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猫を放し飼いにしてはいけない理由~無責任が交通事故による負傷と路上死を増やす

 「殺処分ゼロ」というスローガンは、人の手によって行政機関に持ち込まれ、ガス室の中で殺される猫たちの数をなくしましょうという意味合いでよく使われます。しかし仮に行政が発表する殺処分の数がゼロになったとしても、猫にまつわるすべての問題が解決するわけではありません。屋外で人知れず死を迎えている負傷動物や路上死動物の数を減らさない限り、猫好きたちの心が休まる日はなかなか来ないでしょう。
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猫の放し飼いは動物虐待

 猫の放し飼いはネグレクト(怠慢飼育)という動物虐待です。このことは放し飼い猫の寿命が縮んでいる事実からも明白に示されています。
 2023年に公開されたペットフード協会の統計データ「全国犬猫飼育実態調査」では、完全室内飼いの猫と屋外へのアクセスができる猫との間で、平均寿命に大きな格差があることがわかります。 屋外にアクセスできる猫では、完全室内飼いの猫より2歳ほど寿命が短い  上のグラフで示したように、外に出ることができる猫では2.07歳ほど平均寿命が短くなっています。2023年における猫の飼育頭数「907万頭」を当てはめ、もしすべてが放し飼いだと仮定すると、日本全国でこの先1,877万年分の命が何らかの理由で短縮することになります。
 屋外アクセスが危険であるという事実はなにも日本に限った話ではありません。アメリカ・カリフォルニア大学デーヴィス校の調査チームが1989年から2019年までの期間、同大学付属の獣医療教育病院に死後解剖を目的として回されてきたペット猫を対象として死因や寿命に関する統計データを取ったところ、放し飼いされている猫は室内飼育されている猫より2歳ほど死亡時年齢が若い(=早死している)ことが判明したといいます。 ペット猫の寿命と死因統計(米国編) 猫の飼育環境別に見た死亡時年齢中央値比較グラフ  平均寿命の格差が生まれる理由は屋外に出ることによって感染症、行方不明(迷子)、交通事故、虐待などに遭うからです。こうした知識があって放し飼いにしているにしても、こうした知識がそもそもないにしても、猫を放し飼いにしている時点で、その飼い主はペット動物の健康と安全をないがしろにしています。つまり冒頭で述べたようにネグレクトという動物虐待を行っているのです。
 2019年の末から始まった新型コロナウイルスの世界的な大流行により、多くの人が自分の死を身近に感じたことと思います。安全な家があるのに猫を屋外に出すことは、病気が蔓延する屋外に子供を置き去りにするのと同じことです。以下ではこの表現が決して言い過ぎではないことを具体的に示していきます。
NEXT:病気のリスク

病気のリスク

 猫を放し飼いすることによって不特定多数の屋外猫や環境中の病原体と接触する機会が生まれ、病気への感染率が高まってしまいます。2019年、アメリカにあるオーバーン大学の調査チームが、世界中で報告されているさまざまな疾患リスクを網羅的に調べたところ、完全室内飼いの猫と比較して、外に出ることができる猫の感染リスクが2.77倍になることが明らかになりました。以下で一部をご紹介しますが、実際にはまだまだあります。

猫エイズウイルス感染症

 猫エイズウイルス感染症とはレトロウイルス科のレンチウイルスに属する猫免疫不全ウイルス(Feline Immunodeficiency Virus, FIV)によって引き起こされる疾患のことです。
 2002年に日本大学のチームが日本全国から集めた1,088の血液サンプルを調べたところ、陽性率が9.8%(107サンプル)だったと報告されています(Maruyama, 2002)。またさまざまな国で行われた調査で共通して報告されている感染リスクは、「オス猫」「成猫」「屋外アクセス」という3項目です。
 猫を外に出さなければ、感染猫との接触自体が断たれますので、必然的にFIVに感染することもありません。 猫エイズウイルス感染症

