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猫のドライアイ~症状・原因から予防・治療法まで

 猫のドライアイについて病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫のドライアイの病態と症状

 猫のドライアイとは、目の表面が乾いて角膜と結膜に炎症が生じた状態を言います。正式名称は乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん, KCS)です。 猫の眼球表面における涙膜とドライアイの比較図  猫の眼球表面は通常、「涙膜」(るいまく)と呼ばれる涙の薄い層でおおわれています。この涙膜の原料となる涙を提供しているのは、上まぶたにある「涙腺」(るいせん, 約50%)と、下まぶたにある「第三眼瞼腺」(だいさんがんけんせん, 残り50%)です。これらの腺がまばたきによって圧力を受けると、ちょうど水を含んだスポンジを押すような感じで涙液が分泌され、隣接している眼球の表面に流れ出るという仕組みになっています。
 「ドライアイ」とは、何らかの理由でこの涙膜が途切れてしまった状態のことです。潤滑液を失った眼球は、まばたきするたびにまぶたとの間で摩擦が生じ、表面の角膜や結膜に細かな傷がついてしまいます。そしてこの傷に対する免疫反応として炎症が起こり、各種の症状を引き起こします。
 猫のドライアイの主な症状は以下です。
ドライアイの主症状
  • 角膜炎結膜炎と似た症状
  • 結膜の肥厚
  • 結膜のにごり
  • 結膜からの出血
  • 目やにの増加
  • 角膜に穴が空く
  • まぶたが癒着する
  • 失明(重症例)

猫のドライアイの原因

 猫のドライアイの原因としては、主に以下のようなものが考えられますが、不明なことも多い疾患です。
ドライアイの主な原因
  • 涙腺・第三眼瞼腺の異常猫の涙腺と第三眼瞼腺の位置 涙液を提供している涙腺や第三眼瞼腺に異常があると、涙の産生が減り、ドライアイを引き起こしてしまいます。腺の異常を引き起こす要因は、炎症、神経障害、猫ウイルス性鼻気管炎猫カリシウイルス感染症クラミジア感染症などの感染症、サルファ剤を始めとした薬などです。またチェリーアイの治療として第三眼瞼腺を切除した場合や、眼球周辺の腫瘍に対して放射線治療を行った場合なども、涙の量が低下してしまうことがあります。

猫のドライアイの治療

 猫のドライアイの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
ドライアイの主な治療法
  • 涙促進薬  涙の分泌を人工的に増やす薬です。具体的にはシクロスポリン軟膏、タクロリムス軟膏などがあります。
  • 点眼薬  目薬を差すことによって角膜と結膜を乾燥から防ぎます。しかし点眼薬は目が乾くたびに行う必要があり、また一時的な効果しか期待できません。
  • 手術  症状が進行したり、軟膏が効かないような場合は、耳の下にある耳下腺と呼ばれる分泌器官を結膜に移植するという手術があります。ただし唾液と涙液は成分が違うため、違和感を感じて嫌がる個体もいます。また手術後も軟膏や点眼薬による補助的な治療が必要です。