猫の血縁関係と仲良し行動
屋外に暮らす29頭と20頭からなる2つの猫コロニーを対象とした観察調査では、偶然以上の割合で一緒に過ごす「仲良し」がいたと報告されています(Wolfe, 2001)。しかしこの観察では猫同士の血縁関係まではわかりませんでした。
そこでアメリカにあるジョージア大学獣医学校のチームは28頭の猫(オス16+メス12頭)を対象とし、血縁関係と猫の親和行動との間にどのような関係性があるのかを検証しました。猫たちはフェンスで囲まれた屋外エリアと屋内とを自由に行き来でき、15頭は血縁猫が少なくとも1頭いる状態です。
さらに1頭に絞り込んだ集中観察では以下のような事実が判明しました。こちらでもやはり、血縁関係が猫同士の親密度に影響を及ぼしているようです。
Terry Marie Curtis, Rebecca J Knowles, Sharon L Crowell-Davis, Am J Vet Res(2003), DOI:10.2460/ajvr.2003.64.1151
そこでアメリカにあるジョージア大学獣医学校のチームは28頭の猫(オス16+メス12頭)を対象とし、血縁関係と猫の親和行動との間にどのような関係性があるのかを検証しました。猫たちはフェンスで囲まれた屋外エリアと屋内とを自由に行き来でき、15頭は血縁猫が少なくとも1頭いる状態です。
- 血縁猫15頭の詳細
- 母猫/子猫4頭, 母猫/子猫3頭, 母猫/子猫1頭, きょうだい猫2組(4頭)
- 猫同士が7ヶ月一緒にいる場合✓血縁猫と1m以内にいる頻度は5.5±2.12回
✓非血縁猫と1m以内にいる頻度は3.6±4.36回 - 猫同士が76ヶ月一緒にいる場合✓血縁猫と1m以内にいる頻度は12.6±9.53回
✓非血縁猫と1m以内にいる頻度は6.4±6.28回
さらに1頭に絞り込んだ集中観察では以下のような事実が判明しました。こちらでもやはり、血縁関係が猫同士の親密度に影響を及ぼしているようです。
- 血縁猫との関係✓1m以内にいる頻度=8.44±5.32回
✓グルーミングされる頻度=2.19±2.84回 - 非血縁猫との関係✓1m以内にいる頻度=4.17±2.46回
✓グルーミングされる頻度=0.35±0.49回
Terry Marie Curtis, Rebecca J Knowles, Sharon L Crowell-Davis, Am J Vet Res(2003), DOI:10.2460/ajvr.2003.64.1151
重要なのは血縁と同居期間
「猫の性別と相性」でも詳しく解説したとおり、一緒にいる時間が長くなるほど猫同士の攻撃行動が減っていくようです。当調査結果と考え合わせると、猫同士の同居期間が長くなればなるほど親密になるか、悪くともお互いを無視するようになるものと推測されます。
猫は孤独を好むという一般的な思い込みがありますが、血縁関係にある猫同士の場合、1m以内というかなり近い距離で過ごす頻度や時間が増えることが明らかになりました。ただし親子関係は「母/子」に限定されており、きょうだい猫の性別も不明ですので、すべての猫に当てはまると断言するのは早計でしょう。
猫同士がお互いに接近を許容する理由としては、外敵に攻撃される可能性を分散し、場合によっては集団で反撃することができるため、本能的に安心するからではないかと考えられます。そういった意味では草食動物に近い感覚をもっているのかもしれません。 きょうだい猫に関しては、実際の血のつながりよりも生後2~7週齢時の「社会化期」が強く影響しているのではないかと考えられます。きょうだい猫は生後間もない時期を母猫のそばで過ごす機会が多いため、必然的に社会化期を共有する可能性が高まります。その結果が頻繁なアログルーミングと頻繁な接近行動です。
しかしたとえ血縁関係がなくても上記「社会化期」をともに過ごす機会があれば、まるで一緒に育ったきょうだい猫と同じくらい親密な関係になる可能性が十分にあります。逆に同じ母猫から生まれたとしても、出産時期が異なる年の離れたきょうだいや、生後まもなく生き別れたきょうだいの場合は血縁に関わらず「赤の他猫」のように振る舞うかもしれません。 多頭飼いをする際に「猫を迎えるときはきょうだいを一緒に」というアドバイスはよく聞きますが、当調査の結果からまとめると「母猫と子猫を一緒に」「ともに育ったきょうだい猫を一緒に」「社会化期を一緒に過ごした猫を一緒に」となるでしょう。
猫は孤独を好むという一般的な思い込みがありますが、血縁関係にある猫同士の場合、1m以内というかなり近い距離で過ごす頻度や時間が増えることが明らかになりました。ただし親子関係は「母/子」に限定されており、きょうだい猫の性別も不明ですので、すべての猫に当てはまると断言するのは早計でしょう。
猫同士がお互いに接近を許容する理由としては、外敵に攻撃される可能性を分散し、場合によっては集団で反撃することができるため、本能的に安心するからではないかと考えられます。そういった意味では草食動物に近い感覚をもっているのかもしれません。 きょうだい猫に関しては、実際の血のつながりよりも生後2~7週齢時の「社会化期」が強く影響しているのではないかと考えられます。きょうだい猫は生後間もない時期を母猫のそばで過ごす機会が多いため、必然的に社会化期を共有する可能性が高まります。その結果が頻繁なアログルーミングと頻繁な接近行動です。
しかしたとえ血縁関係がなくても上記「社会化期」をともに過ごす機会があれば、まるで一緒に育ったきょうだい猫と同じくらい親密な関係になる可能性が十分にあります。逆に同じ母猫から生まれたとしても、出産時期が異なる年の離れたきょうだいや、生後まもなく生き別れたきょうだいの場合は血縁に関わらず「赤の他猫」のように振る舞うかもしれません。 多頭飼いをする際に「猫を迎えるときはきょうだいを一緒に」というアドバイスはよく聞きますが、当調査の結果からまとめると「母猫と子猫を一緒に」「ともに育ったきょうだい猫を一緒に」「社会化期を一緒に過ごした猫を一緒に」となるでしょう。
時間が経てば猫同士の攻撃行動(ケンカ)が減り、仲良くなるというアドバイスも有効です。