ノミ皮膚炎の病態と症状
猫のノミ皮膚炎とは、ノミの唾液によって患部が赤くなったりかゆくなったりする状態を言います。
皮膚上にノミがいるかどうかは、「1~2ミリ程度の褐色の虫を視認できること」「濡れたティッシュなどで被毛をふき取ると、じわっと赤いしみが広がるような糞(フリーダート)が被毛中に確認できること」「0.5ミリほどの米粒を小さくしたような卵が視認できること」などで判定します。しかし、猫が自分自身で患部を掻いたり舐めたりするため、症状があるにもかかわらず、ノミの本体を見つけることができないこともしばしばです。ちなみにグルーミングが下手な猫の場合、1日で除去できるノミは4.1%(週に22%)程度ですが、上手な猫の場合はこの値が17.6%(週に68%)まで増加します(Osrbrink, 1984)。
ノミ皮膚炎を引き起こしているものは、主として体内の免疫系によるアレルギー反応です。「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」(抗原)と呼ばれます。ノミ皮膚炎におけるアレルゲンは、ノミの唾液(Cte f1)と糞です。これらの物質中には、アレルゲンの卵とでも言うべき低分子「ハプテン」のほか、血管を拡張する「ヒスタミン」に似た物質が含まれており、侵入した場所に痛みやかゆみを引き起こします。
皮膚上にノミがいるかどうかは、「1~2ミリ程度の褐色の虫を視認できること」「濡れたティッシュなどで被毛をふき取ると、じわっと赤いしみが広がるような糞(フリーダート)が被毛中に確認できること」「0.5ミリほどの米粒を小さくしたような卵が視認できること」などで判定します。しかし、猫が自分自身で患部を掻いたり舐めたりするため、症状があるにもかかわらず、ノミの本体を見つけることができないこともしばしばです。ちなみにグルーミングが下手な猫の場合、1日で除去できるノミは4.1%(週に22%)程度ですが、上手な猫の場合はこの値が17.6%(週に68%)まで増加します(Osrbrink, 1984)。
ノミ皮膚炎を引き起こしているものは、主として体内の免疫系によるアレルギー反応です。「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」(抗原)と呼ばれます。ノミ皮膚炎におけるアレルゲンは、ノミの唾液(Cte f1)と糞です。これらの物質中には、アレルゲンの卵とでも言うべき低分子「ハプテン」のほか、血管を拡張する「ヒスタミン」に似た物質が含まれており、侵入した場所に痛みやかゆみを引き起こします。
ノミによる皮膚症状(FAD)
ノミによる皮膚症状は「ノミアレルギー皮膚炎」(flea allergic dermatitis, FAD)とも呼ばれます。アレルゲンとの接触から15~30分程度で現れる「I型アレルギー」と、アレルゲンとの接触から数時間以上かけて緩やかに現れる「IV型アレルギー」の両方が関わっているため、ノミに噛まれてから症状が出るまでの時間には個体差があります。好発部位は背中からしっぽの付け根にかけてのエリアです。
重症例における貧血も油断できません。猫の体表に元気なメスのネコノミ50匹がいた場合、1日で0.68mlの血液を吸い取り、1日で1,456個もの卵を生みつけるといいます(Dryden, 1991)。さらに吸血による貧血で、家畜牛、羊、人間の子供における死亡例が確認されています(Yeruham, 1989)。1頭の牛に9万匹(!)ものネコノミが寄生することもあるとか…。
ノミ皮膚炎の主症状
- 小さな発疹(粟粒性皮膚炎)
- しきりに体をかく・かゆみ
- 左右対称性の局所的な脱毛
- 頭~首にかけての擦りむき(自傷)
- 好酸球性肉芽腫
- 貧血(重症)
重症例における貧血も油断できません。猫の体表に元気なメスのネコノミ50匹がいた場合、1日で0.68mlの血液を吸い取り、1日で1,456個もの卵を生みつけるといいます(Dryden, 1991)。さらに吸血による貧血で、家畜牛、羊、人間の子供における死亡例が確認されています(Yeruham, 1989)。1頭の牛に9万匹(!)ものネコノミが寄生することもあるとか…。
ノミが媒介する病気
