多頭飼いストレス:2頭
スイス・チューリッヒ大学の調査チームは単頭飼い6世帯(合計6頭)と多頭飼い6世帯(猫の優位と劣位がはっきりしている合計12頭)の尿中コルチゾールレベルを比較し、猫たちのストレスレベルに格差があるかどうかを調査しました。猫は全て完全室内飼いです。
その結果「単頭飼い vs 多頭飼い」「優位 vs 劣位」の間に格差は見られなかったといいます。またペット猫(単頭飼い+多頭飼い)とシェルター猫の比較も行いましたが、こちらでも差はなかったとのこと。
統計的に有意(=偶然では説明できない)とまではいかないまでも、猫の尿中コルチゾールと正の関係にあった項目は「1世帯当たりの人の数」と「猫たちが使用可能なm²」でした。一方、「1世帯当たりの猫の数」「猫1頭当たりのm²」「猫1頭当たりの人の数」とコルチゾールとの間に関連性は見つかりませんでした。
「1世帯当たりの人の数」が増えれば「猫1頭当たりの人の数」も増えますので、両方の項目において同じ関係性が見られるはずです。しかし前者においては正の相関が見られたのに対し、後者においては見られませんでした。理由として考えられるのは、「猫にストレスを与えているのは人間の密度ではなく特定の人間」という可能性です。 Influence of indoor-cat group size and dominance rank on urinary cortisol
Lichtsteiner, M; Turner, DC, Animal Welfare, Volume 17, Number 3, August 2008
その結果「単頭飼い vs 多頭飼い」「優位 vs 劣位」の間に格差は見られなかったといいます。またペット猫(単頭飼い+多頭飼い)とシェルター猫の比較も行いましたが、こちらでも差はなかったとのこと。
統計的に有意(=偶然では説明できない)とまではいかないまでも、猫の尿中コルチゾールと正の関係にあった項目は「1世帯当たりの人の数」と「猫たちが使用可能なm²」でした。一方、「1世帯当たりの猫の数」「猫1頭当たりのm²」「猫1頭当たりの人の数」とコルチゾールとの間に関連性は見つかりませんでした。
「1世帯当たりの人の数」が増えれば「猫1頭当たりの人の数」も増えますので、両方の項目において同じ関係性が見られるはずです。しかし前者においては正の相関が見られたのに対し、後者においては見られませんでした。理由として考えられるのは、「猫にストレスを与えているのは人間の密度ではなく特定の人間」という可能性です。 Influence of indoor-cat group size and dominance rank on urinary cortisol
Lichtsteiner, M; Turner, DC, Animal Welfare, Volume 17, Number 3, August 2008
多頭飼いストレス:2~4頭
ブラジル・サンパウロ大学の調査チームは家庭内における飼育頭数が猫たちにどのようなストレスを与えているかを検証しました。単頭飼い23世帯(23頭)、2頭飼い20世帯(40頭)、3~4頭飼い17世帯(57頭)に協力を仰ぎ、飼い主の主観的な評価でペット猫たちの性格を「ボス気質」「臆病」「お気楽」のどれかに分類してもらうと同時に、定期的に便を採取して中に含まれるストレスの指標(糖質コルチコイド代謝産物)の濃度を計測したところ、飼育頭数によって平均値に格差は見られなかったといいます。具体的には単頭飼いが337.71 ng/g、2頭飼いが268.09 ng/g、3~4頭飼いが314.87 ng/gという結果でした。
また猫たちの基本属性とストレスレベルの関係性を統計的に調べましたが、猫の性格、性別、不妊手術の有無、品種とストレスレベルは無関係と判断されました。逆に関係性が確認されたのは、「飼い主が”なでることを許容してくれる”と評した猫においてストレスレベルが高い」および「3~4頭飼育家庭において2歳未満の猫と2歳以上の猫を比べた場合、後者においてストレスレベルが高い」という2点でした。
どの家庭にも非常に高いレベルの個体がいたものの、飼い主によって敵対行動やいがみあいは報告されておらず、飼育頭数が増えるほど猫たちのストレスレベルが高まるという明白な関係性は確認できないと結論づけています。 Are cats (Felis catus) from multi-cat households more stressed? Evidence from assessment of fecal glucocorticoid metabolite analysis
D Ramos, A Reche-Junior, et al., Physiol Behav 2013 Oct 2, DOI: 10.1016/j.physbeh.2013.08.028
また猫たちの基本属性とストレスレベルの関係性を統計的に調べましたが、猫の性格、性別、不妊手術の有無、品種とストレスレベルは無関係と判断されました。逆に関係性が確認されたのは、「飼い主が”なでることを許容してくれる”と評した猫においてストレスレベルが高い」および「3~4頭飼育家庭において2歳未満の猫と2歳以上の猫を比べた場合、後者においてストレスレベルが高い」という2点でした。
