猫の親和行動
「親和行動」(しんわこうどう)とは、複数の動物間で見られる親愛の情を示す行動のことです。猿で言えば「ノミ取り」、人間で言えば「ハグ」や「キス」に相当します。Leyhausen(1979)は仲が良い猫が頻繁に見せる親和行動を以下の6つに分類しました。
なおアログルーミングに関しては毛づくろいばかりするで、アロラビングに関しては顔をこすり付けるで、社会的な遊びに関しては猫と遊ぶでも詳説してあります。
猫の親和行動
- 一緒に寝る
- 互いにグルーミングする(アログルーミング)
- 互いに体をこすり付ける(アロラビング)
- 長い別離の後のあいさつ
- 肩を並べて走る
- 社会的な遊びをする
なおアログルーミングに関しては毛づくろいばかりするで、アロラビングに関しては顔をこすり付けるで、社会的な遊びに関しては猫と遊ぶでも詳説してあります。
猫の敵対行動
「敵対行動」(てきたいこうどう)とは、いがみ合っている猫同士の間に見られる行動のことです。代表例としては、縄張りやメス猫をめぐって行われるオス猫同士のケンカなどが挙げられます。ケンカの前にはたいてい、2匹の猫が至近距離でにらみ合い、まるで「バカ殿様」が出すような甲高い声を発しますので、誰が見てもすぐに分かるでしょう。
オス猫同士のケンカは儀式的なものが多く、命に関わるような傷を負うことはまれです。しかし、どうしても止めたいときは、猫同士の間に割って入るのではなく、風船を割ったり、バケツを地面に落とすなど、猫をびっくりさせるような大きな音を立てたほうが効果的です。争っている最中に手を入れると、引っかかれて思わぬ大怪我を負うこともあります。 以下は猫同士が「本気で」ケンカをしたときに見られる一般的な特徴です。多くの場合、実際の攻撃行動に移る前に「毛を逆立てる」「耳を頭の後ろに寝かせる」「シャーシャーと威嚇する」「うなる」などの行為が先行します。逆にこうした行為が先行しない場合は単なる社会的な遊び(Social Play)と判断されます。
オス猫同士のケンカは儀式的なものが多く、命に関わるような傷を負うことはまれです。しかし、どうしても止めたいときは、猫同士の間に割って入るのではなく、風船を割ったり、バケツを地面に落とすなど、猫をびっくりさせるような大きな音を立てたほうが効果的です。争っている最中に手を入れると、引っかかれて思わぬ大怪我を負うこともあります。 以下は猫同士が「本気で」ケンカをしたときに見られる一般的な特徴です。多くの場合、実際の攻撃行動に移る前に「毛を逆立てる」「耳を頭の後ろに寝かせる」「シャーシャーと威嚇する」「うなる」などの行為が先行します。逆にこうした行為が先行しない場合は単なる社会的な遊び(Social Play)と判断されます。
典型的な猫のケンカ
- 瞳孔を開いて爪を出し、頬、首、肩などを皮膚の厚い部分噛もうとする
- 体重を後ろに掛け、爪を出した片方の前肢を挙げる
- 首筋を噛もうとすると仰向けにひっくり返り、噛み付いたり前肢で相手を押さえたり後肢で蹴飛ばしたりする
- くんずほぐれつで地面を転げまわった後、急に飛びのいて再び交戦を始める
- 本気で攻撃する際は目と鼻を狙って引っかいてくる
- 背中をつけて仰向けになり、四肢の爪を見せるのは極端な防御姿勢
- 負けた猫は身を後方に動かし、目を背け、ゆっくりと後ずさりする
猫の序列行動
「序列行動」(じょれつこうどう)とは、「敵対行動」を取るほどいがみ合っておらず、かといって「親和行動」を取るほど親しくもない間柄にある猫同士が、自分たちの序列を確認するためにしばしば見せる行動です。無駄な争いを避けるため自発的にヒエラルキー(序列)を構成する「社会的代償メカニズム」の一種ではないかと考えられています(:Ramos, 2012)。言われてみれば確かに、ご飯やトイレのたびに順番を争ってケンカをしていたのでは体力が持ちませんね。
「優位にある猫」(dominant)と「劣位にある猫」(subordinate)が見せる典型的な姿勢や行動を以下に示しました。各項目の前にある数字は、写真内の数字を表しています。猫の場合は犬ほどの一貫性はなく、またよく観察していないと見過ごしてしまうこともしばしばです(Berstein1981, Feldman1994など)。 The Welfare of Cats
多頭飼いしている家庭においては、猫同士の間に上記したような行動が見られないかどうかを常に確認しておく必要があります。1匹だけが集中的に「劣位にある猫」になっているような場合は、かなりのストレスを感じている可能性もありますので、「部屋を別々にする」といった飼育環境の見直しが必要となるでしょう。またオス猫の場合は、攻撃性を減らすために去勢手術を施すことも考慮します。