ノミによる被害は皮膚症状だけにとどまりません。ノミの体内に含まれるさまざまな病原体により、もっと深刻な病気に感染してしまう危険性があります。現在確認されているノミ媒介性の病気リストは以下です。
猫ひっかき病
猫ひっかき病とは、バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)という細菌によって引き起こされるリンパ節炎を主体とした感染症のことです。猫の血を吸って病原菌を取り込んだネコノミは、体内で菌を増殖させ、宿主となっている猫の被毛内に糞便として排菌します。そして菌を含んだ排泄物は、猫がグルーミングをする際、歯や爪に付着します。そして歯や爪に菌を保有した状態の猫が、人間を咬んだり引っかいたりすることで、傷口から菌が入り込み、猫ひっかき病が成立します。
ネコノミに感染している猫の方(13.5%)がしていない猫(7.4%)よりもバルトネラヘンセラの保有率が高いとの報告がありますので(Maruyama, 2013)、病気の広がりを食い止めるためにはノミの感染率を低下させることが重要です。
ネコノミに感染している猫の方(13.5%)がしていない猫(7.4%)よりもバルトネラヘンセラの保有率が高いとの報告がありますので(Maruyama, 2013)、病気の広がりを食い止めるためにはノミの感染率を低下させることが重要です。
発疹熱
発疹熱とは発疹熱リケッチアとリケッチア・フェリス(Rickettsia felis)によって引き起こされる細菌感染症の一種です。リケッチアを保有したネズミノミやネコノミに血を吸われて6~18日すると、寒気、発熱、頭痛といったインフルエンザ様の症状が引き起こされます。リケッチア・フェリスはネコノミの体内で12世代ほど垂直感染することが確認されています(Wedincamp, 2001)。
猫伝染性貧血
猫伝染性貧血とは、マイコプラズマ(真性細菌)のうち、赤血球表面に取り付いて機能不全に陥れる性質を持った「ヘモプラズマ」(Hemotropic Mycoplasma)と呼ばれる種によって引き起こされる貧血のことです。イギリス国内に暮らす121頭の猫から採取されたネコノミを対象とし、いったいどの程度の割合で病原菌を保有しているかが調査されました(Shaw, 2004)。その結果、50%のネコノミが最低1つの病原菌を保有しており、20%では複数の保有が確認されたといいます。具体的にはリケッチア・フェリス21%、バルトネラ・ヘンセラ17%、ヘモプラズマ40%という内訳でした。
ペスト
ペストは通性嫌気性のグラム陰性桿菌である「Yersinia pestis」によって引き起こされる疫病の一種です。感染すると皮膚が黒くなること、および治療しなかった場合の致死率が極めて高いことから「黒死病」とも呼ばれています。日本国内では幸い、1926年以降ペストの感染例は報告されていませんが、ネコノミが媒介動物にになりうる可能性が指摘されています(Dryden, 1993)。
瓜実条虫症
瓜実条虫症とは消化管に寄生する条虫症の一種です。ノミの幼虫が条虫の卵を摂取する→卵から孵化して体内で成長→猫がグルーミングを通してノミを飲み込む→条虫も一緒に取り込む→消化管の中に寄生、というルートを通じて感染が成立します。
猫白血病ウイルス感染症?
近年では、ネコノミが猫白血病ウイルス感染症ウイルス(FeLV)を媒介する可能性が示されています。
2003年、ドイツの調査チームはウイルスを保有する猫の血液をネコノミに与えた後、ウイルスがどこに行くのかを調査しました(Vobis, 2003)。その結果、ノミの糞からも体内からも検出されたといいます。さらにノミを2つのグループに分け、一方にはウイルスを保有していない血液、他方にはウイルスを保有している血液を再び与えました。すると、ノミの糞や体内からだけでなく、なぜか餌として与えた血液中からもウイルスが検出されたそうです。ノミが血を吸い取る過程で体内に保有しているウイルスが外に出て、血液を汚染したものと推測されます。
猫白血病ウイルス感染症ウイルス(FeLV)は一般的に猫同士の直接的な接触(ケンカ・交尾・グルーミングなど)を通して感染すると考えられていますが、それ以外にもノミによる間接的な感染ルートがあるのかもしれません。
