猫の好き嫌いチェック
猫の好き嫌いで抑えたポイントを元にして、生活空間をチェックしてみましょう。もし欠けている部分があれば補い、環境エンリッチメントにつなげます。「環境エンリッチメント」とは、動物のストレスをできる限り解消するため環境に変化を加えることです。なお具体的な部屋づくりに関しては以下のページにまとめてありますのであわせてご確認ください。
猫の好き嫌いチェック
- 室内や屋外に大きな音は無いか猫は突発的な刺激が苦手。ドアチャイム、電話の呼び出し音、TVの音など、調整できるものに関してはボリュームを下げる。集合住宅で子供の足音、楽器、風鈴といった生活騒音がうるさい場合は、管理会社に相談すると解決することがある。
- 飼い主が騒音を出していないかそうとは知らず、飼い主自身が騒音源になっていることもある。例えばお笑い番組を見て爆笑して思わず手をたたく、サッカー中継でゴールした瞬間叫ぶ、家の中で家族同士が大声を出してケンカするなど。また猫を注意するときの「コラッ!」という大声もストレスの要因になるので避ける。2020年に行われた最新の調査では、飼い主が発するネガティブな言動が猫のストレスレベルを高めている可能性が実際に指摘されている。
- 電気機器の起動音など低く響く音は無いか猫は低い音をあまり好まない。パソコンや洗濯機など、長時間低い音を立てるものは、あまり猫のそばに置かない方がよい。また話しかけるときも声は高めで。
- 蛍光灯は付いていないか猫の目には蛍光灯の光が点滅して見えている可能性が高い。この光を非常にわずらわしく感じる個体もいるため、LEDライトなどへ切り替えることも考える。また猫は本来、日没や日暮れになると活発になる「薄明薄暮性」であるため、夕方以降は光の量を調整して部屋の中を薄暗く(dim light)してあげると喜ぶかも。
- 仲の悪い動物と同居していないか進化の過程で「外敵」として学習した種がいる。例えばヘビやサソリなど。外見がヘビに似ているキュウリを見せてわざと驚かせるイタズラはほぼ虐待と言ってよい。また外敵とまでは言わないが、オウム、犬、ウサギ、イグアナ、新顔の猫など見慣れない動物を急に室内に持ち込むとそれをストレスと感じることがある。
- 室内で急に変わった部分は無いか猫は環境の変化をあまり好まない。特に食器やトイレなど、日常的に用いるものを交換する際は要注意。また引っ越しは部屋の内外が急激に変わるため猫にとって多大なストレスになりやすい。これまで使っていたベッドや毛布、インテリアなどをなるべく新居にも持っていき、環境の変化を最小限に留める。
- 室内に芳香剤の匂いが充満していないか猫は石鹸やフローラル系調合香料に用いられる「メチルノニルケトン」の匂いが苦手。消臭剤、芳香剤の発散する匂いを不必要に部屋に充満させない。また市販されている洗剤や柔軟剤の中にはほとんど悪臭に近い臭いを発するものがある。人間の鼻はすぐ「バカ」になって無頓着になるため、最初から「無香料」と書かれたものだけを選ぶようにする。
- 飼い主の服に香水は付いていないか猫は香料や化粧品に用いられる「中鎖トリグリセリド」の匂いが苦手。猫と接するときは極力無香料を心掛ける。またハンドクリームは匂いのほか猫の被毛についてなめとってしまう危険性もあるため可能な限り避ける。
- 部屋の中でアロマを使っていないかエッセンシャルオイルや、それを薄めたアロマオイルは、猫に中毒症状を引き起こす。アロマを焚いたり、オイル入りの洗剤を用いたり、アロマ入浴剤などの使用は避ける。
- 猫を叩くように触っていないか猫はお尻以外の部分をポンポンと叩かれることをあまり好まない。触るときは母猫が子猫を舐めるように優しく。また「しつけ」と称して猫に体罰を加える行為は許されない。猫のしつけの基本を理解し、効果的なトレーニング方法を習得しておくことが必要。
- 猫の苦手な部分を無理矢理触っていないか猫はおなかや足の先などへの接触をあまり好まない。無理やり触ると、身を守ろうとして反撃してくることもあるので注意が必要。猫の手をとってダンスさせている動画や、猫に被り物やコスチュームを着せている写真がよくあるが、猫は不快感を抱いていてもしかめっ面をするわけではない。自分に都合よく「気にしてないでしょ」と勘違いして無理強いしない。
- 猫の目をじっと見つめていないか飼い主の間では「猫がゆっくりまばたきするのは愛情の証」という風説があるものの、詳細な観察調査では逆にストレスの要因になっている可能性が示されている。根拠のない噂を信じ込み、猫からのイヤイヤサインを無視してにらめっこをしない。
