のところ遺伝的疾患との明確な関連性は確認されていません。
- キトゥンブルー
- 生まれて間もない子猫の場合、虹彩に色素が沈着していないことが多く、青目に見えることがあります。これを特にキトゥン・ブルー(Kitten Blue、「子猫の青」の意)といい、生後23日齢くらいから虹彩に色素がつき始め、徐々に本来の眼の色になっていきます。
レッド(赤)
レッドとは赤目のことで、メラニン色素を産生できない「アルビノ」と呼ばれる突然変異種において見られます。色素が全く作られない「アルビノ」は、ネコD1染色体に含まれる「TYR遺伝子」におけるシトシンの欠失変異で生じると推測されています(D.L.Imes, 2006)。アルビノ猫の特徴は全く色素を持たないため被毛が真っ白になるという点です。また目の虹彩やタペタム層の色素も抜けていますので、血管が透けて赤みがかって見えます。写真を撮った時、まるでウサギのような赤目になるのはそのためです。普通の白猫とアルビノ猫を見分ける際は、目の中を覗き込めばわかるでしょう。色素が欠落して赤目だったら「アルビノ」、ブルーなどその他の色だったら「白猫」ということになります。
オッドアイ
オッドアイ(Odd eye)とは、一頭の個体が複数の目の色を持っている状態のことです。日本では「金目銀目」と呼ばれてきましたが、正式には「虹彩異色症」(Heterochromia)といいます。
最も多いのは、白い毛を持ち、右と左で色が違うというパターンです。こうした個体は青い目の側の耳に非常に高確率で障害をもっていることがわかっています。オッドアイが多く見られる品種はターキッシュアンゴラ、ノルウェジャンフォレストキャット、メインクーンなどです。
聴覚障害の発症メカニズムとしては「白い被毛を作り出すW遺伝子→耳の中の蝸牛管に張り巡らされている血管線条内のメラニン細胞が働かなくなる→血管線条の血流障害が起こって蝸牛管の外壁にある不動線毛(stereocilia)が働かなくなる→外界からの音が脳に伝わらなくなる」というものが有力視されています。 しかし全ての白猫が聴力を失うわけでもありませんし、片耳だけ聞こえないという変則的な形もあります。ですから白い被毛を形成する遺伝子が聴覚障害に関わっている事は確かなものの、そこに何らかの調整遺伝子が関わって有病率を変化させていると考えられます。詳しくは以下の記事でも解説してありますのでご参照ください。
聴覚障害の発症メカニズムとしては「白い被毛を作り出すW遺伝子→耳の中の蝸牛管に張り巡らされている血管線条内のメラニン細胞が働かなくなる→血管線条の血流障害が起こって蝸牛管の外壁にある不動線毛(stereocilia)が働かなくなる→外界からの音が脳に伝わらなくなる」というものが有力視されています。 しかし全ての白猫が聴力を失うわけでもありませんし、片耳だけ聞こえないという変則的な形もあります。ですから白い被毛を形成する遺伝子が聴覚障害に関わっている事は確かなものの、そこに何らかの調整遺伝子が関わって有病率を変化させていると考えられます。詳しくは以下の記事でも解説してありますのでご参照ください。
ダイクロイックアイ
非常に稀な例としては「ダイクロイックアイ」(Dichroic eye)というものがあります。人間では「中心型虹彩異色症」(Central Heterochromia)、もしくは「扇型虹彩異色症」(Sectral Heterochromia)と呼ばれるもので、1つの眼球の中に複数の色が混在しているという状態です。
ヘーゼルに見られるような漠然としたグラデーションではなく、明確に区分できる2つの色から成り立っています。「中心型」の場合は虹彩の周辺部と中心部で違う色を成し、「扇型」の場合はまるでカットしたピザのように、虹彩の一部分だけが違う色を示します。
なお、生まれつきではなく、後天的に眼球の一部が変色した場合は、ダイクロイックアイではなく角膜炎(角膜分離症)の可能性がありますので、獣医さんに相談しましょう。 NEXT:猫の視力はどのくらい?
なお、生まれつきではなく、後天的に眼球の一部が変色した場合は、ダイクロイックアイではなく角膜炎(角膜分離症)の可能性がありますので、獣医さんに相談しましょう。 NEXT:猫の視力はどのくらい?
猫の視力
猫の視力を調べる際、学校の保健室にあるようなちぎれた輪っか(ランドルト環)を見せ、途切れている方向を前足で示してもらうといったことは当然できません。しかしある特定の模様(しましま模様や格子模様)を見分けたらおやつや水がもらえるという状況を設定し、猫の自発的な選択パターンを観察することにより、ある程度の視力を予測することはできます。果たして猫たちは、私たち人間が見ているのと全く同じ世界を見ているのでしょうか?