2003年、ドイツの調査チームはウイルスを保有する猫の血液をネコノミに与えた後、ウイルスがどこに行くのかを調査しました(Vobis, 2003)。その結果、ノミの糞からも体内からも検出されたといいます。さらにノミを2つのグループに分け、一方にはウイルスを保有していない血液、他方にはウイルスを保有している血液を再び与えました。すると、ノミの糞や体内からだけでなく、なぜか餌として与えた血液中からもウイルスが検出されたそうです。ノミが血を吸い取る過程で体内に保有しているウイルスが外に出て、血液を汚染したものと推測されます。
猫白血病ウイルス感染症ウイルス(FeLV)は一般的に猫同士の直接的な接触(ケンカ・交尾・グルーミングなど)を通して感染すると考えられていますが、それ以外にもノミによる間接的な感染ルートがあるのかもしれません。
ノミ皮膚炎の原因
猫に寄生して皮膚炎を引き起こすノミにはたくさんの種類があります。
2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。合計1,838頭の猫を調べたところ、263頭(14.3%)で保有が確認され、以下のような種類がとりわけ多く確認されたといいます。
2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。合計1,838頭の猫を調べたところ、263頭(14.3%)で保有が確認され、以下のような種類がとりわけ多く確認されたといいます。
猫に多いノミの種類
- ネコノミ(Ctenocephalides felis)
- イヌノミ(Ctenocephalides canis)
- ヒトノミ(Pulex irritans)
- ハリネズミノミ(Archaeopsylla erinacei)
稀に見られるノミの種類
- スズメトリノミ(Ceratophyllus gallinae)
- キタネズミノミ(Nosopsyllus fasciatus)
- ヨーロッパウサギノミ(Spilopsyllus cuniculi)
- トリノミの一種(Ceratophyllus garei)
- クシノミの一種(Ctenophthalmus assimilis)
- ヤマトネズミノミの一種(Monopsyllus sciurorum)
- ?(Typhloceras)
- ?(Hystrichopsylla talpae)
猫に多いノミの種類は?
上記したように、猫に寄生するノミにはたくさんの種類があります。ノミごとに好物としている動物種があることは確かですが、絶対その動物にしか食いつかないというわけではありません。猫に食いつきやすいノミを多い順に並べるとネコノミ、イヌノミ、ヒトノミとなります。
猫に食らいつくノミの中でも圧倒的多数を占めているのは「ネコノミ」です。2001年、ドイツ国内にある625の動物病院で行われた調査(Vissel, 2001)では、ネコノミが91.6%、ハリネズミノミ12.6%だったと報告されています。また1995年、ギリシアで38頭の猫を対象として行われた調査(Koutinas, 1995)では、ネコノミが97.4%、イヌノミが5.3%だったとも。さらに2005年、イギリス国内にある31の動物病院で行われた調査(Bond, 2007)では、318頭から採取されたノミ467匹中462匹(98.93%)までがネコノミだったそうです。
さらに1993年7月から10月の期間、北海道から沖縄にいたる各都道府県にある動物病院に来院した猫のうち、ノミの寄生が確認された264頭を対象とした調査が行われました。その結果、合計1,346匹の寄生が確認され、1,301匹(96.7%)までもがネコノミで構成されていたといいます。具体的な内訳はイヌノミ264匹、ネコノミ1,301匹(オス438匹+メス863匹)というものでした(Imai, 1995)。
データはまだまだありますが、とにかく猫についているノミの8~9割は名前が示すように「ネコノミ」であると覚えておきましょう。
データはまだまだありますが、とにかく猫についているノミの8~9割は名前が示すように「ネコノミ」であると覚えておきましょう。
ノミの感染リスク
すべての猫が等しくノミに食われるわけではありません。被毛の長さのほか、暮らしている環境が感染リスクを高めたり低めたりします。では一体どのような生活環境が猫の「食われやすさ」に影響を及ぼしているのでしょうか?