多頭飼い家庭を対象とした調査では、猫のストレス源が人間である可能性が強く示されています。家の中や自分の振る舞いをもう一度チェックしてみましょう。
猫の欲求チェック
猫の欲求で抑えたポイントを元にして、生活環境をチェックしてみましょう。もし欠けている部分があれば補い、環境エンリッチメントにつなげます。「環境エンリッチメント」とは、動物のストレスをできる限り解消するため環境に変化を加えることです。なお具体的な部屋づくりに関しては以下のページにまとめてありますのであわせてご確認ください。
猫の欲求チェック
- 猫の食事は足りているかタンパク質が不足すると脂肪肝のような病気を発症することがある。多頭飼いの場合、フードボール(食器)は頭数分用意して共有させない。
- 猫の飲み水は足りているか猫は体重1キロ当たり、60~70mlの水を必要とする。夏場に不足すると、脱水症状や熱中症になることも。多頭飼いの場合、ウォーターボール(水飲み場)は頭数分用意して共有させない。
- 室内は適温か猫は汗をかかないので、体温を下げるときはあえぎ呼吸(パンティング)に頼っている。人間と違い、夏場でも毛皮を羽織っていることを考慮に入れて室温調整をする。
- 寝床は整っているか猫は1日の大半を寝て過ごす。常に柔らかくて清潔な寝床を用意しておくことを心がける。多頭飼いの場合、ベッドは最低限頭数分は用意して共有させない。
- 猫のトイレは清潔かトイレが気に食わないと、全く別の場所で粗相をしてしまうことがある。マメに掃除することが重要。多頭飼いの場合、トイレは最低でも頭数分用意して共有させない。可能なら「頭数+1」個、場所を離して設置してあげる。
- 爪とぎは古くなってないか猫にとっての「爪とぎ」は、人間にとっての「お風呂」。数日やらないでいると非常に気分が悪くなるので、引っ掛かりのよい爪とぎを常に用意してあげる。
- 日光は十分か猫は暗がりを好む一方、日向ぼっこも好む。猫が思う存分日光浴できるようなスペースを確保し、ゴロ寝しやすいベッドも置いてあげる。
- 刺激は足りているか余りにも単調な生活は、猫に「退屈」というストレスを与える。外を眺めさせるなどの配慮を。ただし、ハーネスを装着して外を散歩させることは、時に夜鳴きの原因になるため、あまりお勧めできない。
- 適度な緊張感は抱いているか耳を立てて瞳孔を開く程度の適度な刺激は必要。例えるなら、自習時間のだらけた教室に、急に先生が入ってくる感じ。一瞬にして背筋がピンと伸びる。動画サイトで他の猫や犬、鳥の声などを聞かせるのも一案。ただし、神経質な猫には弱い刺激から。
- エサを得るまでに障壁はあるかあまり簡単にエサが手に入ってしまうと、猫もつまらない。トリートボールやパズルフィーダーなどを用いて、ごほうびに障壁を設けることもたまには必要。
- 遊びは足りているか猫の狩猟欲求は遊びによって飼い主が解消してあげる。特に2歳までのやんちゃ盛りの猫には重要。遊びを怠ると、他の猫や人の足に向かって攻撃を仕掛けることもある。
- 十分なスペースはあるか猫は通常、他の個体から距離を置いて過ごす。余りにも狭い空間に複数の猫を押し込むと、その空間自体がストレスになる。人間で言うと「満員電車」。最低でも2mは離れていられるスペースを確保する。
- 隠れ家は確保されているか猫はストレスを感じたとき、隠れ家に身を潜めることで心を落ち着かせる。クレートやキャットハウスなど、外界から遮蔽された空間を用意してあげることは必須。
- 飼い主とのスキンシップは足りているかマッサージを始めとするスキンシップは、人間にも猫にもプラスに作用することが確認されている。ただし、無理強いするのではなく、猫の方から求められたときに応じてあげた方が効果的。
- 他の猫とのスキンシップは足りているか猫は本来、他の猫と多くの社会行動を行う動物。場合によっては多頭飼いも考慮する。ただし、迎える条件がそろっていないのに、見切り発車でもう1頭飼おうとするのは厳禁。
- 不妊手術は済ませてあるか不妊手術には、繁殖予防の他、病気の予防、性衝動の抑制という効果がある。生まれてくる全ての子猫に責任をもてないなら、不妊手術を施すのが飼い主の責務。
生きていくために必要な「生理的欲求」を満たしてあげるだけではダメです。猫が「幸せだなぁ~」と感じてくれるよう、生まれつき持っている「行動欲求」もしっかり満たしてあげましょう!
