詳細
筋骨格系の老化現象
老猫では必要栄養量が10~12歳で上昇し、12歳以降はさらに増えることがあります。老化とともに食事量が減る人間の目からすると、これはかなり奇異な現象です。
皮膚、筋肉、骨といった除脂肪体重は死の何年も前から一定の速度で低下し続け、死の3年前くらいからは脂肪量も減少を始めます。またタンパク質の分解が増えることで、クレアチニンの値に変動がないままBUN(尿素窒素)だけが上昇することもあります。
筋肉量が減ることにより、人間で言う「サルコペニア」(加齢による筋肉量減少)や「フレイル」(高齢者の筋力や活動が低下している状態)といった状態に陥るのも自然現象と考えられています。
皮膚、筋肉、骨といった除脂肪体重は死の何年も前から一定の速度で低下し続け、死の3年前くらいからは脂肪量も減少を始めます。またタンパク質の分解が増えることで、クレアチニンの値に変動がないままBUN(尿素窒素)だけが上昇することもあります。
筋肉量が減ることにより、人間で言う「サルコペニア」(加齢による筋肉量減少)や「フレイル」(高齢者の筋力や活動が低下している状態)といった状態に陥るのも自然現象と考えられています。
注意点
体重が100g減ると死のリスクが6.4%上昇し、除脂肪体重(皮膚・筋肉・骨)が100g減ると死のリスクが20%上昇し、脂肪が100g減るごとに死のリスクが40%上昇するとされています。BCSとMCSを定期的に評価し、10歳までは体重の増加を避けて除脂肪体重の維持に努め、11歳以降は体重と除脂肪体重の両方が増減しないよう努めるのがよいようです。ちなみに除脂肪体重を維持するためには、給餌回数と給水回数を増やすのが良いとされています。
変形性関節症は、たとえ症状がなくても多くの猫が抱えている可能性があります。運動量の低下がサルコペニアやフレイルによる自然現象なのか、それとも関節の痛みに起因する病的なものなのかは、慎重に吟味する必要があるでしょう。
感覚器の老化現象
目に関しては、レンズが白く濁る核硬化症による視力の悪化がよく観察されます。
耳に関しては、人間と同じように高音域が聞き取りにくくなり、鼻に関しては嗅覚が悪化して食欲が減退すると考えられていますが、どちらも実験によって証明されたわけではありません。
被毛に関しては、メラニン細胞の減少とチロシナーゼの活性低下で白髪が徐々に増えます。一方、ひげは逆に黒くなることがあるようです。
皮膚に関しては、皮脂の分泌減少で肌がカサカサになりフケが出るようになります。また日光による累積ダメージで表皮下浮腫、毛細血管拡張症、基底角質細胞の鱗状化、表皮の肥厚化と硬化といった変性が起こります。耳・鼻・唇といった部分には猫ニキビや紅斑、かさぶたといった病変が生じることもありますが、軽度であれば許容範囲内です。
聴力の悪化は猫の不安を煽り、鳴き声や攻撃行動を増やすかもしれません。いきなり触る前に、猫の視界に入ってこれから触るという合図を出しておけば、不要なストレスをかけないで済むと思われます。
グルーミングの減少で被毛が粗雑になる傾向がありますので、飼い主がブラッシングなど行って補ってあげましょう。
耳に関しては、人間と同じように高音域が聞き取りにくくなり、鼻に関しては嗅覚が悪化して食欲が減退すると考えられていますが、どちらも実験によって証明されたわけではありません。
被毛に関しては、メラニン細胞の減少とチロシナーゼの活性低下で白髪が徐々に増えます。一方、ひげは逆に黒くなることがあるようです。
皮膚に関しては、皮脂の分泌減少で肌がカサカサになりフケが出るようになります。また日光による累積ダメージで表皮下浮腫、毛細血管拡張症、基底角質細胞の鱗状化、表皮の肥厚化と硬化といった変性が起こります。耳・鼻・唇といった部分には猫ニキビや紅斑、かさぶたといった病変が生じることもありますが、軽度であれば許容範囲内です。
注意点