屋外へのアクセス
猫の外出を許しているとどうしてもノミの感染リスクが高まってしまいます。
2012年3月から2013年5月の期間、ヨーロッパ7ヶ国にある9つの動物病院を受診した1,519頭の猫を対象としてノミの感染率を調べたところ、屋外に出られない猫が8.9%だったのに対し、出られる猫では18%という高い値が確認されたといいます。リスクを算定したところ、屋外にアクセスできる猫の方が74%も感染する危険性が高いとの結果になりました(Beugnet, 2014)。
2012年3月から2013年5月の期間、ヨーロッパ7ヶ国にある9つの動物病院を受診した1,519頭の猫を対象としてノミの感染率を調べたところ、屋外に出られない猫が8.9%だったのに対し、出られる猫では18%という高い値が確認されたといいます。リスクを算定したところ、屋外にアクセスできる猫の方が74%も感染する危険性が高いとの結果になりました(Beugnet, 2014)。
他のペットとの同居
他の犬や猫と同居していることがノミとの接触機会を増やす可能性があります。
2005年、イギリス国内にある31の動物病院で行われたノミの保有率調査(Bond, 2007)では、他のペットと同居していることが感染リスクになっていたといいます。また2005年2月~2006年にかけ、イタリア南部にある4つの動物病院で犬におけるノミの保有率調査が行われました(Rinaldi, 2007)。その結果、感染リスクとして「同居動物(犬や猫)がいる」ことが浮上してきたとのこと。
たとえ猫が完全室内飼いだったとしても、頻繁に散歩に出かける犬と同居している場合、外でもらったノミが家についてから宿を変え、猫の体に飛び移ってしまうかもしれません。また多頭飼育している家庭においては、1頭がネコノミに感染すると他の猫に容易に移してしまいます。 2013年、フランスの調査チームは100匹のネコノミを抱えた猫6頭と抱えていない猫6頭を対象とした実験を行いました(Franc, 2013)。両方の猫を同じ室内に入れて自由なコンタクトを許したところ、接触からわずか1時間後にはノミを保有していなかった方の猫3頭から5匹のネコノミが発見されたといいます。さらにこの数は24時間時点で20%(120匹)、48時間時点では23%(138匹)にまで増えたとのこと。
2005年、イギリス国内にある31の動物病院で行われたノミの保有率調査(Bond, 2007)では、他のペットと同居していることが感染リスクになっていたといいます。また2005年2月~2006年にかけ、イタリア南部にある4つの動物病院で犬におけるノミの保有率調査が行われました(Rinaldi, 2007)。その結果、感染リスクとして「同居動物(犬や猫)がいる」ことが浮上してきたとのこと。
たとえ猫が完全室内飼いだったとしても、頻繁に散歩に出かける犬と同居している場合、外でもらったノミが家についてから宿を変え、猫の体に飛び移ってしまうかもしれません。また多頭飼育している家庭においては、1頭がネコノミに感染すると他の猫に容易に移してしまいます。 2013年、フランスの調査チームは100匹のネコノミを抱えた猫6頭と抱えていない猫6頭を対象とした実験を行いました(Franc, 2013)。両方の猫を同じ室内に入れて自由なコンタクトを許したところ、接触からわずか1時間後にはノミを保有していなかった方の猫3頭から5匹のネコノミが発見されたといいます。さらにこの数は24時間時点で20%(120匹)、48時間時点では23%(138匹)にまで増えたとのこと。
郊外での生活
「郊外に暮らしていること」がノミの感染リスクになっている可能性があります。
2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院で行われたノミの保有率調査(Farkas, 2009)では、郊外の保有率が20.2%(387/1,924頭)だったのに対し都心部の保有率は12.0%(161/1,343頭) と報告されています。郊外に行くほど猫を放し飼いにしている割合が高まり、外でノミをもらってしまうリスクが高まるものと推測されます。
2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院で行われたノミの保有率調査(Farkas, 2009)では、郊外の保有率が20.2%(387/1,924頭)だったのに対し都心部の保有率は12.0%(161/1,343頭) と報告されています。郊外に行くほど猫を放し飼いにしている割合が高まり、外でノミをもらってしまうリスクが高まるものと推測されます。
予防薬を投与しない
飼い主による予防薬の不徹底が猫のノミ感染率を高めることは確かです。
2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院で行われたノミの保有率調査(Farkas, 2009)では、ノミの感染が確認された飼い主のうち51.4%までもが、過去一年以上ペットにノミの駆除薬を投与していないことが判明したといいます。また都心部の居住者に比べて郊外の居住者では、駆除薬の投与率が5分の1にまで激減したとも。
郊外に暮らしていることと予防の不徹底との間にどのような関係があるのかは難しい問題ですが、飼い主の危機意識が薄く、しっかりとしたノミ予防をしていない場合、猫がノミをもらってしまうリスクが高まることは間違いないでしょう。
2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院で行われたノミの保有率調査(Farkas, 2009)では、ノミの感染が確認された飼い主のうち51.4%までもが、過去一年以上ペットにノミの駆除薬を投与していないことが判明したといいます。また都心部の居住者に比べて郊外の居住者では、駆除薬の投与率が5分の1にまで激減したとも。
郊外に暮らしていることと予防の不徹底との間にどのような関係があるのかは難しい問題ですが、飼い主の危機意識が薄く、しっかりとしたノミ予防をしていない場合、猫がノミをもらってしまうリスクが高まることは間違いないでしょう。
ノミの特徴を知ろう!