猫が出すストレスサイン
ストレス反応
「ストレス反応」とは、ストレスを感じている動物が、原因となっている不快な刺激を取り除こうとして体内環境を変化させたり、具体的なアクションを起こしたりすることです。
生理学的なストレス反応
生理学的なストレス反応とは、ストレスを感じている動物の体内で起こるもろもろの変化のことです。変化にはHPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)と呼ばれるメカニズムが大きく関わっています。またストレス反応を時間的に分類したときのモデルとしては、Selyeが提唱した汎適応症候群(はんてきおうしょうこうぐん, GAS)が有名です。猫がストレスを感じたときも、以下に述べるような変化が体の中で起こっているものと推測されます。
汎適応症候群(GAS)
- 警告反応期急性のストレスに対する反応。交感神経系によって「闘争/逃走」反応が引き起こされる。無期限に維持できるものではないため、数時間~数日の内に死んでしまうこともある。
- 抵抗期ストレスがなかなか解消されないときの反応。ストレス下でも機能が果たせるように心身を適応していく期間。免疫障害が起こり、疾病に罹患しやすくなる。
- 疲憊期(ひはいき)ストレスがかなり長期化したときの反応。動物の生物学的機能が損なわれ、環境に適応することができなくなる。生理学的機能が損なわれた結果、動物は死んでしまう。
行動的なストレス反応
生理学的なストレス反応は体の中で起こる変化であり、必ずしも外から確認できるわけではありません。一方、ストレス反応の中には行動として現れるものがあります。具体的には葛藤行動(かっとうこうどう)と呼ばれるものです。具体的には以下。アニマルウェルフェア(東京大学出版会)
動物の葛藤行動
- 転位行動転位行動(てんいこうどう)とは、拮抗する2つの欲求がぶつかり合い、相殺しあった結果、本来の目的とは全く別の行動となって現れることです。例えば、怒られた猫が急に毛づくろいを始めたり床の匂いをかぎ始めるなど。
- 転嫁行動転嫁行動(てんかこうどう)とは、本来の対象とは違う対象に向けられた行動のことであり、平たく言うと「八つ当たり」です。例えば、狩猟欲求の満たされない子猫が、獲物の代わりに飼い主の足にちょっかいを出すなど。
- 真空行動真空行動(しんくうこうどう)とは、対象が無いにもかかわらず行う行動のことです。例えば、猫が何もない空間に向かって飛びつくなど。
動物の異常行動
- 常同行動常同行動(じょうどうこうどう)とは、明確な目的が無いまま単一動作を長時間繰り返すことです。猫では、「頭と首を一定に水平方向に動かし続けること」、「ケージの入り口付近のような特定の場所に立ち、ふんふんと鼻を鳴らすこと」などが多く観察されます。
- 異常反応異常反応(いじょうはんのう)とは、環境からの刺激に対する反応が過剰だったり、逆に無反応だったりすることです。例えば、猫があらゆる刺激に対して無関心になるなど。
- 異常生殖行動異常生殖行動(いじょうせいしょくこうどう)とは、正常な生殖行動を営めなくなることです。例えば、騒音の多い場所でオスの個体がインポテンツになったり、メスが育児放棄・カニバリズム(仔を食べてしまうこと)、授乳拒否、仔殺しをするなど。
