オスとメスの見分けポイント
白人が白人の性別を見た目だけから判断するときの正答率は96%とされています。では猫の性別も同じように見た目だけから判断できるのでしょうか?以下は実用的な観察ポイントです。
膨らみの有無
猫の性別を見分ける時の最も大きなヒントは、しっぽの付け根に膨らみがあるかどうかという点です。
去勢手術を受けていないオス猫の場合、ギリシア文字の「ω」に似た膨らみが見て取れます。一方メス猫の場合は避妊手術の有無に関わらず、俗に「ふぐり」などと呼ばれるこうした膨らみがありません。去勢手術を受けたオス猫は玉を入れていた皮だけが残りますので、ちょうど未去勢オスとメスの中間段階の様相を呈し、わずかな膨らみが見て取れます。 なお産まれて間もない子猫の場合、オス猫に特有の膨らみがまだ見られません。そういう特殊な場合はしっぽの付け根にある2つの穴の距離から判断します。具体的な方法は以下のページで解説してありますので参考にしてください。
去勢手術を受けていないオス猫の場合、ギリシア文字の「ω」に似た膨らみが見て取れます。一方メス猫の場合は避妊手術の有無に関わらず、俗に「ふぐり」などと呼ばれるこうした膨らみがありません。去勢手術を受けたオス猫は玉を入れていた皮だけが残りますので、ちょうど未去勢オスとメスの中間段階の様相を呈し、わずかな膨らみが見て取れます。 なお産まれて間もない子猫の場合、オス猫に特有の膨らみがまだ見られません。そういう特殊な場合はしっぽの付け根にある2つの穴の距離から判断します。具体的な方法は以下のページで解説してありますので参考にしてください。
毛の色
性染色体と強く連動した被毛パターンがありますので、猫の毛色は性別を見分ける時の重要なヒントになります。
たとえば三毛猫(サビ猫)の場合はほぼ100%の確率でメス猫になります。三毛猫(サビ猫)には「X染色体の不活性化」と呼ばれるメカニズムが関わっており、メス猫においてしか生じないからです。少しややこしいので詳しくは「X染色体の不活性化」をご覧ください。
また茶トラや茶白は高い確率でオス猫になります。茶色(赤・ジンジャー)を生み出す優性遺伝子「O」に関し、オス猫は1本でも有していたら茶色を発現しますが、メス猫の場合は「O」を2本同時に保有しないと発現しません。発現条件はメスの方がシビアなため、どうしてもオス猫が多くなってしまいます。詳しくは「レッド系の発現条件」をご覧ください。
たとえば三毛猫(サビ猫)の場合はほぼ100%の確率でメス猫になります。三毛猫(サビ猫)には「X染色体の不活性化」と呼ばれるメカニズムが関わっており、メス猫においてしか生じないからです。少しややこしいので詳しくは「X染色体の不活性化」をご覧ください。
また茶トラや茶白は高い確率でオス猫になります。茶色(赤・ジンジャー)を生み出す優性遺伝子「O」に関し、オス猫は1本でも有していたら茶色を発現しますが、メス猫の場合は「O」を2本同時に保有しないと発現しません。発現条件はメスの方がシビアなため、どうしてもオス猫が多くなってしまいます。詳しくは「レッド系の発現条件」をご覧ください。
体重
体型
骨格
メス猫よりもオス猫の方が少し足が長いため、歩き方や体高が性別を見分ける時の大きなヒントになります。
ブラジルUNESPの調査チームは10頭のオス猫(うち9頭は去勢済み | 1~4歳 | 3.1~6.8 kg)と8頭のメス猫(全頭避妊済み | 1~6歳 | 3.3~4.75 kg)を対象とした感圧マットによる歩様解析(0.54m/秒)を行いました。その結果、歩幅に関してはオス猫(68cm)の方がメス猫(57cm)よりやや長かったといいます。骨格がやや大きいからだろうと推測して足の長さを計測したところ、前足の長さに関してはオス猫24.94cm:メス猫22.5cm、後ろ足の長さに関してはオス猫が25.6cm:メス猫23.3cmで、やはりオス猫の方がやや長いことが明らかになりました (:Verdugo, 2013)。
ブラジルUNESPの調査チームは10頭のオス猫(うち9頭は去勢済み | 1~4歳 | 3.1~6.8 kg)と8頭のメス猫(全頭避妊済み | 1~6歳 | 3.3~4.75 kg)を対象とした感圧マットによる歩様解析(0.54m/秒)を行いました。その結果、歩幅に関してはオス猫(68cm)の方がメス猫(57cm)よりやや長かったといいます。骨格がやや大きいからだろうと推測して足の長さを計測したところ、前足の長さに関してはオス猫24.94cm:メス猫22.5cm、後ろ足の長さに関してはオス猫が25.6cm:メス猫23.3cmで、やはりオス猫の方がやや長いことが明らかになりました (:Verdugo, 2013)。
行動
メス猫が避妊手術を受けていない場合、繁殖期に入ると「高い声で鳴く」、「スプレー」、「ロードーシス姿勢を取る」といった行動を取るようになります。
オス猫が去勢を受けていない場合、メス猫の繁殖期に合わせて「徘徊・放浪」、「スプレー」(おしっこを垂直の対象物にかける行動)、「他のオス猫とのケンカ」といった行動を取るようになります。
不妊手術によって性腺ホルモンの影響が小さくなると上記したような行動は見られなくなりますが、手術を受けていない場合は特徴的な行動が見られるかもしれません。
オス猫が去勢を受けていない場合、メス猫の繁殖期に合わせて「徘徊・放浪」、「スプレー」(おしっこを垂直の対象物にかける行動)、「他のオス猫とのケンカ」といった行動を取るようになります。
不妊手術によって性腺ホルモンの影響が小さくなると上記したような行動は見られなくなりますが、手術を受けていない場合は特徴的な行動が見られるかもしれません。
顔の形(?)