猫に取り付くノミで最も多いのは「ネコノミ」であることがわかりました。効果的な治療や予防計画を立てる前に、まず敵のことをしっかりと把握しておきましょう!
ネコノミのライフサイクル
猫に寄生するノミとして代表的なのは「ネコノミ」(Ctenocephalides felis)です。このノミは体長が1~3ミリで平べったく、赤褐色をしています。「ネコノミ」という名前がついていますが猫だけに取りつくわけではなく、猫やその他の動物にも寄生し、また人間の膝から下の部分に噛み付いたりすることもあります。ネコノミの一般的なライフサイクルは以下です。
Understanding the Flea Life Cycle
ネコノミのライフサイクル
- 卵環境中における割合は約50%で、生息期間は2日~2週間。砂粒よりも小さく白い。動物が動くと地面に落ちて広がる。湿度と温度が適切になった時を見計らって生まれる。
- 幼虫環境中における割合は約35%で、生息期間は5~20日。光を嫌う性質があるため、被毛やじゅうたんの奥の方に入り込む。成虫の排出した糞(フリーダート)に含まれる血液成分を栄養とする。
- さなぎ環境中における割合は約10%で、生息期間は数日~数週間。ただし条件が合わなければ数か月~数年眠り続けることもある。表面がべたべたしているので被毛やじゅうたんについて落ちないようになっている。また化学物質からも守られている。動物の温度や振動、二酸化炭素濃度を感知して孵化する。
- 成虫環境中における割合は約5%。生まれて数時間するとすぐに血液を吸い始め、数日で産卵する。卵の数は1日40個に及ぶこともある。最も好む環境は、湿度70%、気温21~30℃程度。
ノミによる感染率
猫の飼育方法や予防薬を受けているかどうかにもよりますが、猫におけるノミの感染率はおおむね15~25%の間に収まるようです。
2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。合計1,838頭の猫を調べたところ、263頭(14.3%)で保有が確認されたといいます。また2005年、イギリス国内にある31の動物病院で猫のノミ保有率調査が行われ(Bond, 2007)、1,508頭の猫のうち318頭(21.1%)で保有が確認されました。さらに2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院でノミの保有率調査を行ったところ(Farkas, 2009)、猫の保有率は22.9%だったと報告されています。
やや古いですが日本におけるデータもあります。1995年から1998年の期間、日本中にある10箇所の動物病院を受診した合計690頭の猫を調査したところ、地域別に以下のような感染率が確認されたといいます(Maruyama, 1999)。
2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。合計1,838頭の猫を調べたところ、263頭(14.3%)で保有が確認されたといいます。また2005年、イギリス国内にある31の動物病院で猫のノミ保有率調査が行われ(Bond, 2007)、1,508頭の猫のうち318頭(21.1%)で保有が確認されました。さらに2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院でノミの保有率調査を行ったところ(Farkas, 2009)、猫の保有率は22.9%だったと報告されています。
やや古いですが日本におけるデータもあります。1995年から1998年の期間、日本中にある10箇所の動物病院を受診した合計690頭の猫を調査したところ、地域別に以下のような感染率が確認されたといいます(Maruyama, 1999)。
猫のノミ感染率
- 北海道・札幌市=4.0%(2/50)
- 宮城県・仙台市=40.0%(20/50)
- 神奈川県・藤沢市=31.8%(82/258)
- 京都府・京都市=10.0%(5/50)
- 大阪府・三島市=42.0%(21/50)
- 兵庫県・三田市=28.0%(14/50)
- 鹿児島県・姶良市=46.0%(23/50)
- 沖縄県・島尻市=58.0%(29/50)
ノミが多い時期・季節
猫に食いつくノミの数を季節別で見ると、夏の中旬から秋にかけて多くなるようです。