- 変則行動変則行動(へんそくこうどう)とは、動物が本来持っている固定的な動作パターンが変化してしまったものです。例えば、猫が犬のように片足を挙げておしっこをするなど。
猫の初期的なストレスサイン
猫がストレスを感じたときも、人間や他の動物と同じように「生理学的なストレス反応」や「行動的なストレス反応」を示します。飼い主が自分の目で確かめることができる初期的なストレスサインは「疾病行動」(Sickness Behavior)とも呼ばれ、主に以下のような項目を含みます。日頃から猫の様子を観察し、該当する項目が無いかどうかを確認するようにしましょう。Stress in owned cats: behavioural changes and welfare implications
猫のストレスサイン
- 活動性の減少歩いたりジャンプしたりといった移動行動が減少する。他の猫や人との友好的な交流を避けるようになる。おしっこの回数が減る。
- 問題行動の増加ニャーニャーしつこく鳴く、トイレの外でウンチ(脱糞)やおしっこ(粗相)をする、柱や壁にスプレー(おしっこを後ろに噴射する行為)をするなどの問題行動が増える。
- セルフメンテナンスの変化グルーミング、エサを食べる、水を飲むといった、生命を維持するためのメンテナンス行動が減少する。グルーミングと食欲に関しては逆に増えることも。
- 遊びの抑制おもちゃを噛んだり追いかけるといった遊び行動が減少する。好奇心を抱いて何かを探索するという行動が減る。
- 引きこもり隠れ家に入り込んだまま出てこなかったり、敷物の下などにもぐりこむなどの引きこもり行動が増える。
- 防御うなり、威嚇(シャー)、スピット(のどの奥をカッと鳴らす)、噛み付き、引っ掻きなどの自己防衛的攻撃行動が増える。
猫が見せる痛みのサイン
ストレスの中でも特に「体の痛み」を感じているとき、動物はある一定のリアクションを見せます。以下はイギリス・リンカーン大学の研究チームがまとめた、痛みを抱えた猫が見せる25の代表的なサインの一覧です。
痛みが弱くても出現
- 手や足を引きずる
- ジャンプ困難
- 異常な歩き方
- 動きたがらない
- 荷重の不均衡
- 一部だけを執拗に舐める
- 触診を嫌がる
- 隠れる・引きこもる
- 毛づくろいの減少
- 遊び行動の減少
- 食欲の減退
- 全体的な活動性の減少
- 人間へのすり寄りの減少
- 背中を丸めた姿勢
- 頭を下げる
- 瞼が痙攣する
- 一時的な気分
- 恒常的な気質
「一時的な気分」とは痛みによって引き起こされる一過性の行動変化のことで、「急に攻撃的になる」、「急におとなしくなる」などを含みます。「恒常的な気質」とは慢性的な痛みによって固定化された猫の性格のことで、「基本的に触られるのが嫌い」、「いつも人の手に噛み付こうとする」などを含みます。
痛みが強いと出現
- 食べ方が変化する
- 明るい場所を避ける
- 唸る
- うめく
- 目を閉じる
痛みの程度は不明だが出現
- 排尿に努力を要する
- 尻尾を素早く動かす
猫は痛みを隠し通すエキスパート…。意識していないとすぐに見落としてしまいます。飼い主は「猫の急性痛を見つける」や「猫の慢性痛を見つける」というページも参考にしながら、猫が見せるほんのわずかな変化にいち早く気づけるように訓練しておきましょう!