猫の視覚の発達
猫の視力は2週齢から10週齢の間で16倍に増加すると言われます。これは濁っていた眼房水(がんぼうすい)が徐々に透明になるためです。以下では、子猫の視覚の発達を、日齢ごとに表したリストを示します。
猫の視覚の発達
- 生後6日まで4日齢ではすでに大脳皮質における視覚の電位が記録され、6日齢には網膜電図が記録可能となる。
- 生後7~10日目が開き始め、2~3日かけて完全に開く。目が開く時期は「暗がりで育った」、「母猫が若い」、「メス猫である」、「父猫からの遺伝」などの条件が重なったときに早くなる。瞳孔反射も発達し、自動的に瞳孔の開閉ができるようになる。
- 生後15~25日奥行きを認識したり、物を追ったり母猫を探すといった行動が発達する。
- 生後25~35日障害物を避けることができるようになる。
猫の目の解像度
目が完全に開き、脳も十分に発達した猫の視力は、私たち人間の約10分の1程度といわれています。例えば人間の目で見たとき、1ミリメートルの間隔をあけて並んでいる2本の線を「2本ある」と認識できるとします。人間の視力の10分の1しかない猫の場合、この2本の線の間隔が1ミリメートルの10倍、つまり1センチメートルまで開かないと「2本ある」とは認識できない、と言う意味です。視力の具体的な数字としては、35日齢でおおよそ0.04(1cpd)、4ヶ月齢で0.2(5cpd)、成猫で0.3(8~9cpd)程度と推測されています。
人間に比べて猫の視力があまりよくない要因は以下です。猫が生まれつき持っている目の構造が、視力に大きく影響しています。
夜行性の猫は、少ない光をなるべく多く眼球内に取り入れるため、水晶体(すいしょうたい)と呼ばれるレンズ部分や角膜(かくまく)を発達させました。角膜は人間に比べて非常に大きく、眼球の外層30%を占めるほどです。この大きさゆえに屈曲率も大きく、やや近視傾向になってしまいます。しかしこのことは、猫にとって決して不利ではありません。猫が最も鮮明に対象を見ることができる距離は、およそ75センチくらいと言われており、これはちょうど、獲物を追いかけているときのターゲットの位置に当たります。ですから、狩りの成功率を高めるため、あえて近視になるように進化してきたとも言えそうです。なお、いくら近視傾向と言っても限界があり、25センチより近場には焦点を合わせることができないと言われています。また同じ猫でも、外育ちの猫は若干遠視傾向があるとも(Belkinら, 1977)。
猫の目はなぜ悪い?
- 光の反射タペタム層による光の反射が豊富なため、画像がぼやけてしまう。
- 白黒への感度白黒を認識する細胞である「杆状体」(かんじょうたい)が多いので、ちょっとした明暗に反応してしまい、画像の細部がぼやけてしまう。
- 水晶体の大きさ水晶体が大きいため自力で変形させることが難しく、調整力が人間の1/2~2/3程度まで落ちてしまう。
夜行性の猫は、少ない光をなるべく多く眼球内に取り入れるため、水晶体(すいしょうたい)と呼ばれるレンズ部分や角膜(かくまく)を発達させました。角膜は人間に比べて非常に大きく、眼球の外層30%を占めるほどです。この大きさゆえに屈曲率も大きく、やや近視傾向になってしまいます。しかしこのことは、猫にとって決して不利ではありません。猫が最も鮮明に対象を見ることができる距離は、およそ75センチくらいと言われており、これはちょうど、獲物を追いかけているときのターゲットの位置に当たります。ですから、狩りの成功率を高めるため、あえて近視になるように進化してきたとも言えそうです。なお、いくら近視傾向と言っても限界があり、25センチより近場には焦点を合わせることができないと言われています。また同じ猫でも、外育ちの猫は若干遠視傾向があるとも(Belkinら, 1977)。
猫の動体視力
動いているものを認識する動体視力(どうたいしりょく)に関しては、対象が1秒間に25~60度移動しているときに最大限発揮されます。これはちょうど、小動物がちょこまかと動くときのスピードです。一方、ゆっくり動いている物を見分けることは苦手で、1秒間に1~3度くらいしか動かないものは、もはや「止まっている」と認識されます。
動きの識別能力を表す「フリッカー融合頻度」に関し、猫は人間よりも優れているというのが通説です。フリッカー融合頻度とは、目が1秒間に取り込むことのできるスナップショットの数のことで、この度数が高ければ高いほど、高速で点滅する光の間に挿し挟まれる暗闇を認識することができます。一般的に人間のそれは「60/秒」程度と言われていますが、私たちの目には連続した光として見える蛍光灯やテレビ画面も、猫の目にはチカチカした点滅に見えていると考えられます。