2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。合計1,838頭の猫を調べたところ、7月~9月で最多(マックスは2004年8月に記録した23.86%)、11月~4月で最低(ミニマムは2004年1月に記録した7.26%)が記録されたといいます。また2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院でノミの保有率調査が行われました(Farkas, 2009)。その結果、最低は4月(8.1%)、最高は7月(35.0%)だったとのこと。 夏の中旬(7月)から秋(10月)にかけて多くなるという傾向は共通のようですので、日本でも同様の傾向があるものと推測されます。飛んで火の中に入る夏の虫がいる一方、猫の被毛の中に入ってしまう虫もいるようです。
2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。合計1,838頭の猫を調べたところ、7月~9月で最多(マックスは2004年8月に記録した23.86%)、11月~4月で最低(ミニマムは2004年1月に記録した7.26%)が記録されたといいます。また2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院でノミの保有率調査が行われました(Farkas, 2009)。その結果、最低は4月(8.1%)、最高は7月(35.0%)だったとのこと。 夏の中旬(7月)から秋(10月)にかけて多くなるという傾向は共通のようですので、日本でも同様の傾向があるものと推測されます。飛んで火の中に入る夏の虫がいる一方、猫の被毛の中に入ってしまう虫もいるようです。
ノミの見つけ方
ノミを見つけるときの最も簡単な方法は猫が後ろ足で耳などを「カキカキ」している姿を確認するというものです。しかし症状が出る前の段階で見つけることができればそれに越したことはありません。具体的には以下のような方法があります。
寝床・ベッドをチェックする
猫の体に食らいついたノミが寝ている間に落下し、寝床やベッドにとどまっていることがあります。猫が頻繁に使う場所にコロコロをかけてみましょう。生きた成虫や成虫の死骸がくっついてきたら感染確定です。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。また細くて白っぽいものがうねうねと動いている場合は幼虫かもしれません。気味が悪いので早急に駆除しましょう。
【写真元】Larval Flea in dog bed
一方、まるで粉コーヒーのような黒~焦げ茶色のカスが付いてきた場合は、単なるゴミなのかそれともノミの糞なのかを判別しなければなりません。取れたカスを軽く湿らせてみましょう。溶けて赤茶色に変色した場合はノミの糞である可能性が大です。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。
猫の体表面をチェックする
猫の被毛をかき分け、ノミの成虫やフリーダート(糞)がないかどうかを確認してみましょう。ちょこまかと動き回る0.5~2mmほどの茶色い虫がいた場合はノミです!その他の部位にも生息しているはずですので、殺ノミ薬を投与してとっとと退場してもらいましょう。
【写真元】Fleas, how to find and identify on dogs and cats
黒っぽい被毛の猫では見えませんが、白~クリーム色の猫の場合、毛の中にインスタントコーヒーのような黒っぽいカスが付着していることがあります。ティッシュを濡らしてそのカスを取ってみましょう。紙の上で溶けて赤茶色に変色した場合はノミの糞かもしれません。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。
ノミ取りコームをかける
まず床に白っぽい紙を敷き、中性洗剤を溶かした水をカップラーメンの容器などに入れて用意しておきます。次に紙の上に猫を立たせ、クシ目の粗い「ノミ取りコーム」を使って被毛をブラッシングしてみましょう。コームの間にノミの死骸や生きている成虫が挟まった場合は、中性洗剤溶液の中にコームごと入れて溺死させます。
【写真元】How to Check for Fleas on your Dog or Cat
コームの間にインスタントコーヒーのような黒っぽいカスがついてきた場合は、いったん紙の上に置き、水で軽く湿らせてみましょう。溶けて赤茶色に変色した場合は「フリーダート」と呼ばれるノミの糞です。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。
ノミ皮膚炎の治療・予防法
猫のノミ皮膚炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
ノミに効果的な治療と予防
以下は猫がノミ皮膚炎にかかってしまったときに優先的に行うべき治療法、および再発を防ぐための予防法です。
対症療法