古くからオス猫を見分ける時の特徴として「顔の幅が広い」(McGinnis 1993, Siegal 1983)とか「頬にたるみがある」(Alderton 1992, Fogle 1991, Johnson 1994)という点がさまざまな人によって挙げられています。しかし頭蓋骨の幅をCTスキャンを用いて解析した学術研究では、オスとメスの間に格差は見られなかったと報告されています。詳しくは「「メス猫よりオス猫の顔幅が広い」は本当?」をご覧ください。また「ジャウル」(jowl)や「チークフォールズ」(cheek folds)と呼ばれる頬のたるみはオス猫特有の器官ではありません。ちなみに一部のネット情報では「ジョウル」と記載されているようですが、正確な発音は「ジャウル」で、ブタやウシの喉元にある垂れ肉や太った人の二重あごという意味です。
おそらくメス猫と比較してオス猫の方が太り気味の傾向があるため、頬にたまった皮下脂肪がオス猫の特徴として定着してしまったのでしょう。
いずれにしても以下のセクションで解説する通り、猫の頭蓋骨に大きさ以外の性差はありません。白人が性別を見分ける時のポイントは顎の形と言われていますが、同じような有力なヒントは猫の顔の中にはないようです。
NEXT:骨格に性差はある?
いずれにしても以下のセクションで解説する通り、猫の頭蓋骨に大きさ以外の性差はありません。白人が性別を見分ける時のポイントは顎の形と言われていますが、同じような有力なヒントは猫の顔の中にはないようです。
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オスとメスの骨格の違い
オスとメスの骨格を比較したときそれぞれが固有の特徴を有している状態を性的二型性と言います。猫の骨格にもこの二型性はあるのでしょうか?
頭蓋骨と骨盤による見分け方
調査を行ったのはタイ・チェンマイ大学の骨関節研究ラボのチーム。博物館に保管されていた猫の骨格標本38体分(オス20+メス18/頭骨と骨盤のみ)を対象とし、骨の計測指標(頭蓋骨12点+下顎骨10点+骨盤22点)を設けて形態計測解析を行い、性的二型性があるかどうかを検証しました(:Pitakarnnop, 2016)。
なお意外なことに、頭蓋骨に関しては「オスでは頭頂骨の側頭線がメスよりもやや上に寄っている」(:Knospe, 1988)という昔の報告があるものの、当調査では明白な性差が確認されませんでした。一方、近年行われた調査では、トルコ原産のターキッシュバンを対象とし、オスメス8頭ずつの頭蓋骨をCTスキャンで撮影してさまざまな形態学的指標を比較した結果、「メス猫は丸顔/オス猫は面長」という特徴が確認されています(: Yilmaz, 2020)。 さらに2021年、ポルトガルのルゾフォナ大学獣医学部が行った形態計測学な調査では「上から頭蓋骨を見た時オスはラグビーボールのように楕円形、メスは野球ボールのように球形に近い」「鼻骨はオス猫の方が長い」という性差が報告されています。一般的には「オスの方が顔幅が広い」とされていますが、実際は顔の幅ではなく頭蓋骨の前後左右の長さ比に特徴があるようです。
- 性的二型性
- 性的二型性(sexual dimorphism)とはオスとメスがそれぞれ固有の特徴を有している状態。体の大きさや見た目のほか、内分泌様式、行動様式なども含まれる。例えばオスのライオンにだけたてがみがあったり、ヘラジカのオスでは骨盤の坐骨弓角が90度未満であるのに対し、メスでは90度以上であるなど。
オス猫とメス猫の骨格差
- 下顎骨の筋突起オスよりメスの方が後方にカーブしている
✓素人→正確度64.9% | 精度74.7%
✓専門家→正確度88.2% | 精度95.5% - 骨盤の腸骨棘メスよりオスの方が飛び出している
✓素人→正確度72.2% | 精度82.8%
✓専門家→正確度94.4% | 精度95.6% - 坐骨弓角オスよりメスの方が大きい(鈍角)
✓素人→正確度53.7% | 精度74.9%
✓専門家→正確度74.3% | 精度94.5%
