トップ2022年・猫ニュース一覧11月の猫ニュース11月14日

純血猫の平均的な出生時体重一覧リスト

 犬と比較した場合、猫の体の大きさは品種ごとのバラツキがそれほど大きくありません。では生まれたばかりの出生時体重に着目したとき、具体的にどの程度の差があるのでしょうか。

純血猫の出生時体重

 特定の品種協会に登録されたいわゆる「純血種」の出生時体重を調べたのは、ペットフードメーカー「ロイヤルカナン」とフランス・トゥールーズ大学からなる共同チーム。2016年から2020年の期間、専門誌、ダイレクトメール、Facebook、品種協会などを通じてアンケート配布し、フランス国内で純血種の繁殖に関わっている猫のブリーダーからボランティアベースで回答を募りました。
 「出生時体重」を子猫が生まれた直後~生後数時間以内に計測された最初の体重値とし、体重データが欠落していた子猫、死産の子猫、最低個体数が50頭未満の品種に属する子猫を除外していった結果、最終的に139のキャッテリ(繁殖施設)から15品種に属する3,547頭分のデータが集まったといいます。出産回数はトータルで932回でした。平均同腹子数(=1回の出産で生まれた子猫の数)は4.2頭で、同腹子に少なくとも1頭の死産子が含まれていた割合は18%でした。
 出生時体重に大小の影響を及ぼしうると判断されたパラメーターは以下です。

品種

 体重との関連が最も強いパラメータが「品種」でした。個体数はスコティッシュフォールド(および長毛種のハイランド)の55頭からメインクーンの582頭までとかなり幅があり、中央値は179頭。品種ごとに見た子猫の出生時体重(最小二乗平均値)は以下です。 純血種猫の出生時体重平均値一覧グラフ(最小二乗平均)  また出生時体重と同腹子数を2次元的にプロットしたところ、3つのクラスターが浮かび上がってきたといいます。具体的には以下。
出生時体重と同腹子数から見た子猫の3クラスター
出生時体重と同腹子数から見た猫の3つのクラスター

性別

 性別ごとに体重の最小二乗平均値を求めた所、メスが93.8gに対しオスが98.8gと、オスの方が5%ほど重いことが明らかになりました。

同腹子数

 同腹子数が増えるにつれ体重が減少することが明らかになりました。具体的には同腹子数が1増えるごとに個々の体重が2.6(± 0.2)g減るというものです。

季節

 夏もしくは秋に生まれた子猫の最小二乗平均値は、春もしくは冬に生まれた子猫のそれに比べて軽いことが明らかになりました。 季節別に見た純血種猫の出生時体重平均値一覧グラフ

死産子の有無

 同腹子に死産があった場合の体重が95.2gだったのに対し、なかった場合のそれが97.5gと、わずかに重くなることが明らかになりました。

母猫の年齢

 母猫の年齢が上がるとともに体重が増えることが明らかになりました。
Birth weight in the feline species: Description and factors of variation in a large population of purebred kittens
Amelie Mugniera, Thibault Canea, Virginie Gaillard et al., Theriogenology(Vol.190), DOI:10.1016/j.theriogenology.2022.07.008

子猫の発育の指標として

 繁殖業に関わっていない一般の人にとって今回のデータが役に立つのは、たまたま保護したのが純血種の生後間もない子猫だった場合や、ブリーダー崩壊で引き取った母猫が出産した場合などです。せいぜい新生子の発育具合が標準的かどうかを推察できるくらいですので、利用できる場面はかなり限られるでしょう。
 なお以下のデータに関しては、ひょっとすると非純血の短毛種(いわゆる普通の猫)にも当てはまるかもしれません。

性別

 体重の性差に関しては短毛種でも確認されています。ただ成長過程で顕著になっていくものですので、出生直後のタイミングですでに差があるかどうかはわかりません。

同腹子数

 同腹子の数が多くなるにつれ個々の体重が少なくなるという現象は、胎盤を持つ哺乳動物全般で確認されています。母猫の子宮にはキャパシティがありますので、きょうだいが多くてギュウギュウ詰めの状態だと個別の発育がどうしても制限されてしまいます。

季節

 夏もしくは秋に生まれた子猫の体重がやや少ないのはなぜでしょう?ウサギにおいては夏季の熱ストレスが、反芻動物では光周期と太陽光の影響を受ける植物の摂取状態が母体に影響し、出生胎子の発育を変動させると考えられていますが、猫に同じ理屈が当てはまるのかはわかりません。
 アンケート対象が商業的ブリーダーであることを加味すると、何らかの方法で強引に妊娠を促した結果、母体への負担が増えて胎子の発育が不十分になったという可能性もあるでしょう。調査チームは人間の管理下にある栄養状態よりも、季節による光周期の影響が大きいのではないかと推測しています。
 なお誕生月に関連した余談ですが、春に生まれた猫は夏至以降に生まれた猫より5倍ほど太りやすくなる可能性が示唆されています。 春に生まれた猫は夏至以降に生まれた猫より5倍ほど太りやすくなるかも

死産子の有無

 同腹子に死産子が含まれている場合、体重がやや少なくなる現象に関してはよくわかりません。死産子が本当に死産の状態で生まれたのか、それとも何らかの障害や奇形を抱えており、ブリーダーが便宜上「死産」としてカウントしたのかによって解釈が変わってくるでしょう。
 たとえば前者の場合、母体内における死亡胎子が何らかのメカニズムを通して同腹子の成長を阻害した可能性が考えられます。また後者の場合、そもそも同腹子数が1頭多かったわけですから、子宮内における限られたスペースの関係上、個々の成長がやや抑えられるのは自明です。

母猫の年齢

 母猫の年齢が高いと出生時体重が増えるという関係性については、一度出産を経験することで子宮内腔が物理的に拡大し、キャパシティが増えたという単純な理由がまず思い当たります。しかし当調査内では、子猫の75%までもが4歳以下というかなり若い母猫から生まれていましたので、4歳以上のサンプルを別途集めないと因果関係ははっきりしないでしょう。
国によって繁殖ラインが異なりますので、フランス国内のデータが日本にも適用できるかどうかはわかりません。ほとんどの方が接するのは短毛種の子猫でしょうから、以下のページにある成長グラフを見た方が遥かに実用的です。子猫の成長曲線