動きの識別能力を表す「フリッカー融合頻度」に関し、猫は人間よりも優れているというのが通説です。フリッカー融合頻度とは、目が1秒間に取り込むことのできるスナップショットの数のことで、この度数が高ければ高いほど、高速で点滅する光の間に挿し挟まれる暗闇を認識することができます。一般的に人間のそれは「60/秒」程度と言われていますが、私たちの目には連続した光として見える蛍光灯やテレビ画面も、猫の目にはチカチカした点滅に見えていると考えられます。
- サッケード(saccade)
- サッケードとはすばやく動く対象をとらえるときの眼球運動のことです。猫はこのサッケードが非常に得意で、垂直運動で1秒間に250度、水平運動で1秒間に150度というスピードで目を動かすことができます。また猫は、ゆっくり動く対象に対してもサッケードで対応します。つまり目の前をカメが通り過ぎようとしているとき、猫は目を滑らかに動かすのではなく、まるでアナログ時計の秒針のように、「カチカチ」と断続的に動かすのです。
猫のこうした特徴は、すばしっこく動く小動物を獲物にしてきたことにより発達したのでしょう。このサッケードは、猫の目の前で指を左右に動かすことで確認することができます。ただし興奮して猫パンチされないよう注意して下さい。
猫の網膜と色覚
猫の網膜(もうまく)には白黒を判別する杆状体(かんじょうたい)と色を判別する錐状体(すいじょうたい)と呼ばれる細胞があります。
人と猫の網膜の違い
人間を始めとする霊長類には3種類の錐状体があり、虹の七色に代表される様々な色を識別できます。しかし犬や猫を始めとする夜行性の動物には、通常2種類の錐状体しかありません。霊長類は太陽が出ている間に活動する「昼光性」で、色彩豊かな果実などを主食としてきました。ですから、食べ物を見分けるための色覚能力は非常に重要な意味を持っています。それに対し犬や猫は、日が沈みかけてから活動する夜行性(もしくは薄明薄暮性)で、獲物を捕らえる際、色の識別はそれほど重要ではありません。霊長類と犬や猫の色覚能力に大きな差があるのは、進化の過程上当然の帰結とも言えるでしょう。
以下は猫と人間の視細胞の数を比較したものです。夜に活動する猫の杆状体(46万個)が、人間のもの(16万個)より圧倒的に多いことが見て取れます(Berkley, 1976)。
なお、アミノ酸の内でタウリンと呼ばれる成分が不足すると進行性網膜萎縮(しんこうせいもうまくいしゅく)という病気にかかり、夜目が利かないなど視野に障害が発生します。猫に不用意にドッグフードなどを与えないようにしましょう。
以下は猫と人間の視細胞の数を比較したものです。夜に活動する猫の杆状体(46万個)が、人間のもの(16万個)より圧倒的に多いことが見て取れます(Berkley, 1976)。
猫の視細胞
錐状体=1平方ミリあたり最大で2万6千個
杆状体=1平方ミリあたり最大で46万個
視神経=8万5万本
人の視細胞
錐状体=1平方ミリあたり最大で14万6千個
杆状体=1平方ミリあたり最大で16万個
視神経=120万本
猫に見えている色は?
網膜に含まれている杆状体や錐状体の違いにより、人間と猫とでは違った色世界を見ているものと推測されます。以下は猫の色覚予想図です。447ナノメートルの青色領域に反応を示し、554ナノメートルの黄緑色において最も感受性が高いと言われています。これらのデータを元に、「おそらく猫はこのように見えているだろう」という情景をご紹介します。
猫に色覚スペクトルには赤や緑が含まれていないため、色鮮やかな花畑を見ても人間のようには感動してくれないでしょう。またキャットフードは通常、肉を連想させるような赤色で着色されていますが、猫の色覚スペクトルでは赤色を認識できません。つまりフード内の着色料は、飼い主に「なんとなく美味しそうだ」と錯覚させるために加えられるまったく不要なものということです。
【画像元】How Cats See The World/YouTube
白と黒を判別する杆状体に関しては猫のほうが多く保有しており、ちょっとした明暗の違いでも見分けることができます。この能力は薄暗い中で小動物を捕獲して生き残ってきた猫の祖先(リビヤヤマネコ)から受け継いだものでしょう。また網膜の裏にある「タペタム」がごくわずかな光を反射して眼球の中で増幅してくれるというメカニズムも関係しています。
2014年に行われた研究により、犬や猫は紫外線を見ることができるという可能性が示されました。実験を行ったのはシティ大学ロンドンの生物学者ロン・ダグラス氏。様々な動物の眼球を調べたところ、ハリネズミ、イヌ、ネコ、フェレット、オカピーといった哺乳類の水晶体(光を通すレンズ)では、紫外線を通すことが明らかになったといいます。紫外線とは、人間の水晶体ではブロックされてしまうため、見ることができない光のことです。この事実から研究者は、犬や猫といった動物たちは、緑や赤といったありふれた色が見えない代わりに、「紫外線」という私たちには見えない光の中でも対象を見分けることができるという可能性を導き出しました。ただしこれらの動物たちが、紫外線を脳内においてどのような色として処理しているかは定かではありません。
NEXT:猫の視界の特徴は?
