屋外アクセスと猫の病原体感染リスク
調査を行ったのはアメリカにあるオーバーン大学のチーム。医療系データベースの中から「完全室内飼いの猫」と「屋外にアクセス出来る猫」の感染リスクを比較したものをピックアップし、メタ分析を行いました。その結果、世界中の16ヶ国から19の病原体に関する21の調査報告が集まったと言います。
具体的な病原体と、屋外にアクセス出来る猫における感染オッズ比の一覧リストは以下です。「病原体」にはウイルス、細菌、内部寄生虫のすべてが含まれています。また「オッズ比」(OR)とは、標準の起こりやすさを「1」としたときどの程度起こりやすいかを相対的に示した数値のことで、値が1よりも小さければリスクが小さいことを、逆に大きければリスクが大きいことを意味しています。
全ての病原体のリスクを総括的に計算したところ、完全室内飼いの猫に比べ、屋外にアクセスできる猫の感染リスクは2.77倍になることが明らかになったと言います。また居住地域の緯度が1度上がるごとに感染率が0.7%、感染リスクが4%増加するとも。
こうした結果から調査チームは、屋外へのアクセスが病原体への重大な感染リスクファクターになっているとの結論に至りました。猫の健康及び環境や生態系への影響を最小限に食い止めるためには、法律によって猫の外出を禁止することが理想的であるとしています。 Who let the cats out? A global meta-analysis on risk of parasitic infection in indoor versus outdoor domestic cats (Felis catus)
Chalkowski K, Wilson AE,Lepczyk CA, Zohdy S. 2019 .Biol. Lett.15: 20180840.http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2018.0840
病原体 | OR | 出典 |
FeLV | 1.97 | Burling, 2017 |
FIV | 2.99 | Burling, 2017 |
鞭虫 | 0.57 | Ketzis, 2015 |
ネオスポラ | 1.74 | Meneses, 2014 |
FIV | 9.20 | Chang F.M., 2013 |
FIV | 2.72 | Ravi, 2010 |
FIV | 14.47 | Norris, 2007 |
コロナウイルス | 0.48 | Bell, 2006 |
マイコプラズマ | 2.77 | Diaz R., 2018 |
猫回虫 | 8.51 | Diakou, 2017 |
シストイソスポラ | 3.93 | Diakou, 2017 |
サナダムシ | 4.51 | Diakou, 2017 |
ジアルジア | 1.81 | Diakou, 2017 |
猫肺虫 | 7.17 | Diakou, 2017 |
猫イソスポラ | 4.03 | Diakou, 2017 |
猫肺虫 | 3.27 | Diakou, 2017 |
瓜実条虫 | 1.07 | Diakou, 2017 |
多頭条虫 | 1.07 | Diakou, 2017 |
ヘパトゾーン | 1.77 | Diaz R., 2018 |
サイトークスゾーン | 5.38 | Diaz R., 2018 |
マイコプラズマ | 9.59 | Bergman, 2017 |
ヘモプラズマ | 2.00 | Walker, 2016 |
トキソプラズマ | 2.65 | Must, 2015 |
トキソプラズマ | 0.86 | Ahmad, 2014 |
ヘパトゾーン | 9.10 | Baneth, 2013 |
トキソプラズマ | 5.84 | Deksne, 2013 |
FeLV | 3.53 | de Almeida, 2012 |
トキソプラズマ | 3.94 | Gyorke, 2011 |
マイコプラズマ | 2.71 | Willie, 2006 |
トキソプラズマ | 3.77 | Opsteegh, 2012 |
猫回虫 | 3.63 | Nijsse, 2016 |
こうした結果から調査チームは、屋外へのアクセスが病原体への重大な感染リスクファクターになっているとの結論に至りました。猫の健康及び環境や生態系への影響を最小限に食い止めるためには、法律によって猫の外出を禁止することが理想的であるとしています。 Who let the cats out? A global meta-analysis on risk of parasitic infection in indoor versus outdoor domestic cats (Felis catus)
Chalkowski K, Wilson AE,Lepczyk CA, Zohdy S. 2019 .Biol. Lett.15: 20180840.http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2018.0840
感染リスクを減らす「完全室内飼い」
調査対象となった病原体は、猫の健康を害するのみならず人間やその他の野生動物にも感染する危険性があるものばかりです。例えば、「猫エイズウイルス感染症」(FIV)がクーガー(Felis concolor)に感染するといった例があります。また人間にも感染する人獣共通感染症の一種「トキソプラズマ」はあまりにも有名でしょう。
鹿児島大学・共同獣医学部のチームが行った調査により、西表島の固有種であるイリオモテヤマネコと、対馬の固有種であるツシマヤマネコのヘモプラズマ感染率が、屋外にいるイエネコによって左右される可能性が指摘されています。こうした外猫の中には、飼い主がいない野良猫や野猫のほか、飼い主がいるにもかかわらず無責任に放置されている「放し飼い猫」も含まれていると考えられます。 オーバーン大学の調査チームが指摘しているように、無責任な放し飼いをやめさせるためには、自称飼い主たちのモラルに訴えるだけでなく、法律による規制をかけていく必要があります。それぐらいプレッシャーを掛けないと、猫を屋外に放り出すことがネグレクトという動物虐待の一種であるという自覚が芽生えないでしょう。
猫を外に出すことのリスクや寿命の短縮化に関しては、以下のページでかなり詳しく解説してあります。猫好きにとっては常識ですが、復習のつもりで御一読ください。 🚨上記した知識が広まるに連れ、これからの10年間で「放し飼い=動物虐待」という認識が一般的になっていきます。外猫を礼賛する写真家、外猫で集客する美術館や「猫島」、猫を外に出した写真で承認欲求を満たしている一般飼い主のSNS投稿に対し、安易に「いいね」しないことを熱烈におすすめします。
鹿児島大学・共同獣医学部のチームが行った調査により、西表島の固有種であるイリオモテヤマネコと、対馬の固有種であるツシマヤマネコのヘモプラズマ感染率が、屋外にいるイエネコによって左右される可能性が指摘されています。こうした外猫の中には、飼い主がいない野良猫や野猫のほか、飼い主がいるにもかかわらず無責任に放置されている「放し飼い猫」も含まれていると考えられます。 オーバーン大学の調査チームが指摘しているように、無責任な放し飼いをやめさせるためには、自称飼い主たちのモラルに訴えるだけでなく、法律による規制をかけていく必要があります。それぐらいプレッシャーを掛けないと、猫を屋外に放り出すことがネグレクトという動物虐待の一種であるという自覚が芽生えないでしょう。
猫を外に出すことのリスクや寿命の短縮化に関しては、以下のページでかなり詳しく解説してあります。猫好きにとっては常識ですが、復習のつもりで御一読ください。 🚨上記した知識が広まるに連れ、これからの10年間で「放し飼い=動物虐待」という認識が一般的になっていきます。外猫を礼賛する写真家、外猫で集客する美術館や「猫島」、猫を外に出した写真で承認欲求を満たしている一般飼い主のSNS投稿に対し、安易に「いいね」しないことを熱烈におすすめします。