猫の品種と性格の関係
調査を行ったのはフィンランドにあるヘルシンキ大学獣医学部のチーム。2019年3月から2020年9月の期間、オンラインプラットフォームを通じてアンケートを配布し、猫と飼い主の基本属性、猫の性格、猫の行動に関する大量の情報を収集しました。
17歳以上の高齢猫、3ヶ月齢未満の子猫、行動セクションに関する回答が80%未満のものを除外した結果、最終的に4,316頭分のデータが得られたといいます。全体の69%が不妊手術済みで、オスは51%、年齢中央値は4.9歳という内訳でした。
猫たちはおおまかに「特定品種グループ3,509頭」と「家庭猫グループ807頭」(品種の特定ができないミックスもしくは特定品種の血統が混じっていたり特定品種の身体的な特徴が明らかな個体)とに分けられ、さらに「特定品種」は25種に細分されました(※フィンランド土着の猫「ランドレース」を含む)。
また136項目の質問から得られた回答を解析し、行動と性格に関する変数のおよそ43%を説明できる因子構造を7つに分類しました。その結果が以下です。
17歳以上の高齢猫、3ヶ月齢未満の子猫、行動セクションに関する回答が80%未満のものを除外した結果、最終的に4,316頭分のデータが得られたといいます。全体の69%が不妊手術済みで、オスは51%、年齢中央値は4.9歳という内訳でした。
猫たちはおおまかに「特定品種グループ3,509頭」と「家庭猫グループ807頭」(品種の特定ができないミックスもしくは特定品種の血統が混じっていたり特定品種の身体的な特徴が明らかな個体)とに分けられ、さらに「特定品種」は25種に細分されました(※フィンランド土着の猫「ランドレース」を含む)。
また136項目の質問から得られた回答を解析し、行動と性格に関する変数のおよそ43%を説明できる因子構造を7つに分類しました。その結果が以下です。
怖がり
活動性・遊戯心
「活動性・遊戯性」(activity/playfulness)とは遊びに夢中になる、活動性が高い、獲物に対する興味が強く捕食行動を頻繁に見せるといった行動で特徴づけられる側面のことです。別の調査で「外向性」や「開放性」と表現される側面とある程度の互換性があると考えられています。
この側面に関する品種ごとのランキングとトップ5は以下です。
この側面に関する品種ごとのランキングとトップ5は以下です。
人への攻撃性
人との社交性
他の猫との社交性
過剰グルーミング
粗相の問題
「粗相の問題」は性格ではなく問題行動ですが、高値はストレス耐性の低さを反映しているため、当調査内では便宜上性格の一種としてカウントされました。
この側面に関する品種ごとのランキングとトップ5は以下です。 Reliability and validity of seven feline behavior and personality traits
Salla Mikkola, Milla Salonen, et al., Animals(2021), DOI:10.3390/ani11071991
この側面に関する品種ごとのランキングとトップ5は以下です。 Reliability and validity of seven feline behavior and personality traits
Salla Mikkola, Milla Salonen, et al., Animals(2021), DOI:10.3390/ani11071991
猫の性格は偏見?統計?
猫の性格に関しては非常に多くの調査が行われており、研究グループごとに5面や6面などの分類法が採用されています。当調査では問題行動2つを含めた7つの因子が切り口になっています。
品種特有の性格はある?