NEXT:猫の視界の特徴は?
猫の視野・視界
下に並べた図で赤=左目の視野、青=右目の視野、紫=両目の視野を表します。片目で見ることの出来る視野を単眼視野(たんがんしや)、両目で見ることの出来る視野を両眼視野(りょうがんしや)、単眼視野と両眼視野を合わせた全体の視野を全体視野(ぜんたいしや)と呼びます。両眼視野に入った対象は、右目と左目に写る対象像のズレを脳が計算し、結果として対象物までの距離を正確に測ることが出来るというのが特徴です。
なお、シャムの中には、生後6~8週齢を過ぎた頃から斜視(しゃし)を示すものがいます。斜視とは、黒目が正常な位置からずれて固定された状態のことです。大きな特徴としては、「全体視野は普通の猫と変わらないものの、両眼視野が存在しない」という点が挙げられます。結果、シャムは物体の奥行きを測って位置を見定めることが不得意です。斜視の原因は遺伝的なものですが、シャムのほか色素が欠乏したアルビノ種、およびチンチラの中にも同種の異常遺伝子を持っているものがいると言われています。
参考までに、人間の視野と犬の視野を比較として載せます。
ちなみに猫は犬や人間と同様、眼球をくるくると自分の意志で動かすことが出来ます。草食動物の眼球は顔の側面に位置しているので眼球を動かさなくても十分な視野を確保することができますが、人間や犬、猫のように、眼球が顔の前面に位置している動物は、眼球を動かすことで狭くなりがちな視野を補う必要があるのです。眼球の運動に関わっている筋肉は一般的に「外眼筋」(がいがんきん)と呼ばれ、以下の6つの筋から構成されます。
なお、シャムの中には、生後6~8週齢を過ぎた頃から斜視(しゃし)を示すものがいます。斜視とは、黒目が正常な位置からずれて固定された状態のことです。大きな特徴としては、「全体視野は普通の猫と変わらないものの、両眼視野が存在しない」という点が挙げられます。結果、シャムは物体の奥行きを測って位置を見定めることが不得意です。斜視の原因は遺伝的なものですが、シャムのほか色素が欠乏したアルビノ種、およびチンチラの中にも同種の異常遺伝子を持っているものがいると言われています。
参考までに、人間の視野と犬の視野を比較として載せます。
動物たちの視野・比較図
草食動物である馬は、外敵である肉食動物(ライオンやトラ)などをすばやく見つけることが出来るよう、眼を顔の側面に配置し、単眼視野を広くするよう進化しました。その結果、草を食べている間でも、後ろから忍び寄る肉食動物の影を視認(しにん)することができます。一方肉食動物である猫は、眼を顔の前面に配置し、両眼視野の範囲を広くするよう進化しました、その結果、見つけた獲物までの距離を正確に測ることができ、狩猟の成功率が高まりました。ちなみに猫は犬や人間と同様、眼球をくるくると自分の意志で動かすことが出来ます。草食動物の眼球は顔の側面に位置しているので眼球を動かさなくても十分な視野を確保することができますが、人間や犬、猫のように、眼球が顔の前面に位置している動物は、眼球を動かすことで狭くなりがちな視野を補う必要があるのです。眼球の運動に関わっている筋肉は一般的に「外眼筋」(がいがんきん)と呼ばれ、以下の6つの筋から構成されます。
猫の外眼筋(右目)
- 内側直筋=目を鼻側に向ける
- 外側直筋=目を耳側に向ける
- 背側直筋=目を上に向ける
- 腹側直筋=目を下に向ける
- 背側斜筋=目を(図の状態で)時計回りに回す+鼻側に向ける
- 腹側斜筋=目を(図の状態で)反時計回りに回す+耳側に向ける
猫の瞳孔
猫の瞳孔(どうこう)は、ちょうどカメラの絞りに相当する部分です。私たち人間や犬の瞳孔が丸く開閉(かいへい)するのに対し、猫のそれは縦に細長く開閉します。この長円瞳孔(ちょうえんどうこう=elliptical pupil)という構造は、円形の瞳孔よりもすばやく開閉できると同時に、より大きく開くこともできるという点が特徴です。そのため、眼球に入ってくる光の量を微調整するのにとても役立ちます。