皮膚の角化性病変(鱗状化・肥厚化・硬化)が扁平上皮癌に進展することがありその中央値は10~12歳とされています。大量のフケや脱毛、急激に大きくなるコブ、なかなか治らない病変、皮膚の柔軟性の著しい低下、ボロボロの爪、重度の猫ニキビ、重度の紅斑やかさぶた(耳・鼻・唇)などは、日頃から飼い主が注意深く観察しておく必要があります。
虹彩の良性メラニン色素沈着と、初期のメラノーマ(悪性黒色腫)を見分けることは難しいとされています。不安な場合は、獣医さんに相談したほうがよいでしょう。聴力の悪化は猫の不安を煽り、鳴き声や攻撃行動を増やすかもしれません。いきなり触る前に、猫の視界に入ってこれから触るという合図を出しておけば、不要なストレスをかけないで済むと思われます。
グルーミングの減少で被毛が粗雑になる傾向がありますので、飼い主がブラッシングなど行って補ってあげましょう。
消化器の老化現象
歯の壁が厚くなって密度が上がり、色が黄色~オフホワイトになることがあります。また咀嚼力の低下、食道括約筋と蠕動活動の低下などにより、嚥下障害(食べたものうまく飲み込めない)や逆流(吐き戻し)が多くなるかもしれません。
胆汁の組成変化、膵臓の機能低下、腸内の移動速度変化などが消化率の悪化を引き起こし、体重減少につながることもあります。腸に分布している神経の数自体が減り、腸管筋と粘膜下叢に影響して腸管運動が低下すると、便秘が引き起こされます。確証データはありませんが、老化にともなって腸内細菌叢が変化する可能性もあるようです。なお肝臓内にリポフスチンと呼ばれる物質が蓄積するという報告がありますが、今のところ肝機能との関連性はよくわかっていません。
ペルシャやヒマラヤンといった短頭種は、歯と歯の隙間が小さくなって歯垢がたまりやすいため、歯周病の予防意識がとりわけ重要になってきます。
胆汁の組成変化、膵臓の機能低下、腸内の移動速度変化などが消化率の悪化を引き起こし、体重減少につながることもあります。腸に分布している神経の数自体が減り、腸管筋と粘膜下叢に影響して腸管運動が低下すると、便秘が引き起こされます。確証データはありませんが、老化にともなって腸内細菌叢が変化する可能性もあるようです。なお肝臓内にリポフスチンと呼ばれる物質が蓄積するという報告がありますが、今のところ肝機能との関連性はよくわかっていません。
注意点
腸管内の食物移動が早過ぎると消化不良を起こし、逆に腸管内の食物移動が遅すぎると腸内細菌の過剰な繁殖を招いたりします。若い猫と老猫(11.6±1.4歳)を比較した調査では、大腸内での移動速度が老猫で遅くなることが確認されています。老猫において便秘が多く報告されるのは恐らくこのためでしょう。飼い主は、猫の排便日誌をつけて腸の具合をモニタリングすると同時に、ウンチの形状をよく観察するようにします。
喉の渇きに鈍感になると、水分補給が遅れて脱水や便秘、熱中症につながる危険性があります。予防のため、水飲み場を増やすといった工夫が望まれます。ペルシャやヒマラヤンといった短頭種は、歯と歯の隙間が小さくなって歯垢がたまりやすいため、歯周病の予防意識がとりわけ重要になってきます。
循環器の老化現象
大動脈や周辺動脈へのカルシウム沈着が起こります。また猫ではアテローム硬化症よりも心内膜の線維化の方が起こりやすいとされています。心臓でよく起こる変化は、収縮期血圧の上昇、心室期外収縮、心筋症ではない心肥大(10歳以降)、ギャロップリズム(10歳以降)、心雑音、不整脈などです。
2002~2011年の期間、ペットフードメーカー「アイムス」の研究施設内で飼育されていた627頭の臨床上健康な猫のうち、7~10歳に属する211頭と、11歳以上に属する149頭を対象に血液組成を調べた所、両年齢層の基準値に関して明白な違いが発見されました。11歳以上の老猫を、10歳未満の猫の基準値で照合してしまうと、許容範囲内なのに異常と診断されてしまうこともありうるでしょう。 老猫の血液検査項目基準値(PDF版)
収縮期血圧の測定は8歳以降から定期的に行い、睡眠時の呼吸数が1分間で30回を超えるようなときは精密検査を受けた方が良いとされます。