まずは症状の軽減を目的とした治療が施されます。アレルギー反応を軽減する抗アレルギー薬や、かゆみを抑える抗掻痒薬(こうそうようやく)などが投与されます。
完全室内飼いに
屋外へのアクセスが感染リスクを高めるという可能性が指摘されています。猫の放し飼いを許しているとノミに食われやすくなりますので、完全室内飼いに切り替えるようにしましょう。ノミが媒介する病気でも解説したとおり、ノミの寄生は皮膚が痒くなって終わりというわけではありません。人間にも感染する病原菌や、FeLVのように猫自身の命を脅かすウイルスを保有していることもありますので、最悪のケースを想定したリスク管理が望まれます。
猫からノミを駆除する
ノミを殺す各種の薬剤が投与されます。錠剤タイプもありますが、猫に口から薬を飲ませることはかなり難しいためほとんどは滴下式(スポットタイプ)です。ノミは通年性でどの季節にも見られますが、夏から秋にかけて多くなる傾向がありますので、特にこの時期は予防を忘れないよう注意しましょう。
滴下投与型の殺ノミ薬
- 特徴体の表面に薬剤をたらすタイプのノミ駆除薬です。猫の体に取り付いたノミは体表面に付着した有毒成分と接触することで死滅します。
- メリットノミが吸血を行う前に駆除できる可能性が高い | 血液の喪失や吸血部位の皮膚炎が無い | ノミの体液が注入されないため、アレルギーを発症しない | ノミに刺されないため病原体が媒介されない
- デメリット効き目が現れるまでに時間がかかる | 体の部位によって効果にばらつきがある | シャンプーによって効果が減少する
生活環境からノミを駆除する
「ネコノミのライフサイクル」で解説した通り、環境中における成虫の割合は、わずか5%程度にすぎません。ですから成虫を殺すだけではダメで、卵、幼虫、さなぎといった他の状態にあるノミもまた、環境中から一掃する必要があります。そのため、「掃除機をまめに掛ける」「掃除機のごみパックをすぐに交換する」「シーツや布製品をこまめに洗濯する」といった日々の努力が必要となります。特に入念に掃除すべき場所は「ノミのホットスポット」と呼ばれる寝床周辺です。
不思議なことに、ノミの幼虫が成虫の排出した糞だけを栄養としている場合、成虫にまで発育できる割合は13.3%ですが、糞と合わせて孵化していない卵を食べるとなぜか90%に激増するといいます(Hsu, 2001)。こうしたことから未孵化の卵はノミの幼虫にとってサプリメント的な働きをしているものと推測されています。こまめに掃除を行い、床やカーペットに落ちている糞や卵をできるだけ少なくすれば、それだけ幼虫から成虫に発育する個体数を減らすこともできるでしょう。
ノミ駆除薬の選び方
ノミを殺したり成長を阻害する成分は非常にたくさんあります。動物医薬品として用いられている代表的なものは以下です。
「合成ピレスロイド」には非常に多くの種類があり、多種多様な防ダニ商品に使用されています。しかしペルメトリンに関しては犬に対しては安全なものの猫に対して用いると最悪のケースでは死んでしまいます。商品を使用する前にかならずラベルを見てペルメトリンが入っていないことを確認してください。またフェノトリンはノミ取り首輪、シャンプー、スポット薬、ノミ取りスプレーなど非常に多くの商品に含まれていますが、猫においては大規模な中毒症例が報告されています。この成分が含まれたものの使用も避けたほうがよいでしょう。
詳しくは以下のページもご参照ください。
マダニに対する効果もあります。
「アベルメクチン」はマクロライドと呼ばれる薬の一種でイベルメクチン、セラメクチン、エプリノメクチンなどが含まれます。ノミのほかフィラリアの幼虫、ミミヒゼンダニ、回虫に対する効果もあるというのが大きな特徴です。
「IGR」(insect growth regulators)とは虫の成長をかく乱する作用を持った薬剤の総称です。殺虫効果はありませんが、ノミのライフサイクルを分断することができます。ペット用商品には「ルフェヌロン」、「メトプレン」、「ピリプロキシフェン」などが多く用いられています。
ノミ駆除薬には動物病院で処方される「要指示薬」とデパートのペット用品コーナーやペットグッズストアなどで売られている市販薬とがあります。市販薬のほうが安くて入手しやすいですが、副作用が心配だったり効果に疑問があるような場合は、猫をちゃんと動物病院についれていき、診察を受けた上で処方されたノミ駆除薬を投与したほうがよいでしょう。費用の目安に関しては以下のページをご参照ください。またしつこいようですが、「ペルメトリン」と「フェノトリン」が含まれていないことをしっかり確認してください。