猫の長円瞳孔を調整しているのは、目の色を作り出している虹彩(こうさい)の中を走っている「瞳孔括約筋」(どうこうかつやくきん)という小さな筋肉です。犬や人間の瞳孔括約筋は円形をしており、収縮すると、ちょうど巾着袋の口を締めるように丸い形を保ったまま締まっていきます(下図左側)。一方、猫の瞳孔括約筋は上下に長くなっており、収縮すると、ちょうど輪にしたベルトの両端を上下に引き絞るように、縦長に締まっていきます(下図右側)。猫の瞳孔がスリット状に細くなるのは、こうした特殊な形をした筋肉があるためです。なお、細くなった瞳孔を再び真ん丸に開くのは、主として左右に付着している「瞳孔散大筋」(どうこうさんだいきん)という筋肉です。 瞳孔の幅は、平均すると最大で14ミリメートル、最小では1ミリメートル以下、面積は最大で160平方ミリメートルです。対して人間の瞳孔は、最大幅が8ミリメートル、最小幅が2ミリメートル、最大面積が50平方ミリメートル程度ですので、猫の目はずいぶんと大きく変化することがわかります(Berkley, 1976)。目に入ってくる光の量を自動的に調節する瞳孔反射が完成するのは、目が開いてから2~3日後ですので、それまでは光源から顔を背けたり、前足で目を覆うようなしぐさが見られます。 瞳孔を小さくする瞳孔括約筋は、リラックスしたときに優位になる「副交感神経」(ふくこうかんしんけい)の支配を受けています。一方、瞳孔を大きくする瞳孔散大筋は、緊張したときに優位になる「交感神経」(こうかんしんけい)の支配を受けています。これらの神経は自律神経系ですので、手や足を動かす神経のように自分の意志でコントロールすることはできません。瞳孔の大きさを左右するものは、主に「外界の明るさ」と「感情」です。 上の写真は一般的な猫の瞳孔の大きさ示したものです。都市伝説の一つとして「かつて日本では猫の瞳孔の大きさを時間の目安にしていた」というものがありますが、様々な検証の結果、あまり実用的ではないことが分かっています。詳細は「目を見れば時間がわかる」をご覧ください。
NEXT:猫の瞬膜
猫の長円瞳孔を調整しているのは、目の色を作り出している虹彩(こうさい)の中を走っている「瞳孔括約筋」(どうこうかつやくきん)という小さな筋肉です。犬や人間の瞳孔括約筋は円形をしており、収縮すると、ちょうど巾着袋の口を締めるように丸い形を保ったまま締まっていきます(下図左側)。一方、猫の瞳孔括約筋は上下に長くなっており、収縮すると、ちょうど輪にしたベルトの両端を上下に引き絞るように、縦長に締まっていきます(下図右側)。猫の瞳孔がスリット状に細くなるのは、こうした特殊な形をした筋肉があるためです。なお、細くなった瞳孔を再び真ん丸に開くのは、主として左右に付着している「瞳孔散大筋」(どうこうさんだいきん)という筋肉です。 瞳孔の幅は、平均すると最大で14ミリメートル、最小では1ミリメートル以下、面積は最大で160平方ミリメートルです。対して人間の瞳孔は、最大幅が8ミリメートル、最小幅が2ミリメートル、最大面積が50平方ミリメートル程度ですので、猫の目はずいぶんと大きく変化することがわかります(Berkley, 1976)。目に入ってくる光の量を自動的に調節する瞳孔反射が完成するのは、目が開いてから2~3日後ですので、それまでは光源から顔を背けたり、前足で目を覆うようなしぐさが見られます。 瞳孔を小さくする瞳孔括約筋は、リラックスしたときに優位になる「副交感神経」(ふくこうかんしんけい)の支配を受けています。一方、瞳孔を大きくする瞳孔散大筋は、緊張したときに優位になる「交感神経」(こうかんしんけい)の支配を受けています。これらの神経は自律神経系ですので、手や足を動かす神経のように自分の意志でコントロールすることはできません。瞳孔の大きさを左右するものは、主に「外界の明るさ」と「感情」です。 上の写真は一般的な猫の瞳孔の大きさ示したものです。都市伝説の一つとして「かつて日本では猫の瞳孔の大きさを時間の目安にしていた」というものがありますが、様々な検証の結果、あまり実用的ではないことが分かっています。詳細は「目を見れば時間がわかる」をご覧ください。
NEXT:猫の瞬膜
猫の瞬膜
「瞬膜」(しゅんまく, 第三眼瞼とも)とは目頭に見える白い膜のようなものです。眠っている時に猫の目をのぞき込んでみるとわかりやすいでしょう。人間では眼球結膜によって「白目をむく」状態になりますが、猫の場合は瞬膜が内側からせり出すことで白目をむいた状態になります。
【写真元】Khan's inner eyelid/YouTube
第三眼瞼(瞬膜)は透明~半透明の膜で、爬虫類、両生類、鳥類、サメなどでも見られます。哺乳類ではラクダ、ホッキョクグマ、アザラシ、ツチブタ、カモノハシが完全な形の第三眼瞼を有していますが、人間では、目頭部分に痕跡が見られる程度です。霊長類では唯一「アンワンティボ」(Calabar Angwantibo)と呼ばれるロリス科の猿で見られます。通常のまぶたとは違い、水平方向に開閉するというのが大きな特徴です。
瞬膜の機能