2002~2011年の期間、ペットフードメーカー「アイムス」の研究施設内で飼育されていた627頭の臨床上健康な猫のうち、7~10歳に属する211頭と、11歳以上に属する149頭を対象に血液組成を調べた所、両年齢層の基準値に関して明白な違いが発見されました。11歳以上の老猫を、10歳未満の猫の基準値で照合してしまうと、許容範囲内なのに異常と診断されてしまうこともありうるでしょう。 老猫の血液検査項目基準値(PDF版)
注意点
6歳を超えた猫では肥大性心筋症への注意が必要となります。しかし心筋症を聴診だけで検知するのは難しいため、心エコー検査を行うのが望ましいとされます。なお老猫の場合、心エコー検査で異常が見られなくても、ストレスや不安による血流量増加で心雑音を伴うことがあるそうです。収縮期血圧の測定は8歳以降から定期的に行い、睡眠時の呼吸数が1分間で30回を超えるようなときは精密検査を受けた方が良いとされます。
呼吸器の老化現象
人医学の分野で確認されている、肺の弾力性低下、呼吸筋の弱化、肺胸郭コンプライアンスの低下(肺や胸郭が膨らみにくい)といった変化が猫でも起こると考えられていますが、仮説の域を出ていません。確認されているのは、免疫機能やアドレナリンβ受容体の変化、および気道反応性の低下などです。
注意点
1~2歳の若齢猫と12~13歳の臨床上健康な老猫のエックス線パターンを比較したところ、老猫において気道反応性の低下が確認されたそうです。この事実は、若齢~中年の猫において喘息が多いものの、老猫では比較的少ないという報告に一致します。
泌尿器の老化現象
老猫と慢性腎臓病とは不可分の関係にあるようです。ある調査では、12歳を超えた老猫では28%、15~20歳では80.9%という高い有病率が報告されています。また20歳までの猫を対象とした別のランダム調査では、「IRIS」(腎臓疾患の国際組織)による腎臓病の分類(→出典)でステージ1が50%、ステージ2が65.1%、ステージ3が7.0%、ステージ4が0%という結果になっています。
慢性腎臓病に伴い、高血圧リスクも高まります。血圧が正常な猫を3~40ヶ月追跡したところ、慢性腎臓病がない場合は7%が高血圧に、腎臓病がある場合は17%が高血圧になったそうです。発症リスクは、慢性腎臓病を抱えた猫が「1」に対し、健康な猫で「0.2」程度と推定されています。特に収縮期血圧が高まる傾向が確認されています(2回連続で170mmHg以上を記録)。
結石症に関しては、猫全体を見てみるとストルバイト結石が92%であるのに対し、シュウ酸カルシウム結石はわずか1%程度とされています。しかし上部尿路における結石症に限ってみると、70%がシュウ酸カルシウム結石だそうです。ストルバイト結石は7歳以降、シュウ酸カルシウム結石は10~15歳以降で発症率が高まるとされています。老猫の尿の変化としては、尿中のグリコサミノグリカンとコンドロイチン硫酸の低下、酸性度とシュウ酸カルシウム相対的過飽和度(RSS)の上昇、ストルバイト相対的過飽和度(RSS)の低下などが確認されています。
慢性腎臓病に伴い、高血圧リスクも高まります。血圧が正常な猫を3~40ヶ月追跡したところ、慢性腎臓病がない場合は7%が高血圧に、腎臓病がある場合は17%が高血圧になったそうです。発症リスクは、慢性腎臓病を抱えた猫が「1」に対し、健康な猫で「0.2」程度と推定されています。特に収縮期血圧が高まる傾向が確認されています(2回連続で170mmHg以上を記録)。
結石症に関しては、猫全体を見てみるとストルバイト結石が92%であるのに対し、シュウ酸カルシウム結石はわずか1%程度とされています。しかし上部尿路における結石症に限ってみると、70%がシュウ酸カルシウム結石だそうです。ストルバイト結石は7歳以降、シュウ酸カルシウム結石は10~15歳以降で発症率が高まるとされています。老猫の尿の変化としては、尿中のグリコサミノグリカンとコンドロイチン硫酸の低下、酸性度とシュウ酸カルシウム相対的過飽和度(RSS)の上昇、ストルバイト相対的過飽和度(RSS)の低下などが確認されています。