どの家庭にも非常に高いレベルの個体がいたものの、飼い主によって敵対行動やいがみあいは報告されておらず、飼育頭数が増えるほど猫たちのストレスレベルが高まるという明白な関係性は確認できないと結論づけています。 Are cats (Felis catus) from multi-cat households more stressed? Evidence from assessment of fecal glucocorticoid metabolite analysis
D Ramos, A Reche-Junior, et al., Physiol Behav 2013 Oct 2, DOI: 10.1016/j.physbeh.2013.08.028
多頭飼いストレス:7~48頭
ブラジル・サンパウロ大学を中心とした共同チームは単頭飼いされている猫14頭(14世帯)と多頭飼いされている猫16頭(6世帯)を対象とし、便中に含まれるmGCM(糖質コルチコイド代謝物平均値)の濃度を比較することで、飼育環境が猫のストレスレベルに及ぼす影響を検証しました。単頭飼いの内訳はオス6頭、全頭不妊手術済み、平均55.5ヶ月齢(8ヶ月齢~13歳)。多頭飼い(1世帯に7~48頭)の内訳はオス5頭、9頭は不妊手術済み、平均75.4ヶ月齢(2~14歳)です。
猫の飼い主に協力を仰ぎ、週に4回のペースで便サンプルを採取してもらい、生理学的にストレスレベルや覚醒度のレベルと同一視されることが多いmGCMの濃度を検査しました。それに加え、飼い主にはWHOが開発した「WHOQOL-bref」と呼ばれる質問票に回答してもらい、生活の質を4つの側面(社会・身体・心理・環境)から評価しました。
調査の結果、家庭内における猫の数、猫の性別、不妊手術の有無、品種、年齢とストレス(覚醒)レベルとは無関係だったといいます。猫におけるmGCMの参照値は確定していないものの、過去に行われた調査では、少なくともストレスの徴候が見て取れない猫の便中レベルが16.6~165.3μg/gだったと報告されていますので、正常範囲内ではないかと判断されました。
D Ramos, MN Arena, et al., Animal Welfare 2012 21, DOI: 10.7120/09627286.21.2.285
猫の飼い主に協力を仰ぎ、週に4回のペースで便サンプルを採取してもらい、生理学的にストレスレベルや覚醒度のレベルと同一視されることが多いmGCMの濃度を検査しました。それに加え、飼い主にはWHOが開発した「WHOQOL-bref」と呼ばれる質問票に回答してもらい、生活の質を4つの側面(社会・身体・心理・環境)から評価しました。
調査の結果、家庭内における猫の数、猫の性別、不妊手術の有無、品種、年齢とストレス(覚醒)レベルとは無関係だったといいます。猫におけるmGCMの参照値は確定していないものの、過去に行われた調査では、少なくともストレスの徴候が見て取れない猫の便中レベルが16.6~165.3μg/gだったと報告されていますので、正常範囲内ではないかと判断されました。
mGCM(糖質コルチコイド代謝物平均値)
- 単頭飼い→71.9μg/g
- 多頭飼い→59.9μg g
D Ramos, MN Arena, et al., Animal Welfare 2012 21, DOI: 10.7120/09627286.21.2.285
猫のストレスを減らす方法
過去に行われた3つの調査において共通して見つかったのは、猫にストレスを与えているのは飼育頭数よりむしろ人間の存在というショッキングな関係性です。
猫の自発的なストレス回避法
家庭内における猫の数によってストレスレベルに大きな格差が見られなかった理由としては「社会的代償メカニズム」が想定されています。これは過密な生活環境によるストレスを軽減するため、猫たちが自発的にヒエラルキー(序列)を構成して無駄な争いを避けるというものです(:Ramos, 2012)。
スイス(2頭飼い)およびブラジル(7~48頭)の調査に参加した多頭飼育の飼い主たちは猫たちの社会的なステータス(ランク)を容易に答えることができました。この事実から上記「社会的代償メカニズム」が家庭内で機能し、1世帯に2~48頭という過密状態でもそれほどストレスを溜め込まずに暮らせていたのではないかと推測されます。
ストレス源としての人間
チューリッヒ大学の調査では、家の中における人間の密度ではなく特定の人間が猫にストレスを掛けている可能性が示されました。一例としては、猫の気分を無視して撫で回す、香水やデオドラントをつけすぎて臭い、服にタバコの臭いが染み付いている、体を無理やり拘束して爪切りをする、大きな声を出しながら覆いかぶさってくるなどが挙げられます。悪質な人になると前足をつかんで強引に踊らせたりもしますね。
サンパウロ大学の調査では、飼い主の社会的な満足度と単頭飼いされている猫のストレスレベルの連動が確認されました。「社会的な満足度」には友人が多い、恋人やパートナーがいる、家族や友人との関係が良好などが含まれます。これらの要素には人との交流が必須であり、家の中に恋人、友人、家族のメンバーが訪問する機会も多くなるでしょう。猫の扱い方を知らない人が強引に追いかけたり抱きしめたりする状況は容易に想像がつきます。
こうした状況を猫がストレスと感じると副腎皮質からコルチゾールが分泌され、連動して便中の糖質コルチコイド代謝産物が増加してしまうのではないでしょうか。ヒエラルキーによってストレスを受け流すことに慣れていない分、多頭飼育されている猫よりも単頭飼育されている猫の方に強く影響が出てしまうのかもしれません。