猫の言葉・気持ちが表れる状況
猫がすり寄ってきたかと思うと、突然ほほをこすりつけてきました。この時の猫の気持ちは?
猫の言葉・気持ちの解説
写真のように、猫が体の一部を人間にこすり付けてくるとき、そこには以下に述べる3つの理由があると考えられます。
猫のこすりつけの理由
- 所有権を主張するため
猫が顔をこすり付けてくる第一の理由は、所有権の主張です。
猫は「臭腺」(しゅうせん)と呼ばれる臭いを出す器官をもっており、これは額の両側、唇の両側、あごの下、しっぽ、肉球、肛門(こうもん)の両側に存在しています。 猫は顔をこすり付けることで、こうした臭腺から出る匂いを対象に残し、「これは私のものよ!」といった感じで所有権を主張しているものと考えられます。人間に置き換えると、指でちょろっとツバを付ける感じでしょうか。 - 親しみを表すため
猫が顔をこすり付けてくる第二の理由は、親しみの表明です。
猫同士が互いに頭や体をこすり合うことは、「アロラビング」(allorubbing)と呼ばれ、親しみを示す親和行動の一種とされます。ですから、猫が人間に対して体の一部をこすり付けてきたときは、ある程度親しみを抱いてくれている証拠と考えて間違いないでしょう。なお1998年にSungらが行った観察によると、家庭内でずっと一緒にいる猫同志よりも、狩りなどに出かけて一時的に別離状態にあった野良猫同志の方が、より頻繁に行うそうです。人間に置き換えると「よう!久しぶり!」と言いながら抱き合う感じに近いのかもしれません。また、猫の祖先種である「リビアヤマネコ」でも同様の行動が見られるとのこと(Smithers, 1968)。 - 優位者へのあいさつ
こすり付けの第三の理由は、優位者へのあいさつです。
Macdonaldが1987年に行った調査では、「こすりつけ行動を受けている側の猫は優位にある」そうです。こすりつけ行動は、「メス猫→オス猫」、「メス猫→メス猫」、「子猫→メス猫」という方向性はあるものの、オス猫から自発的に行うこすりつけは見られないとか。このことから、「こすりつけ=地位の低い猫から高い猫へと行うあいさつ行動」ではないかと推察されています。
この仮説が正しいとすると、人間に擦り寄ってくる猫は、人のことを優位者として認めてくれているということになります。いつもおいしいエサをくれ、優しくなでてくれるのですから、「自分の保護者」と思い込むのは、当然と言えば当然でしょう。