猫における瞬膜の役割は眼球を異物から保護したり、涙を眼球表面に塗りつけることです。またちょうど自動車のワイパーのように、目の中に入ったゴミを目尻の方にかき集めるという機能も持っています。猫の目の中にがっつり毛が入っていて驚くことがありますが、いつの間にかなくなっていることがあります。それはおそらく、瞬膜が目尻の方に毛を押し出し、涙とともに眼球の外に流した結果でしょう。
水性哺乳動物の一種マナティなどでは潜水するの水中メガネとして瞬膜を利用しています。またアシカなどでは陸上で砂から眼球を保護する際に使用します。ホッキョクグマは吹雪から眼球を守るため、サメは獲物を襲う際に使用します。
鳥類では、母鳥がヒナにえさをやるときやハヤブサが超高速で獲物に接近するとき、瞬膜を閉じて眼球の表面をガードします。特殊な例としては、キツツキがくちばしで木に穴を開ける際、勢いで眼球が飛び出してしまわないよう高速で第三眼瞼(瞬膜)の開閉を行うという例もあります。
水性哺乳動物の一種マナティなどでは潜水するの水中メガネとして瞬膜を利用しています。またアシカなどでは陸上で砂から眼球を保護する際に使用します。ホッキョクグマは吹雪から眼球を守るため、サメは獲物を襲う際に使用します。
鳥類では、母鳥がヒナにえさをやるときやハヤブサが超高速で獲物に接近するとき、瞬膜を閉じて眼球の表面をガードします。特殊な例としては、キツツキがくちばしで木に穴を開ける際、勢いで眼球が飛び出してしまわないよう高速で第三眼瞼(瞬膜)の開閉を行うという例もあります。
瞬膜の軟骨
瞬膜の中には軟骨があり、眼球のカーブに沿ってスムーズに出入りできるよう誘導しています。この軟骨は犬、ブタ、ウシなどでは硝子軟骨でできていますが、猫とウマにおいては弾性繊維が多く見られます。形に関しても、動物によってわずかに違いがあるようです(T. Schlegel, 2001)。
瞬膜の病気
瞬膜は基本的にリラックスしているときに出るものですが、体調不良に陥っているときに出ることもありますので、飼い主は注意して見ていなければなりません。
例えば瞬膜に付随して涙を産出している「瞬膜腺」(第三眼瞼腺)が炎症などで腫(は)れてしまうと、チェリーアイといって、赤く腫れた瞬膜が常に露出した状態になります。その場合はすぐ獣医さんにご相談下さい。また両方の瞬膜が出たまま1日以上戻らないのは、「瞬膜症候群」(Haw's Syndrome)と呼ばれる病的な状態です。原因としては寄生虫、感染症、ホルネル症候群、キー・ガスケル症候群などが考えられますので、この場合も獣医さんに相談しましょう。 最後に挙げた「キー・ガスケル症候群」(Key-Gaskell Syndrome)とは、1982年にイギリスで初めて報告された後、ヨーロッパ、アメリカなどでも散見されるようになった、原因不明の自律神経失調症のことです。引き起こす原因はフードや殺虫剤の中に含まれる成分ではないかと考えられていますが、定かなことは分かっていません。全快することはまずなく、仮に回復したとしても自律神経系に何らかの後遺症が残るとされます。日本における疫学は不明ですが、猫の瞬膜が突然飛び出たままになり、なおかつ元気がない、食欲不振、便秘、食後の嘔吐、涙と唾液の分泌減少、瞳孔が開きっぱなしなどの症状がみられる場合は、最近猫が口にしたものをリストアップした上で獣医さんに相談しましょう。
例えば瞬膜に付随して涙を産出している「瞬膜腺」(第三眼瞼腺)が炎症などで腫(は)れてしまうと、チェリーアイといって、赤く腫れた瞬膜が常に露出した状態になります。その場合はすぐ獣医さんにご相談下さい。また両方の瞬膜が出たまま1日以上戻らないのは、「瞬膜症候群」(Haw's Syndrome)と呼ばれる病的な状態です。原因としては寄生虫、感染症、ホルネル症候群、キー・ガスケル症候群などが考えられますので、この場合も獣医さんに相談しましょう。 最後に挙げた「キー・ガスケル症候群」(Key-Gaskell Syndrome)とは、1982年にイギリスで初めて報告された後、ヨーロッパ、アメリカなどでも散見されるようになった、原因不明の自律神経失調症のことです。引き起こす原因はフードや殺虫剤の中に含まれる成分ではないかと考えられていますが、定かなことは分かっていません。全快することはまずなく、仮に回復したとしても自律神経系に何らかの後遺症が残るとされます。日本における疫学は不明ですが、猫の瞬膜が突然飛び出たままになり、なおかつ元気がない、食欲不振、便秘、食後の嘔吐、涙と唾液の分泌減少、瞳孔が開きっぱなしなどの症状がみられる場合は、最近猫が口にしたものをリストアップした上で獣医さんに相談しましょう。
瞬膜はどうやって出る?