注意点
変形性関節症を抱えた猫では68.8%が慢性腎臓病にかかっており、そのうち65.9%はステージ2であるといいます。変形性関節症を抱えた猫とランダムに選別した猫を対象として調べた所、14.9歳まで慢性腎不全の有病率は変わらないものの、15歳を超えた途端、変形性関節症を抱えた猫で多くなるそうです。なお変形性関節症と慢性腎臓病の関連性はよくわかっていません。その他のリスクファクターとしては、体重減少、細い体型、脱水状態、歯周病、膀胱炎、麻酔の履歴などが確認されています。
慢性腎臓病と診断された段階で飼い主によって報告された主な症状は、多尿多飲、食欲不振、嘔吐、活動性の低下、口臭の悪化などで、割合として最も多いのは尿細管間質線維症とされています。676頭のコロニー猫を対象とした調査では、尿細管間質性腎炎で死亡した猫は38%で寿命は11.67歳、その他の理由で死亡した猫の寿命は10.0歳だったそうです。1歳以上寿命が伸びているという現象から考え、尿細管間質の炎症やその結果としての線維化が、命を永らえさせるための防御機構の一種ではないかと推測されています。
内分泌系の老化現象
健康な猫を対象とし、下垂体ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモン、レニン、アンギオテンシン、アルドステロン、膵臓、肝臓、腎臓、消化管ホルモンのレベルを長期的に追跡した調査は存在しません。高齢猫で甲状腺ホルモンレベルが高くなるという現象が、老化現象なのか病変なのかは不明です。
注意点
インスリン抵抗性と強く関係していたのは、食事内容ではなく肥満というパラメーターだったそうです。インスリン抵抗性の増加に伴う2型糖尿病には、太り過ぎという体型が深く関わっているものと推測されます。
老猫ではのどにある甲状腺の機能が高まりすぎ、甲状腺機能亢進症に陥ることがよくあります。飼い主は日常的に猫の首元を触診し、今までになかった膨らみやしこりができていないかどうかをチェックしてあげましょう。
免疫系の老化現象
人間を始めとする動物で確認されている「免疫老化」が猫にもあることが示唆されています。年を取ると免疫力が低下するという現象には、科学的裏付けがあるということです。猫で確認されている「免疫老化」および「インフラメージング」(炎症によって老化が促される現象)としては、具体的に以下のような項目があります。
免疫老化・インフラメージング
- 白血球、リンパ球、好酸球数の減少→10~14歳
- T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞の減少→10~14歳
- マイトジェン応答反応の低下→10~14歳
- ヒツジ赤血球に対する遅延型過敏反応の減少→9.92±0.89
- ヒツジ赤血球に対する抗体反応の減少→?
- CD4陽性T細胞の減少→10~14歳
- CD5陽性T細胞の減少→10~14歳
- 血清免疫グロブリンAとMの増加→10~14歳
- 単球の増加/炎症前サイトカイン→8~10歳
神経系の老化現象
12~22歳の老猫の飼い主を対象とした調査では、よくある問題行動として以下のような項目が挙がってきています。
老猫の問題行動
- 過剰な鳴き声=61% (うち夜間が31%)
- 不適切な排泄(粗相+マーキング)=27%
- 失見当識=22%
- 無目的な徘徊=19%
- 落ち着きがない=18%
- すぐ怒って攻撃的になる=6%
- 怖がって隠れる=4%
- 愛情表現がしつこい=3%
注意点
上記「失見当識」や「無目的な徘徊」といった行動は、人間でいう「認知症」に近い状態だと推測されます。猫の場合、発症率が高まるのは10~12歳頃です。猫の認知症を見分けるための確実な方法はありませんが、犬の認知症診断に用いられる「DISHA」と呼ばれる基準が有用とされます。具体的には以下のページにまとめてありますのでご参照ください。