猫の感情理解テスト
調査を行ったのはイタリアにあるバリ大学獣医学部のチーム。一般家庭で飼育されている10頭のペット猫たち(オス猫6頭+メス猫4頭 | 不妊手術済み | 平均年齢5.3歳)を対象とし、他の猫や人間の感情を理解する能力があるかどうかを検証しました。実験に参加した猫たちの条件は「6ヶ月未満のタイミングで譲渡された」「3歳から男性と女性が少なくとも1名以上いる家庭で飼われている」「他の猫と日常的に交流する機会がある」というものです。
音声と表情のリンク能力
調査チームは「選好凝視パラダイム」(preferential looking paradigm)と呼ばれる手法を採用し、調査対象となる猫たちを飼い主の膝の上に乗せ、前方のスクリーンに相反する2つの表情を同時に表示した状態でスクリーンの裏から感情価(喜 or 怒)を持つ音声を5秒間流しました。
例えばスピーカーから人間の唸り声が流れた際、笑顔よりも怒った顔の方を長く見つめる傾向があれば、「猫は人間の声と表情の両方を記憶して頭の中で的確に結びつけることができている」といった解釈になります。またスピーカーから猫のゴロゴロ音が流れた際、シャーシャー言っている時の顔よりも目を細めて気持ちよさそうにしている顔の方を長く見つめる傾向があれば、「猫は他の猫の声と表情の両方を記憶して頭の中で的確に結びつけることができている」といった解釈になります。
2日間のインターバルを置き、1頭につき3回の実験を行ってデータを集めたところ、「猫のシャーシャー」「人間の唸り声」「人間の笑い声」を聞いた時のリアクションに関し、一致指数が統計的に有意なレベルで0よりも大きかったと言います。「-1」が完全な不一致、「0」がどちらでもない、「1」が完全な一致という意味ですので、0よりも大きいということは何らかの感情価を含んだ聴覚情報(音声)と、それにリンクした視覚情報(表情)を頭の中で結びつけることができていると言うことになります。また2~3歳の若い猫における一致指数が0.60だったのに対し、5~9歳のシニア猫における一致指数が0.178という具合に、猫の年齢によって成績に明白な格差が見られました。
感情価の認識力
音声と表情の結びつきを理解しているからといって、ただちに猫が他の猫や人間の感情を理解してるということにはなりません。そこで調査チームは、ストレスに関連したリアクションを20ほどリストアップし、テストを受けている間の猫を観察することでどの程度ストレスを感じているかを推定しました。
その結果、「人間の唸り声」と「猫のシャーシャー」という音声刺激を与えられた時のストレスレベルは、その他2つの音声刺激の時と比べて明らかに大きかったと言います。一方、「人間の笑い声」と「猫のゴロゴロ」の間、及び「人間の唸り声」と「猫のシャーシャー」の間でストレスレベルに格差は見られませんでした。
こうした結果から、猫は少なくともマイナスの感情価に関連した声を理解できると推定されました。 Emotion Recognition in Cats
Angelo Quaranta, Serenella d’Ingeo, Rosaria Amoruso and Marcello, Animals 2020,10, 1107; DOI:10.3390/ani10071107
その結果、「人間の唸り声」と「猫のシャーシャー」という音声刺激を与えられた時のストレスレベルは、その他2つの音声刺激の時と比べて明らかに大きかったと言います。一方、「人間の笑い声」と「猫のゴロゴロ」の間、及び「人間の唸り声」と「猫のシャーシャー」の間でストレスレベルに格差は見られませんでした。
こうした結果から、猫は少なくともマイナスの感情価に関連した声を理解できると推定されました。 Emotion Recognition in Cats
Angelo Quaranta, Serenella d’Ingeo, Rosaria Amoruso and Marcello, Animals 2020,10, 1107; DOI:10.3390/ani10071107
ネガティブな反応には気をつけて
今回の調査により、 猫には他の猫の感情のみならず人間の感情も理解できる可能性が示されました。猫を飼っている人なら直感的に理解している事実ですが、客観的なデータとして突きつけられると日常生活の中で気を付けるべき点が浮かび上がってきます。
例えば淹れたてのコーヒーをすすった時、思わず「アチッ!」と大声を出してしまうかもしれません。入力した文字が誤変換された時、舌打ちをしてしまうかもしれません。 応援していた球団やサッカーチームが負けた時、ため息をついてしまうかもしれません。これらのネガティブな反応は至極当然のものですが、棚の上で寝ている猫がこうしたリアクションに気づき、知らないうちにストレスを感じている可能性があります。
過去に行われた調査でも、「猫は気落ちしている人間と社会的な交流を持とうとする」(:Rieger, 1999)とか、「飼い主が幸せそうな表情をしている時はポジティブな行動が増えて交流時間が増え、逆に飼い主が怒った表情をしている時はポジティブな行動が減る」(:Galvan, 2015)などと報告されています。また人医学の分野では「日常的に繰り返される激しい夫婦げんかが子どもの脳を傷つけている」といった怖い研究報告もあります(:NHK, 2017)。
ネガティブな感情を抱いた時は猫がいるところで放出するのではなく、できるだけトイレの中に引きこもって吐き出した方が良いでしょう。
例えば淹れたてのコーヒーをすすった時、思わず「アチッ!」と大声を出してしまうかもしれません。入力した文字が誤変換された時、舌打ちをしてしまうかもしれません。 応援していた球団やサッカーチームが負けた時、ため息をついてしまうかもしれません。これらのネガティブな反応は至極当然のものですが、棚の上で寝ている猫がこうしたリアクションに気づき、知らないうちにストレスを感じている可能性があります。
過去に行われた調査でも、「猫は気落ちしている人間と社会的な交流を持とうとする」(:Rieger, 1999)とか、「飼い主が幸せそうな表情をしている時はポジティブな行動が増えて交流時間が増え、逆に飼い主が怒った表情をしている時はポジティブな行動が減る」(:Galvan, 2015)などと報告されています。また人医学の分野では「日常的に繰り返される激しい夫婦げんかが子どもの脳を傷つけている」といった怖い研究報告もあります(:NHK, 2017)。
ネガティブな感情を抱いた時は猫がいるところで放出するのではなく、できるだけトイレの中に引きこもって吐き出した方が良いでしょう。