猫の瞬膜が飛び出すメカニズムには、「眼球後引筋」と呼ばれる人間にはない筋肉が関わっています。眼球の後方に付着したこの筋肉は、収縮することによって眼球を後方に引き寄せます。すると前方に隙間ができますので、そこに瞬膜が滑り込むという仕組みです。
また猫の場合、眼球の外側に付いている「外側直筋」(がいそくちょっきん)が、薄い筋膜を通して第三眼瞼を引きずり出すという補助システムも持っています。眼球後引筋を支配しているのが、自分の意志ではコントロールできない自律神経であるのに対し、外側直筋を支配しているのは、自分の意志でコントロールできる外転神経(第六脳神経)です。犬よりも猫の第三眼瞼の方が容易に飛び出すのは、恐らくこうした二重制御があるためでしょう。
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猫のタペタム層
タペタム層とは、網膜の裏にある細胞層で、わずかな光を反射して視神経に伝える働きをします。猫を始め、光の少ない夜間に獲物をハンティングする夜行性肉食動物や、深海にすんでいる生き物、および原猿類などが有する構造です。
タペタムの構造
猫のタペタムは光をとらえる前方の網膜と、血液を供給する後方の脈絡膜に挟まれるような形で広がっています。肉眼で見ると、三角形のエリアが視神経円板を囲むように配置されており、光を反射すると青~緑色を呈します(Bernstein, 1958)。
猫のタペタム層は2マイクロメートル(0.002ミリメートル)と動物の中では比較的厚く、平均12~15層から成っています。断面にしてみると、タペタム細胞がレンガ塀のように交互に配置されていることが一目瞭然です。へりにおける細胞の層は数層しかありませんが、中央に行くほど厚くなっていき、35層ほどになります。
タペタムの機能
タペタムの浅い層では短波長、深い層では長波長を反射する傾向があり、輝度閾値(きどいきち)は1.32×10マイナス7乗ミリランベルトです。これは、人間の1/6程度の光量でも物を見分けることができると言い換えることができます。本来猫は夜行性ですから、暗闇の中でもわずかな光で視界を保てることは、獲物を捕らえるときに有利ですね。
写真を撮ったとき目が光って写ることがありますが、それはこのタペタム層にフラッシュが反射したものです。夜間に動物を撮影しようとする写真家などは、懐中電灯などで周囲を照らし、このタペタム層の反射を利用してお目当ての動物を見つけます。
赤目現象はなぜ起こる?
猫の瞳孔に光が入ると、網膜の裏にあるタペタムに光が反射し、通常は黄~緑色を呈します。しかし赤い目をしたアルビノや青い目をした白猫ではメラニン細胞の変種であるタペタムが色素を生成できないため、光がタペタムを素通りして後ろにある脈絡膜に当たります。こうして起こるのが「赤目現象」です。要するにタペタムを持たない人間と同じように、脈絡膜中の血管網に光が反射して赤く見えると言えばわかりやすいでしょう。
青い目に光が入ると必ず赤目現象が起こるわけではありません。例えばシャム猫模様の猫が青い目をしている場合、タペタムである程度メラニン色素が形成されるため、吸収される光の波長が変わって赤目現象は起こらなくなります。
いずれにしてもカメラで猫を撮影する際はフラッシュをオフにしましょう。私たちが太陽を見たときのように、光の量が多すぎて目を傷めてしまいます。 NEXT:Q & A集
いずれにしてもカメラで猫を撮影する際はフラッシュをオフにしましょう。私たちが太陽を見たときのように、光の量が多すぎて目を傷めてしまいます。 NEXT:Q & A集
猫の目・Q & A
以下は猫の目や視覚についてよく聞かれる疑問や質問の一覧リストです。思い当たるものがあったら読んでみてください。何かしら解決のヒントがあるはずです。
目をゆっくり閉じるのは愛情の証?
むしろ逆です。
書籍やネット上では「目を細めるのは愛情の証」とか「信頼している人の前ではまぶたをゆっくり閉じる」といった風説を目にすることがあります。しかし最新の調査では、逆にストレスのサインである可能性が示されていますのでご注意ください。
猫の世界において「目をじっと見つめる」という行為は敵意と解釈されます。目を細めたりゆっくり閉じたり顔をそらす理由は、信頼や愛情を示したいからではなく、ただ単に誤解に基づくトラブルを回避したいからです。猫の目をじっと覗き込むと、多大なストレスをかけてしまいますので、なるべく避けるようにしましょう。
猫の涙が茶色いのはなぜ?