ストレスサインとしての病気
前のセクションで解説したとおり、猫のストレスは「初期的なストレスサイン」や「痛みのサイン」という形で現れます。もし飼い主がこうした猫からのサインに気づかなかったり、気づいても適切な処置をしなかった場合、ストレスが「警告反応期」→「抵抗期」→「疲憊期」と進展し、だんだんと猫の健康が悪化して最悪のケースでは寿命が縮まってしまうことすらあります。
人医学の分野ではストレスが原因で発症する病気のことを「心身症」(しんしんしょう)と呼びますが、猫でもこの心身症に近いものが報告されています。以下は一例です。心身症が疑われる場合は速やかに動物病院を受診すると同時に、環境や生活習慣に不備がないかどうかを見直してみましょう。
人医学の分野ではストレスが原因で発症する病気のことを「心身症」(しんしんしょう)と呼びますが、猫でもこの心身症に近いものが報告されています。以下は一例です。心身症が疑われる場合は速やかに動物病院を受診すると同時に、環境や生活習慣に不備がないかどうかを見直してみましょう。
特発性膀胱炎(FIC)
特発性膀胱炎(とくはつせいぼうこうえん, FIC)とは、膀胱炎のうち細菌や結石といった明確な原因が見つからないものに与えられる診断名です。発症メカニズムはよく分かっていませんが、猫においてはストレスが大きく関わっていると考えられています。
症状はおしっこの回数が減る、おしっこするとき声を出して痛がる、おしっこに血がまじる(血尿)、トイレ以外で粗相するなどです。
症状はおしっこの回数が減る、おしっこするとき声を出して痛がる、おしっこに血がまじる(血尿)、トイレ以外で粗相するなどです。
猫ウイルス性鼻気管炎
猫ウイルス性鼻気管炎とはヘルペスウイルス科に属する猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)を原因とする上部呼吸器感染症です。
一度でも感染歴のある猫では、脳から顔に伸びる「三叉神経」と呼ばれる脳神経の節にウイルスを保有していることが多々あり、しばしば再発を繰り返します。そして再発の引き金になるのが、若齢、老齢、糖質コルチコイドや免疫抑制剤の投与、そしてストレスです。調査報告の中には、ストレスレベルが弱い猫に比べ強いストレスを受けている猫では上気道感染症の発症率が5倍になるというものもあります(Tanaka, 2012)。
初感染では目の症状が顕著であるのに対し、再発例では鼻や気管に症状が集中するというのが特徴です。
一度でも感染歴のある猫では、脳から顔に伸びる「三叉神経」と呼ばれる脳神経の節にウイルスを保有していることが多々あり、しばしば再発を繰り返します。そして再発の引き金になるのが、若齢、老齢、糖質コルチコイドや免疫抑制剤の投与、そしてストレスです。調査報告の中には、ストレスレベルが弱い猫に比べ強いストレスを受けている猫では上気道感染症の発症率が5倍になるというものもあります(Tanaka, 2012)。
初感染では目の症状が顕著であるのに対し、再発例では鼻や気管に症状が集中するというのが特徴です。
神経性の下痢・嘔吐
過去にマウス、ラット、モルモット、ブタ、イヌなどを対象として行われた膨大な調査によると、寒冷、拘束、騒音といったストレスがかかった状態では「胃の内容物が空っぽになるまでに時間がかかる」、および「大腸における食物の通過時間が早まる」という傾向が確認されています(:P.Enck, 1992)。
胃の内容物が空っぽになるまでに時間がかかるということは、長時間胃の中に消化されない食物が残るということですので、気持ちが悪くなって吐き出す行動(嘔吐・吐出)が増えるかもしれません。
大腸における食物の通過時間が早まるということは、食物中の水分が大腸の壁から十分に吸収されないということですので、うんちが水っぽくなっていわゆる「下痢」が多くなるかもしれません。
胃の内容物が空っぽになるまでに時間がかかるということは、長時間胃の中に消化されない食物が残るということですので、気持ちが悪くなって吐き出す行動(嘔吐・吐出)が増えるかもしれません。
大腸における食物の通過時間が早まるということは、食物中の水分が大腸の壁から十分に吸収されないということですので、うんちが水っぽくなっていわゆる「下痢」が多くなるかもしれません。
食欲不振と肝リピドーシス
食欲と摂食行動は非常に複雑なシステムによって調整されていますが、ストレスが食欲不振を招くことはよく知られています。猫ではストレスによってHPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)に変化が起こり、おそらく視床下部から放出されるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)のバランスが崩れることで食欲不振につながっているものと推測されています。
猫においてやっかいなのは、食欲不振が肝リピドーシス(脂肪肝)に直結する危険性があるという点です。肝リピドーシスとは、本来肝臓から脂肪組織へと移動するはずの脂肪が、なぜか肝臓内にとどまってしまう病気のことで、食欲不振とその結果としてのタンパク質不足が発症に大きく関わっています。
