猫の条虫症の病態と症状
条虫症とは、細長くて平べったい体が特徴の条虫と呼ばれる扁平動物が、ヒトやイヌ、ネコなどの小腸に寄生することによって現れる症状全般のことです。成虫の形態が細長い場合は、一般的に「サナダムシ」とも呼ばれます。猫に寄生するものとしては「広節裂頭条虫」、「ウリザネ条虫」、「ネコ条虫」、「エキノコックス」などが有名です。
猫の条虫症の症状としては以下のようなものが挙げられます。なお、お尻の穴から白いものが飛び出している場合は、条虫のほか、間違って飲み込んだひも状の異物という可能性もあります。腸管内に引っかかって重症化してしまうことがありますので、動いていない場合はむやみに引っ張らないようにしてください。
猫の条虫症の主症状
- 肛門周辺を壁や地面にこすりつける
- 肛門周辺を舐める
- 肛門周辺に白いゴマやひものようなものが視認できる
- 下痢
- 食欲不振
- 体重減少
- 毛づやの悪化
猫の条虫症の原因
猫の条虫症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の条虫症の主な原因
- ウリザネ条虫
ウリザネ条虫は、瓜(うり)の種のような形の節が100個以上連なった形をした条虫です。
この条虫はまず、節の一部を分離して感染猫の便と一緒に体外に出します。その後、節が破れて出てきた卵をノミが食べてノミの体内で孵化します。そして何らかのきっかけで猫がそのノミを口に入れてしまうと感染成立です。幼虫は鋭い牙で小腸壁に噛み付き、そこから血液を吸い取って生きていきます。 - 広節裂頭条虫
広節裂頭条虫は長さが5m~10mに達する条虫です。
感染動物の小腸で生み出された虫卵は、糞便とともに外界へ出て水の中に入ると孵化します。水の中に住んでいるミジンコなどが孵化した幼虫を食べ、さらにこのミジンコをカエルなどの水生生物が食べ、さらにこうした水生生物をネコが捕食してしまうと、最終的に猫の体内に幼虫が入り込み、そこで成虫化します。 - ネコ条虫
ネコ条虫は30~60cmの条虫です。
感染猫の糞便中に含まれている卵をネズミなどが食べ、さらにこうしたネズミを猫が捕食することで猫の体内に入り込みます。 - エキノコックス エキノコックスはキタキツネ、イヌ、ネコなどの腸内に寄生し、感染力のある何百もの虫卵を生み出します。糞便を通して外界に出たこれらの虫卵は、熱や乾燥さえなければ1~2年にわたって感染力を保ったまま環境中で生き続けます。終宿主である動物ではほとんど無症状ですが、エキノコックスの卵を水分や食料など介してヒトが経口摂取すると、時として致死的な疾患をおこすことがあります。これが「エキノコックス症」です。一般的に東北より北の地域に多く、2007年の調査では、北海道内の600匹の飼い猫のうち1匹から虫卵が検出されたと報告されています(北海道大学)。しかし2014年には、愛知県の山中にいた野犬がエキノコックス症を発症したとの報告もあるため、生息域は徐々に拡大しているようです(半田保健所)。
猫の条虫症の治療
猫の条虫症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。ほとんどの条虫症は、症状が全く出ないか、あっても軽微なものです。しかしお尻の周辺や糞の中で白いものがうごめいている状態は、見た目が極めて不快なため、早急な治療が求められます。
猫の条虫症の主な治療法
- 駆虫薬 駆虫薬を投与して寄生虫を除去します。多頭飼いしている場合は、症状の有無にかかわらず、全ての猫に対して数ヶ月間駆虫薬を投与します。
- 感染源の遮断 ウリザネ条虫を媒介するノミを駆除することが、治療、および予防になります。ノミ駆除薬の投与、部屋をこまめに掃除する、薬用シャンプー、殺虫剤の噴霧など色々です。また広節裂頭条虫が生息する屋外の水溜りやマス、サケ、カマス、スズキなどの生魚に猫を近づけないことも重要です。さらにネコ条虫を媒介するネズミを環境中から一掃するようにします。エキノコックスは人間の体内に入ると時に重篤な症状を引き起こしますので、野良犬、野良猫、野ギツネの糞便には絶対に近づかないようにした方がよいでしょう。
駆虫薬の効果、安全性、副作用に関しては「猫の寄生虫対策・完全ガイド」にまとめてあります。