猫白血病ウイルス感染症

 猫白血病ウイルス感染症とは、「猫白血病ウイルス」(FeLV, Feline Leukemia Virus)に感染することによって引き起こされる疾患のことです。
 さまざまな国で行われた調査で共通して報告されているのは猫エイズウイルス感染症(FIV)と同様、「オス猫」「成猫」「屋外アクセス」という3項目です。野良猫や屋外に自由に出られる放し飼い猫の場合、不特定多数の外猫とコンタクトする機会がありますので、どうしても感染リスクは高まってしまいます。
 FeLVに感染した1,000頭と未感染の8,000頭の生存期間を比較した大規模な調査では、感染猫の生存期間が4.9年だったのに対し、未感染猫のそれが6.0年だったと報告されています(Levy, 2006)。同様に、FeLVに感染した800頭と未感染の7,000頭の生存期間を比較した別の調査では、感染猫の生存期間が2.4年だったのに対し、未感染猫のそれが6.3年だったと報告されています。
 FeLVは感染すると1~4年も寿命が縮んでしまう危険な病気です。放し飼い猫の寿命が2年ほど短いという事実と無関係ではないでしょう。 猫白血病ウイルス感染症

猫伝染性貧血

 猫伝染性貧血とは、マイコプラズマ(真性細菌)のうち、赤血球表面に取り付いて機能不全に陥れる性質を持った「ヘモプラズマ」(Hemotropic Mycoplasma)と呼ばれる種によって引き起こされる貧血のことです。
 2016年にドイツで行われた調査では、オス猫の感染率はメス猫の3.6倍、外を出歩く猫は外に出ない猫の9.6倍、多頭飼い猫は単頭飼い猫の8.7倍感染リスクが高いと報告されています(→詳細。これら全てが示しているのは、「出血を伴うような敵対的闘争」が感染率を高めているという可能性です。
 猫伝染性貧血の感染リスクが放し飼いによって高まっていることは明らかです。 猫伝染性貧血

ノミ皮膚炎

 ノミ皮膚炎とは、ノミの唾液によって患部が赤くなったりかゆくなったりする状態のことです。
 2012年3月から2013年5月の期間、ヨーロッパ7ヶ国にある9つの動物病院を受診した1,519頭の猫を対象としてノミの感染率を調べたところ、屋外に出られない猫が8.9%だったのに対し、出られる猫では18%という高い値が確認されたといいます。リスクを算定したところ、屋外にアクセスできる猫の方が74%も感染する危険性が高いとの結果になりました(Beugnet, 2014)
 ネコノミは「猫ひっかき病」「発疹熱」「猫伝染性貧血」「ペスト」などを媒介する厄介な害虫です。 また近年では「猫白血病ウイルス感染症」を媒介する危険性も指摘されています。 猫のノミ皮膚炎

マダニ症

 マダニ症とは、ダニの一種である「マダニ」に咬まれることで発症する病気のことです。
 マダニは皮膚炎を引き起こすだけでなく、体内に含んでいる様々な病気を他の動物の移してしまうことで知られています。具体的には「日本紅斑熱」「ライム病」「バベシア症」「Q熱」などです。また近年は致死性の高い重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介することから危険視されています。
 猫を外に出さなければ、こんな厄介な害虫に感染することはありません。 猫のマダニ症NEXT:動物虐待のリスク

動物虐待のリスク

 猫の放し飼いは動物虐待に遭うリスクを高めます。
 2018年、東京都福祉保健局が「東京都における犬及び猫の飼育実態調査の概要(PDF)の平成29年度版を公開しました。都内に暮らす人1,867人を対象として犬に関するアンケート調査を行った所、67.3%の人から「好き」、5.4%の人から「嫌い」という回答が得られたといいます。一方、同様の調査を猫に関して行った所、「好き」が48.2%、「嫌い」が17.2%だったとのこと。 東京都民に聞いた「犬と猫に対する好み」の集計結果  犬も猫も愛玩動物として人気ですが、犬と比較した場合、猫を嫌う人がかなりいるという事実は否めません。猫好きからすると「こんな可愛い動物を嫌う人がいるわけない!」と思いがちですが、実際には想像以上に多くの人が猫に対して嫌悪感を抱いているものと推定されます。おそらく爪で車に傷をつけられた、庭先に糞をされた、ベランダが毛だらけになったといった迷惑行為が、こうしたマインドに拍車をかけているのでしょう。
 屋外における猫を対象とした虐待の事例としては「しっぽをつかんで用水路に投げ込む」「毒餌や殺鼠剤をまく」「エアガンで撃つ」「捕獲して火あぶりにする」など様々です。
 「猫を嫌う人なんているわけない」などと呑気(のんき)なファンタジーを抱いて放し飼いを許していると、取り返しのつかない虐待事件に巻き込まれることだってあります。具体的な事例は「動物の虐待事例等調査報告書(平成30年版)などでご確認ください。ちなみにここに記載されているのはニュースなどで事件になったケースだけです。水面下で行われている虐待事件はまだまだあります。
NEXT:負傷するリスク

