詳細
調査を行ったのは大阪市立環境科学研究所と大阪市動物管理センター。2012年7月から9月の期間、大阪市の地図上に長さ約3kmの44ルートを任意で設定し、1~2名の調査員が午前中の50分程度を利用して屋外生活猫の数を目視カウントしました。ここで言う「屋外生活猫」とは、完全室内飼いされている猫以外のすべての猫のことで、具体的には野良猫、地域猫、放し飼い猫を含みます。得られたデータを元に、「ベイズ統計学的モデル」と呼ばれる手法を用いて大阪市内各区における屋外生活猫の個体数の分布や時間による変化を推定した所、以下のような傾向が浮かび上がってきたと言います。
大阪市内の屋外猫動態
- 2009~2012年度の4年間の各区の個体数は、季節的な変動が大きく、年ごとの変動は少なかった
- 個体数のピークは6月で3万前後
- ピーク後は徐々に減少し1.5万まで落ちる
- 猫密度の大阪市平均は1.43個体/ha
- 個体数の誤差範囲は-18%から+27%(1.18~1.82個体/ha)
- 最も猫密度が高かった区は3.21個体/ha(2012年6月)
- 最も猫密度が低かった区は0.49個体/ha(2012年6月)
- 沿岸部の区において猫密度が低い
- 1頭の屋外生活猫が1ヶ月間に事故等により死亡し回収される確率は4.24%
解説
個体数のピークが6月になるという傾向は、過去に海外で行われた調査結果とほぼ一致します。例えば以下は、1996年2月から2001年12月までの期間、ノースカロライナ州のローリーにおいてTNRのためにクリニックに連れてこられた2千頭を超えるメス猫のうち、妊娠していた個体数をグラフ化したものです(→出典)。妊娠のピークが4月にあるため、離乳して出歩いている子猫を頻繁に見かけるようになるのはちょうど6月頃になると推測されます。国によって多少の違いはありますが、ある一定の時期に繁殖と出産のピークが来るという現象は普遍のようです。
1年間のうちに個体数が3万から1.5万に急減する理由としては、行政による「引き取り」と交通事故などによる「路上死」が考えられます。大阪市内で動物管理センターによって引き取られる猫の数は4千頭前後です。また大阪市環境局が保有しているデータから2009~2012年度の期間中に大阪市内で回収・処分された猫の死体数を調べたところ、どの年度も1.0~1.1万の範囲内に収まったと言います。行政による引き取り数と路上死して回収された猫の数を足すと1万4千~5千となり、1年のうちに姿を消す「1.5万頭」という数とちょうど符合します。
この仮説が正しいとすると、「善意の人に拾われて飼い猫になった」という少数のケースを除き、屋外で生活している猫のうち、約3分の1は病気や交通事故によって不慮の死を遂げ、13~20%は行政に引き取られていることになります。引き取られた猫の全てに飼い主が見つかるわけではありませんので、多くの猫が不慮の事故か炭酸ガスによって命を落としていると言い換えることもできるでしょう。日本における猫の天敵は、カラスでもキツネでもなく人間ということです。ここでいう「人間」には、猫を行政に持ち込む人、自動車などで猫を轢いてしまった人、動物虐待者、ペットを迷子にしてしまった人、ペットを放し飼いにしている人の全てが含まれます。
この仮説が正しいとすると、「善意の人に拾われて飼い猫になった」という少数のケースを除き、屋外で生活している猫のうち、約3分の1は病気や交通事故によって不慮の死を遂げ、13~20%は行政に引き取られていることになります。引き取られた猫の全てに飼い主が見つかるわけではありませんので、多くの猫が不慮の事故か炭酸ガスによって命を落としていると言い換えることもできるでしょう。日本における猫の天敵は、カラスでもキツネでもなく人間ということです。ここでいう「人間」には、猫を行政に持ち込む人、自動車などで猫を轢いてしまった人、動物虐待者、ペットを迷子にしてしまった人、ペットを放し飼いにしている人の全てが含まれます。