「フェニルピラゾール」はノミの神経系を抑制することにより殺虫効果を発揮する成分です。ペット用スポット薬には「フィプロニル」という成分が多く用いられています。ノミのほか「アベルメクチン」はマクロライドと呼ばれる薬の一種でイベルメクチン、セラメクチン、エプリノメクチンなどが含まれます。ノミのほかフィラリアの幼虫、ミミヒゼンダニ、回虫に対する効果もあるというのが大きな特徴です。
「IGR」(insect growth regulators)とは虫の成長をかく乱する作用を持った薬剤の総称です。殺虫効果はありませんが、ノミのライフサイクルを分断することができます。ペット用商品には「ルフェヌロン」、「メトプレン」、「ピリプロキシフェン」などが多く用いられています。
ノミ駆除薬には動物病院で処方される「要指示薬」とデパートのペット用品コーナーやペットグッズストアなどで売られている市販薬とがあります。市販薬のほうが安くて入手しやすいですが、副作用が心配だったり効果に疑問があるような場合は、猫をちゃんと動物病院についれていき、診察を受けた上で処方されたノミ駆除薬を投与したほうがよいでしょう。費用の目安に関しては以下のページをご参照ください。またしつこいようですが、「ペルメトリン」と「フェノトリン」が含まれていないことをしっかり確認してください。
避けたいノミ駆除法
仮にノミ駆除薬で体についた成虫を駆除したとしても、卵やさなぎといったノミの温床を環境中から完全に除去するのは容易ではありません。もし一気に解決してくれる方法があれば、すぐにでも飛びつきたくなるでしょう。しかし安全性の観点から、いくら魅力的に見えても控えたほうがよい解決策がいくつかあります。具体的には以下です。
ハンガリーにある13の動物病院で行われた調査では、ノミに感染していた猫の飼い主のうち51.4%が過去1年間以上予防薬を使用していなかったとのこと(Farkas, 2009)。さらにヨーロッパ7ヶ国にある9つの動物病院における合計1,519頭の猫を対象とした調査では、年に4回以上駆虫を受けている猫のノミ保有率が11.7%だったのに対し、それ以下の猫の保有率は17.4%で、80%近く感染リスクが高まると報告されています(Beugnet, 2014)。 こうした事例から考えると、ノミを保有しているはずがないという根拠のない思い込みを捨て、特にノミが多くなる夏から秋にかけてはしっかりと予防薬によってノミの感染を防いであげることが重要であるようです。またそもそも猫の放し飼いをやめ、屋外環境や他の猫からノミをもらってしまう可能性をなくしてしまえば、感染リスクを劇的に減らすことも可能でしょう。猫にストレスを与えない室内環境の整え方に関しては以下のページをご参照ください。
避けたい方法
- ノミ取り首輪殺ノミ成分を含有した首輪がありますが、猫が首輪に対して炎症を起こしたり、また首輪のかけらを誤飲してしまう危険性があります。
- エアロゾルスプレー効果が希薄で、また噴霧するときの音を猫が怖がってしまいます。
- 殺ノミスプレー空気中に噴霧した成分が食器やフードに入らないよう注意する必要があります。また壁や家具についた成分を、猫が口に入れる危険性もありますので、あまりお勧めできません。
- 発煙式殺ノミ製品発煙を行った部屋の表面についた成分を、猫が舐めてしまう可能性を否定できません。使用する場合は、猫が近づかない狭い空間に限定した方がよいでしょう。
- ノミよけ製品ハーブやユーカリオイルといった、ノミを寄せ付けない効果を謳(うた)った製品は、医薬品ほどの効果をもっていません。また独特の匂いを猫が嫌う可能性もあります。なお高濃度のティーツリーオイルは、皮膚に塗ったり飲ませたりすると中毒症状を引き起こしますので使用は厳禁です。
ハンガリーにある13の動物病院で行われた調査では、ノミに感染していた猫の飼い主のうち51.4%が過去1年間以上予防薬を使用していなかったとのこと(Farkas, 2009)。さらにヨーロッパ7ヶ国にある9つの動物病院における合計1,519頭の猫を対象とした調査では、年に4回以上駆虫を受けている猫のノミ保有率が11.7%だったのに対し、それ以下の猫の保有率は17.4%で、80%近く感染リスクが高まると報告されています(Beugnet, 2014)。 こうした事例から考えると、ノミを保有しているはずがないという根拠のない思い込みを捨て、特にノミが多くなる夏から秋にかけてはしっかりと予防薬によってノミの感染を防いであげることが重要であるようです。またそもそも猫の放し飼いをやめ、屋外環境や他の猫からノミをもらってしまう可能性をなくしてしまえば、感染リスクを劇的に減らすことも可能でしょう。猫にストレスを与えない室内環境の整え方に関しては以下のページをご参照ください。
駆虫薬の効果、安全性、副作用に関しては「猫の寄生虫対策・完全ガイド」にまとめてあります。