負傷するリスク

 猫の放し飼いは屋外で負傷するリスクを高めます。
 犬や猫の殺処分を話題にする時、参照データとして環境省が公開している「犬・猫の引取り」という項目が引用されることが大半です。しかしその下に目立たない形で「負傷動物」という項目が設けられていることも忘れてはいけません。負傷動物とは、屋外で病気にかかったり怪我をした動物のことで、動物愛護法の第36条では自治体や市民に以下のような義務(努力義務)が定められています。
負傷動物等の発見者の通報措置
●道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、猫等の動物又は犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
●都道府県等は、前項の規定による通報があったときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。動物の愛護及び管理に関する法律
 上記した法律により、都道府県等は市民からの通報によって負傷動物として収容した犬や猫の数をカウントしなければなりません。そしてその数を合計したものが、以下に示す環境省の「負傷動物」というデータです(→出典, 棒グラフの赤い部分は殺処分数)。すべての人が負傷動物を通報するわけではなく、また動物自身が人目を避けて隠れているケースもあるため、実際の数は報告数より更に増えるものと推測されます。
負傷動物データ(平成29年)
平成29年度における負傷動物として収容・殺処分された犬と猫の棒グラフ
  • 負傷犬の収容数=816頭
  • 負傷犬の殺処分数=349頭
  • 負傷猫の収容数=11,884頭
  • 負傷猫の殺処分数=7,930頭
 平成29年度(2017年4月~2018年3月)、負傷動物として収容された猫の総数が「11,884頭」で、そのうち「7,930頭」が殺処分されていることがお分かりいただけるでしょう。これは同年度に引き取りの結果として殺処分に至った猫「34,865頭」のおよそ22.7%に相当する数です。処分数の中には病気や怪我の結果として保管中に死亡してしまった数まで含まれているものの、収容動物に手厚い治療を施すという状況は考えにくいことから考えると、苦悶のうちに死んでいったであろう事は想像に難くありません。 負傷動物として収容される猫においては成猫の割合が高い  また引き取りの結果として殺処分された猫のうち、離乳前の子猫が占める割合は62%(21,613/34,865頭)という高値だったのに対し、負傷の結果として殺処分された猫の中で子猫が占める割合はわずか38%(3,026/7,930頭)にとどまっています。
負傷動物に成猫が多いという事実は、子猫よりも身体能力が高く行動範囲も広い成猫のほうが、より交通事故に遭って負傷する危険性が高いことを物語っているのではないでしょうか?
NEXT:路上死するリスク

路上死するリスク

 猫の放し飼いは路上で事故に遭って死んでしまうリスクを高めます。
 「殺処分数」や「負傷動物数」とは違い、全く数字に表れていないものとして「路上死」(ロードキル)があります。これは交通事故や病気により屋外で死亡した後、処理された動物たちのことです。「動物愛護法の36条第2項」では「犬、猫等の動物の死体を発見した者は、速やかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない」と定められています。しかし保健所などに連絡をしても、死体の処理は道路の管理機関やゴミ回収業者に回されるというパターンがほとんどです。結果として、毎年どのくらいの犬や猫が路上で死んでいるのかを正確に把握していない自治体も中にはあります。

路上死猫の実データ

 実際の所、いったいどのくらいの猫が毎年路上で死んでいるのでしょうか?データは限られていますが、いくつかヒントになる数字があります。以下はその一例です。

沖縄県の路上死猫データ

 2016年4月の「沖縄タイムス」内の記事によると、沖縄本島で2015年度、車に轢(ひ)かれるなどして死んだ猫の数が2,684件に上ったといいます。猫の死体の回収件数は、国道が1,334件、県道が1,350件で、離島や本島の市町村道の回収件数を加えると、実数はさらに増える公算が大きいとのこと。このデータを沖縄県における直近2014年度の猫の殺処分数2,679頭と比較してみると、ほぼ同程度、もしくはそれ以上ということになります。
 沖縄県内で猫の轢死(れきし)が多い理由としては、放し飼いが当たり前という風土のほか、エサだけ与えてあとは放置するというあいまいな飼い方をしている人が多いためだと推測されています。 沖縄タイムス(2016年4月12日)