調査チームが項目ごとにテスト間の信頼度を計算したところ、平均が0.83(0.69~0.92)となり統計学的には高いと判断されました。また同様に評価者間の信頼度を計算したところ、ICC(1,1)ベースでは平均0.72(0.61~0.87)、ICC(1,k)ベースでは平均0.83(0.75~0.93)となり、こちらも高いと判断されました。
テスト間の信頼度および評価者間の信頼度が共に高い値を示したことから調査チームはある特定の品種においてある特定の側面が強く現れるという現象は確かにあるかもしれないと言及しています。平たく言うと「品種特有の性格」みたいなものの存在を否定できないということです。
人間の世界では近年、外見や人種とパーソナリティを短絡的に結びつけると「偏見」や「差別」といって非難されますので、猫においても特定品種と行動特性を安易に固定観念化するのは危険かもしれません。例えば「粗相の問題」でトップクラスにランキングしたノルウェジャンフォレストキャットやベンガルに対する偏見につながるなどです。
とは言え、特定品種を飼っている数十人~100人超の飼い主の意見を総和すると、ある特定の特徴が浮かび上がってくるという現象は確かにあるようです。この背景には脳内における神経伝達物質(ノルアドレナリンやセロトニン)の分泌様式や、狩猟や逃避といった本能的な行動に関連した神経回路が、品種作出の過程で偶発的に固定されたという事情があるのかもしれません。猫の性格に器質的な根拠があるのだとすると、それは偏見(個人の意見)ではなく統計(科学的データ)ということになるでしょう。
テスト間の信頼度および評価者間の信頼度が共に高い値を示したことから調査チームはある特定の品種においてある特定の側面が強く現れるという現象は確かにあるかもしれないと言及しています。平たく言うと「品種特有の性格」みたいなものの存在を否定できないということです。
人間の世界では近年、外見や人種とパーソナリティを短絡的に結びつけると「偏見」や「差別」といって非難されますので、猫においても特定品種と行動特性を安易に固定観念化するのは危険かもしれません。例えば「粗相の問題」でトップクラスにランキングしたノルウェジャンフォレストキャットやベンガルに対する偏見につながるなどです。
とは言え、特定品種を飼っている数十人~100人超の飼い主の意見を総和すると、ある特定の特徴が浮かび上がってくるという現象は確かにあるようです。この背景には脳内における神経伝達物質(ノルアドレナリンやセロトニン)の分泌様式や、狩猟や逃避といった本能的な行動に関連した神経回路が、品種作出の過程で偶発的に固定されたという事情があるのかもしれません。猫の性格に器質的な根拠があるのだとすると、それは偏見(個人の意見)ではなく統計(科学的データ)ということになるでしょう。
都市伝説に根拠はある?
調査チームは猫の性格を浮き彫りにすると同時に、過去の文献等から指摘されている一般的な仮説の検証も行いました。具体的には以下です。
猫の性格に関する都市伝説(?)
- オス猫よりメス猫の方が怖がりである
- オス猫よりメス猫の方が粗相に関する問題が少ない
- 若い猫より高齢猫の方が活動性が低い
- 若い猫より高齢猫の方が別の猫に対する社交性が低い
- 多頭飼育されている猫の方が人間に対する攻撃性が低い
- 多頭飼育されている猫の方が粗相に関する問題が多い
- バーミーズやオリエンタルではサイベリアンやノルウェジャンフォレストキャットよりも過剰なグルーミングが見られる
- 問題行動が多いと評価された猫は、問題行動がないと評価された猫よりも「怖がり」「人間に対する攻撃性」「過剰なグルーミング」「粗相の問題」に関する飼い主による主観評価が高い
猫の性格は環境で変わる
2020年のデータによると、日本においては純血種の飼育率が18%とされています。こうした猫に関してよく言われる性格という概念は、ペットショップや繁殖屋がセールストークをする際に便宜上使うものですので、あまり信用できるものではありません。
一方、全体の82%を占める短毛種(品種を特定できないいわゆる雑種)に関しても、被毛パターンや毛色から性格を判断するという占いじみたものがありますが、科学的根拠に裏付けられているわけではありません。 生活環境を整えてストレス源を取り除けば「攻撃性」や「怖がり」といったネガティブな側面はかなり抑え込むことができます。純血種であれ普通の短毛種であれ、猫の性格を形作るのは飼い主の務めということです。
一方、全体の82%を占める短毛種(品種を特定できないいわゆる雑種)に関しても、被毛パターンや毛色から性格を判断するという占いじみたものがありますが、科学的根拠に裏付けられているわけではありません。 生活環境を整えてストレス源を取り除けば「攻撃性」や「怖がり」といったネガティブな側面はかなり抑え込むことができます。純血種であれ普通の短毛種であれ、猫の性格を形作るのは飼い主の務めということです。
以下のページを参考にしながら生活環境を見直してみましょう。猫の行動が驚くほど変わることがあります。