ヘブライ大学のチームが2004~2015年の期間、大学付属教育病院で肝リピドーシスと診断された猫を対象として調査を行ったところ、発症した猫のうち20%では、発症前の段階でストレスを引き起こすような何らかのイベントを経験していました。具体的には「引っ越し」、「食事の変更」、「飼い主の休暇」、「新しいペットとの同居」、「飼い主の変更」、「屋外環境へのアクセス」などです。最悪のケースでは死亡することもありますので、ストレス管理が極めて重要であることがお分かりいただけるでしょう。
猫においてやっかいなのは、食欲不振が肝リピドーシス(脂肪肝)に直結する危険性があるという点です。肝リピドーシスとは、本来肝臓から脂肪組織へと移動するはずの脂肪が、なぜか肝臓内にとどまってしまう病気のことで、食欲不振とその結果としてのタンパク質不足が発症に大きく関わっています。
ヘブライ大学のチームが2004~2015年の期間、大学付属教育病院で肝リピドーシスと診断された猫を対象として調査を行ったところ、発症した猫のうち20%では、発症前の段階でストレスを引き起こすような何らかのイベントを経験していました。具体的には「引っ越し」、「食事の変更」、「飼い主の休暇」、「新しいペットとの同居」、「飼い主の変更」、「屋外環境へのアクセス」などです。最悪のケースでは死亡することもありますので、ストレス管理が極めて重要であることがお分かりいただけるでしょう。
肥満と糖尿病
不思議なことに、ストレスが食欲不振ではなく、逆に食欲過多を招き、肥満につながってしまうというケースもあります。食欲と摂食行動にはCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)のほか、グルココルチコイド、レプチン、インシュリン、ウロコルチン、ニューロペプチドY、メラノコルチンといった様々なホルモンが関わっているため、全ての猫が同じリアクションをするわけではないのでしょう。人間でも「ストレスで食欲がない」という人がいたり、「食べることでストレスを解消する」という人がいたりいろいろです。
猫においては肥満が糖尿病の発症率を高めることが確認されていますので、肥満のリスクはとりもなおさず糖尿病のリスクと言いかえることもできます。さらに猫ではストレスが高血糖を引き起こす「ストレス性高血糖」という現象が確認されています。肥満にしてもストレス性高血糖にしても、リスクを緩和するにはストレス管理が重要です。
猫においては肥満が糖尿病の発症率を高めることが確認されていますので、肥満のリスクはとりもなおさず糖尿病のリスクと言いかえることもできます。さらに猫ではストレスが高血糖を引き起こす「ストレス性高血糖」という現象が確認されています。肥満にしてもストレス性高血糖にしても、リスクを緩和するにはストレス管理が重要です。
強迫神経症
強迫神経症(OCD)とは、無意味と思われる行動を延々と繰り返す状態のことです。猫における代表的な強迫神経症には、「皮膚過敏症候群」、「心因性脱毛症」、「異食症」がありますが、どれもストレスが発症因子の1つであると考えられています。
皮膚過敏症候群では、背中の一部を触るとまるで波打つようにピクピクと動き、その後激しいグルーミング、引っかき、走り回りといった行動を示します。過剰なよだれ、泣きわめき、おしっこを撒き散らすといった行動を伴うこともあります。
異食症はウール、コットン、プラスチック、ゴムといった栄養素を持たないものをガジガジかじって食べる異常行動のことです。オリエンタルで多く見られることから何らかの遺伝が関わっている可能性が指摘されています。
心因性脱毛症は猫が体の一部分を延々とグルーミングすることにより、その部分がはげてしまった状態のことです。 脱毛部は猫の口が届きやすい太ももの外側、下腹部、しっぽ、腰背部などに多発します。人間の円形脱毛症では自然と毛が抜け落ちますが、猫の心因性脱毛症では猫自らがグルーミングによって毛を抜いてしまいますので、どちらかと言えば「抜毛症」(トリコチロマニア)に近いかもしれません。
皮膚過敏症候群では、背中の一部を触るとまるで波打つようにピクピクと動き、その後激しいグルーミング、引っかき、走り回りといった行動を示します。過剰なよだれ、泣きわめき、おしっこを撒き散らすといった行動を伴うこともあります。
異食症はウール、コットン、プラスチック、ゴムといった栄養素を持たないものをガジガジかじって食べる異常行動のことです。オリエンタルで多く見られることから何らかの遺伝が関わっている可能性が指摘されています。
心因性脱毛症は猫が体の一部分を延々とグルーミングすることにより、その部分がはげてしまった状態のことです。 脱毛部は猫の口が届きやすい太ももの外側、下腹部、しっぽ、腰背部などに多発します。人間の円形脱毛症では自然と毛が抜け落ちますが、猫の心因性脱毛症では猫自らがグルーミングによって毛を抜いてしまいますので、どちらかと言えば「抜毛症」(トリコチロマニア)に近いかもしれません。