京都府の路上死猫データ

 平成26年4月、京都府健康福祉部の調査チームは府全域25市町村に対して動物の死体処理に関するアンケート調査を行い、1年間で路上死する猫の正確な数を把握しようと試みました。その結果、死亡数が判明した8つの市町村のデータから推計し、京都府全体ではおよそ6,800頭もの猫が路上で死亡している可能性が浮かび上がってきたと言います。また飼い主からの引き取り頭数が多いほど、路上死する猫の数も多くなるという正の相関関係が認められたとも。具体的には、引き取り数の10倍程度が路上死しているかもしれないというものでした。 獣医畜産新報(2016, No12, P900)

大分市の路上死猫データ

 大分市は全国的にも珍しく、路上死した動物の数を統計的にデータ化して公開しています。以下は、平成22年度から25年度までの期間、市が行った猫の殺処分数と市が処理した路上死体数を比較したものです。どの年を取ってみても、路上死の数が殺処分数の2.8~3.6倍になっていることがひと目でわかります。 大分市ホームページ
殺処分数:路上死数
大分市における猫の殺処分数と路上死数の比較一覧グラフ
  • H22年度→922頭:2,561頭
  • H23年度→884頭:2,585頭
  • H24年度→905頭:2,757頭
  • H25年度→725頭:2,631頭

路上死猫の推計数

 沖縄県や京都府、そして大分市の実データと平成29年度の行政データから、日本全国で路上死している猫の数を推計してみましょう。まず沖縄のデータを転用すると、路上死数は少なく見積もって殺処分される猫と同じ34,865頭となります。また京都のデータを転用すると、飼い主からの引取数11,146頭の10倍に相当する11万頭となります。さらに大分市のデータを転用すると、路上死数は34,865頭を2.8~3.6倍した9.7万~12.5万頭という膨大な数になります。3.5万~12.5万と3倍以上の開きはあるものの、どの数値を取ってみてもにわかには信じがたい途方もない数です。しかし否定するデータがない限り、こう見積もるしかありません。 日本国内で人知れず路上死している猫の数は、殺処分数の3倍に達する可能性あり  さらに平成29年度(2017年度)、高速道路運営会社によって回収された小動物(犬・猫・タヌキ・キツネ)の路上死件数は23,700頭と報告されています。これは動物種を細分していなかった阪神高速の300を除いた数です。 高速道路会社の落下物処理件数 高速道路運営会社によって回収された小動物の死骸回収数(平成29年度)  また国土交通省は国道上の落下物や動物の死骸に対処するためのホットライン「#9911」を設けています。道路局の統計データによると、平成28年度(2016年度)における犬と猫の回収数はおよそ22,630体であり、同年度の殺処分数55,998体の40.4%に相当することがわかります。 道路局よって回収された国道上の犬猫死骸数(平成28年度)
これらの数を先述した「清掃局などが回収する路上死体数」に加算してみましょう。猫の数だけを集計しているわけではないので概数になりますが、1~2万頭もの猫が高速道路や国道上で命を落としていることになります。
NEXT:完全室内飼いの世の中へ

完全室内飼いの世の中へ

 犬の場合、狂犬病予防法があるため原則として放し飼いにすることが禁止されています。完全室内飼いの世の中を実現するためには、猫を放し飼いにしている人たちのモラルに訴えるだけではなく、法律や条例によって強制的な規制をしていくことも必要です。

猫の放し飼いの割合

 ペットフード協会の統計データ「全国犬猫飼育実態調査(2019年度版)によると、およそ11%の割合で猫が放し飼いにされていると推計されています。また東京都福祉保健局の「東京都における犬及び猫の飼育実態調査の概要(PDF・平成29年度版)によると、合計24.3%もの人が大なり小なり屋外へのアクセスを許していると推計されています。
 こうした10~20%の人たちはいったい何を考えて猫を外に出しているのでしょうか?