なお2023年、スロバキアにあるコシツェ獣医薬学大学のチームは2頭の猫が見せる行動が敵対的(ケンカ)なのか友好的(遊び)なのかを判断する際のヒントを明確化するための調査を行いました。その結果、「子猫が黙々と取っ組み合いをしている状況」は遊び、「成猫が声を発しながらじっと睨み合っている状況」はケンカである可能性が高いとの結論に至っています。飼い主が仲裁に入るかどうかを決める際は、「声」を1つの目安にするとよいでしょう。詳しい調査内容は以下のページにまとめてあります。
「優位にある猫」(dominant)と「劣位にある猫」(subordinate)が見せる典型的な姿勢や行動を以下に示しました。各項目の前にある数字は、写真内の数字を表しています。猫の場合は犬ほどの一貫性はなく、またよく観察していないと見過ごしてしまうこともしばしばです(Berstein1981, Feldman1994など)。 The Welfare of Cats
猫の序列行動
優位にある猫
1:じっと見つめる
2:押しのける
3:優先的に通る
4:追い掛け回す
5:猫パンチのフェイント
6:動きを制する
7:怒りの姿勢を見せる
劣位にある猫
1:目線をそらす
2:資源や場所を譲る
3:道を譲る
4:追いかけられる
5:パンチを受ける
6:制圧される
7:怯えの姿勢を見せる
その他の行動
その他、日常的によく見られる猫の姿勢です。猫同士の間でも見られますし、猫と人間との間でも見られます。2021年に行われた最新の観察調査では、猫同士のコミュニケーションにおいては耳の位置が、猫と人のコミュニケーションにおいてはしっぽの位置が特に重要な役割を果たしていることが確認されました。
しっぽ直立させる
「しっぽを直立させる」という行動は、相手に対して敵意を抱いていないことを示すサインです。しっぽを上げた猫の等身大シルエットを不特定多数の猫に見せたところ、しっぽを上げるという行動を誘発したといいます。こうしたことから、「しっぽ上げ」には友好性を示すという意味があると考えられています。
なお、犬においてしっぽを高々と上げるという行為は「相手に対する優位性の誇示」という意味を持ち、猫とは真逆です。
なお、犬においてしっぽを高々と上げるという行為は「相手に対する優位性の誇示」という意味を持ち、猫とは真逆です。
仰向けになって腹を見せる
「仰向けになっておなかを見せる」という姿勢は、子猫の遊びに見られる典型的なもので、「ベリーアップ」と呼ばれます。子猫がこの姿勢をとったときは、「さあ!かかってきなよ!」と、相手を挑発する意味を持ちます。
成猫がこの姿勢をとったときは、腹部を見せると同時に、武器である後肢の爪を構えることがあります。これは「ケンカはしたくないから放っておいて!」といった具合に、不要な争いは避けたいという意味です。また、繁殖期のメス猫においては、オス猫を誘い込むという意味を持ちます。
Feldman(1993)の研究によると、若いオス猫ほど相手より先に仰向けに転がり、逆に年長のオス猫ほど、仰向けディスプレーの受け手になることが多かったといいます。
成猫がこの姿勢をとったときは、腹部を見せると同時に、武器である後肢の爪を構えることがあります。これは「ケンカはしたくないから放っておいて!」といった具合に、不要な争いは避けたいという意味です。また、繁殖期のメス猫においては、オス猫を誘い込むという意味を持ちます。
Feldman(1993)の研究によると、若いオス猫ほど相手より先に仰向けに転がり、逆に年長のオス猫ほど、仰向けディスプレーの受け手になることが多かったといいます。
しっぽを水平にして近づく
「しっぽを水平~45度程度の角度に固定して相手に接近する」という行為は、主にメス猫による性的なアプローチと考えられています。外陰部をさらすことで、そこから発せられるフェロモンを、よりオス猫の鼻(ヤコブソン器官)に届けやすくしているのかもしれません。
「フェロモン」とは、相手をある一定の行動にとらせる微量物質のことであり、「性フェロモン」のほか、猫の顔面から分泌され、鎮静効果をもつ「フェイシャルフェロモン」が有名です。
「フェロモン」とは、相手をある一定の行動にとらせる微量物質のことであり、「性フェロモン」のほか、猫の顔面から分泌され、鎮静効果をもつ「フェイシャルフェロモン」が有名です。
家の中に複数の猫がいる場合、飼い主は常にチェックを行いストレスの原因をできるだけ取り除かなければなりません。詳しい方法は「猫の多頭飼い・完全ガイド」で解説してあります。