ポルフィリンと呼ばれる成分のせいだと考えられます。
猫の涙や目やにが茶色く変色していることがあります。この色は涙に含まれるポルフィリンと呼ばれる成分が空気や日光に触れることで生じると考えられています。ポルフィリン(porphyrin)とは血色素の構成物質である「ヘム」の前駆物質で、血液や血液から生成される涙のほか唾液や尿などにも含まれる成分。猫の鼻の中に茶色い鼻くそがよくたまりますが、これは鼻涙管を通じて鼻に流れてきた涙が固まって変色したものです。 猫がひっきりなしに涙を流していたり、目頭や鼻の穴がすぐ茶色くなるような場合は、涙の流通ルートに問題があるかもしれません。特にペルシャやエキゾチックショートヘアなどの短頭種においては流涙症の可能性がありますので、こまめに目の拭き掃除をしてあげましょう。
猫が寄り目になっていますが…
アルビノ猫やシャム猫では高い確率で内斜視(寄り目)が見られます。
猫の網膜に移った外界の世界は、脳内において左右別々に処理されます。例えば右目の網膜に入ってきた映像の内、右半分は視神経を通って同側の右半球(右側の脳)に入りますが、左半分は視交叉という部分を通って左半球(左側の脳)に入ります。 しかしアルビノ猫やシャムでは視交叉を通過する視神経の数が少なく、また神経が誤った方向に向かいます。さらに片目が正中線を超えた領域をうまく認識できなくなり、両目でとらえる両眼視野がないかのような振る舞いを見せるようになります。その結果が内斜視(寄り目)です。 これらの猫は奥行き認識が通常の猫より劣りますので、落下や衝突といった事故には十分注意する必要があります。
左右で目の大きさが違います
猫がウインクしているようです
目の中に糸くずがあります
虫でないことを確認してください。
猫の目の中で見られる糸くずは、多くの場合自分自身の被毛です。通常は瞬膜を使って自力でうまく除去できます。一方、イネ科植物のノギなど、やや硬めのものが角膜に刺さっていることもあります。こちらは自力で取れませんので、動物病院に行って引き抜いてもらいましょう。
注意すべきは、糸くずと思っていたものが実は虫だったというパターンです。例えば「東洋眼虫」と呼ばれる寄生虫はメマトイと呼ばれるハエの一種によって媒介され、イヌ、タヌキ、キツネ、ネコ、ウサギ、サル、ヒトなどに感染することが確認されています。ハエは涙を餌にしますので、グルーミングが苦手な老猫や涙やけを起こしやすい短頭種を飼っている飼い主は要注意です。また疫学的に西日本で多いとされています。 目の中を泳ぐ「東洋眼虫」について(子犬のへや)
猫の目が赤く充血しています
病気の可能性がありますので動物病院を受診しましょう。
猫が眼球を動かしたり、飼い主がまぶたをめくったときに見える白目部分が赤いという場合は結膜の異常が疑われます。例えば結膜炎、結膜血管腫、結膜嚢胞、結膜のリンパ肉腫などです。また虹彩の中が赤いという場合は、ヘルペスウイルスや逆まつげなどによる角膜の血管新生、前房出血などの可能性があります。 いずれにしても健全な状態ではありませんので、動物病院を受診して目を赤くしている原因を特定してもらいましょう。なおカメラのフラッシュを反射して赤く見えるという場合は単なる赤目現象です。色素を作れずタペタムを持たないアルビノ猫や白猫で見られますが、目を痛めるので撮影時のフラッシュはオフにしてください。
猫の目が白く変色しています
ほくろのような黒い点があります
病気の可能性がありますので動物病院を受診しましょう。
眼球の中で瞳孔以外の部分が黒く変色しているという場合、慢性表在性角膜炎(パンヌス)からの色素沈着、虹彩母斑、虹彩嚢胞、前部ブドウ膜炎、メラノーマ、角膜分離症などの可能性があります。最後の角膜分離症とは、壊死した角膜実質が涙に含まれるポルフィリンによって茶色くなって剥がれ落ちる病態のことです。慢性の角膜潰瘍、眼瞼内反、ヘルペス性角膜炎に続いて起こることが多いとされています。 上の症例写真でも示したように、黒く変色した眼球はどれも悪性腫瘍(がん)であるメラノーマとよく似ていますので、鑑別するためにもなるべく早めに動物病院を受診しましょう。
猫の目の異常をいち早く見つける方法に関しては「猫の目の変化や異常」にまとめてあります。日常的にチェックするようにしましょう。