放し飼いの言い分と矛盾

 猫を放し飼いにしている人からよく聞く言い訳は「猫の自然な行動を促している」とか「猫のストレス解消のため」というものです。あるいは「外に出さないと猫が病気になる」といったパターンもあります。
 こうした言い分は一見すると正論に聞こえますが、このページで詳しく解説したとおり、猫を外に出すことによって病気のリスクが高まったり死亡リスクが高まったりします。その結果が2年ほど短い平均寿命です。つまり猫の健康や福祉の向上を目的として行っているはずの行為が、逆に猫の不健康と寿命の短縮化を招いているのです。 猫を放し飼いにする人は、そもそも猫のことが好きなわけではないかも  東京都福祉保健局が行ったアンケート調査により、「猫のことが好きでも嫌いでもない」という中立的な人が33%ほどいることが明らかになりました。猫を放し飼いをしている人はひょっとすると、「猫が好き」と「どちらでもない」のちょうど中間に当たる漠然とした層に属しているのではないでしょうか?何となく飼っているけれども、健康については真剣に考えていないという中途半端な層です。

屋外リスクをリアルに把握する

 猫を外に出す事は、猫自身の死亡率を高めると同時に、猫を避けようとした運転手による交通事故の危険性も高めてしまいます。負傷動物と路上死する動物の現状をしっかりと把握し、そのデメリットを何となくではなくリアルに理解することが重要です。
 大阪市立環境科学研究所などが行った調査によると、大阪市内で屋外生活している猫が、1ヶ月のうちに交通事故などで死亡して回収される確率が4.24%と推定されています(→大阪市内では年間1万5千頭もの屋外猫が姿を消す。また2016年に日本のアイペット損保が公開したアンケート調査によると、犬や猫といったペットとの別れの原因のうち、およそ40%が「事故や行方不明」となっています(→アイペットニュース。一瞬何かの間違いかと目を疑ってしまいますが、交通事故などで命を落とす猫の数が殺処分数と同等~3倍超という推定値と照らし合わせると、納得せざるを得ません。
車に轢かれる猫
 以下は、車に轢かれる瞬間の猫の姿をとらえた動画です。不快ですが、猫を放し飼いすることの危険性をリアルに理解するためにあえて紹介します。轢かれるのが他人の猫や野良猫ではなく、自分の飼っている猫だと想像してみてください。「猫を室内に閉じ込めておくのは虐待だ!」と言えるでしょうか? 元動画は→こちら

法律や条例による規制

 「動物愛護法(第7条)における所有者等の責務では「動物の健康及び安全の保持」や「動物の飼養等による人への迷惑の防止」が努力義務として規定されています。また環境省主導の「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトアクションプラン」では、殺処分ゼロに向けて優先的に検討すべき事項として「飼い猫のマイクロチップの装着の義務化」「猫の不妊去勢措置の義務化」「猫の室内飼いの義務化」などが挙げられています。
 猫の適正飼育について真剣に考えない人たちには、国レベルの法律や地方自治体レベルの条例によって放し飼いを違法化するというプランが真剣に検討されています。イメージ的には2018年、世界自然遺産登録を目指す奄美大島で導入された「猫の登録制度」がわかりやすいでしょう。猫を飼う人は完全室内飼いのほか自治体に登録することが義務付けられ、違反者には5万円以下の過料が課せられることとなりました。
 なお屋外を放浪する猫(ノネコ・ノラネコ・放し飼い猫)の狩猟捕食行動が野生動物に及ぼす影響がずいぶん前から懸念されています。生態系破壊に関しては、証拠となるデータがここ20年でだいぶ溜まってきていますので、以下のページなどをご参照下さい。 猫が生態系を破壊している? 外猫の狩猟捕食行動は野生動物と生態系への脅威

完全室内飼いのすすめ

 現在は猫の適正飼養に関する転換期です。東京都においては2006年に32%だった放し飼いの割合が、2017年には24.3%にまで減りました。全国においては2014年の15.8%から2023年には6.9%にまで減少したと推計されています。
 昔の日本でよく見られたサザエさんの「タマ」のような飼育法はもう終わりです。現代においてはネグレクトという動物虐待とみなされますので、猫好きを自認するならば、健康と安全が確実に守られる「完全室内飼い」という飼育方法を徹底しなければなりません。
 その代わり「環境エンリッチメント」を充実させ、室内にいてもストレスを感じないよう色々な工夫してあげましょう。以下では、猫を完全室内飼いする際に役立つ情報をご紹介します。
完全室内飼いガイドライン
猫を不慮の事故から守る最も確実な方法は「完全室内飼い」しかない