なお意外なことに、頭蓋骨に関しては「オスでは頭頂骨の側頭線がメスよりもやや上に寄っている」(:Knospe, 1988)という昔の報告があるものの、当調査では明白な性差が確認されませんでした。一方、近年行われた調査では、トルコ原産のターキッシュバンを対象とし、オスメス8頭ずつの頭蓋骨をCTスキャンで撮影してさまざまな形態学的指標を比較した結果、「メス猫は丸顔/オス猫は面長」という特徴が確認されています(: Yilmaz, 2020)。 さらに2021年、ポルトガルのルゾフォナ大学獣医学部が行った形態計測学な調査では「上から頭蓋骨を見た時オスはラグビーボールのように楕円形、メスは野球ボールのように球形に近い」「鼻骨はオス猫の方が長い」という性差が報告されています。一般的には「オスの方が顔幅が広い」とされていますが、実際は顔の幅ではなく頭蓋骨の前後左右の長さ比に特徴があるようです。
長骨と扁平骨による見分け方
上記したのと同じタイ・チェンマイ大学の調査チームは、棒状の長い骨(長骨)と平板な骨(扁平骨)を対象とした同様の形態計測解析を行いました。92体(オス50+メス42)の骨格標本に含まれる合計58のランドマークを高性能のノギスで計測した結果、腓骨(ふくらはぎの外側にある骨)を除くほとんどの骨で明白な性的二型性が確認されたといいます。以下は骨だけからオスとメスを見分けようとした時の正確度です(:Boonsri, 2018)。
長骨と扁平骨による性別判定
- 肩甲骨=74~79%
- 上腕骨=84~93%
- 橈骨=93~95%
- 尺骨=84~90%
- 大腿骨=89%
- 脛骨=89~94%
踵骨による見分け方
猫の性別を見分けるコツ
見た目だけをヒントにした場合、人はいったいどのくらいの割合で猫の性別を言い当てることができるのでしょうか?一般人や猫と関わりの深い人(保護施設職員や獣医療関係者)を対象とした判定テストを行った結果、正答率は驚くほど低いことが明らかになりました。偶然以上の確率でオスとメスを見分けるためには、どうやら特殊な事前訓練が必要なようです。
猫の性別判定テスト
体のパーツによる性別判定
大学生30人(男性12+女性18)をランダムで3つのグループに分け、オスメス20頭ずつからなる40頭の写真を見せて性別を見分けてもらいました。各グループに提示された写真の条件は「顔だけ」「体だけ」「全身」というものです。
その結果、正答率に関し頭だけの場合が53.3%、体だけの場合が50.5%、全身の場合が56%だったといいます。これらの数値は統計的に偶然と同じレベルと判定されました。
顔アップによる性別判定
大学生40人(女性22+男性18)を対象とし、オスメス15頭ずつからなる30頭の写真(顔と頭部のアップ)で事前にトレーニングしてもらった上で、10頭の性別を見分けてもらいました。その結果、正答率は46%でトレーニングの効果は全く確認されませんでした。
訓練と性別判定・一般人
80人(女性44+男性36)をランダムでグループ分けし、一方の40人には最も正答率が高かった(68.4%)写真14枚で、残りの40人は最も正答率が低かった(32.1%)写真14枚で事前トレーニングをしてもらいました。問題用の10枚の写真を見分けてもらったところ、前者のグループの正答率が57.5%だったのに対し、後者の正答率が45.8%だったといいます。「57.5%」に関しては統計的に偶然以上であると判断されました。
猫関係者による性別判定
猫と関係が深い仕事に関わる30人(女性22+男性8 | ブリーダー・動物保護施設職員・獣医師 | 職歴平均9.8年)を対象とし、10頭の写真を見せて性別を判定してもらいました。その結果、正答率が偶然レベルの50.7%だったといいます。
訓練と性別判定・猫関係者
猫と関係が深い仕事に関わる別の30人(女性25+男性5 | 平均職歴7.7年)を対象とし、正答率が高かった(68.4%)写真14枚で事前トレーニングを行ってもらいました。10頭の写真を見せて性別を見分けてもらったところ正答率が60%となり、統計的に偶然以上であると判定されました。また有意とまでは行かないまでも、訓練を受けた素人よりも成績が良いという傾向が確認されました。
性別判定のポイントはどこ?
上記したテストでは正答率が高い写真と低い写真とがありました。しかし具体的にどのポイントが判定する際の重要なヒントになったのかはよくわかっていません。
正答率が7割以上の被験者にアンケート調査を行ったところ、以下のようなポイントが決定因になったいいます。
また以下は正答率が高かった画像(上4枚)と、逆に低かった画像(下4枚)のサンプルです。こうした具体例をたくさん見ることにより脳の中で「深層学習」(ディープラーニング)が促され、オスとメスそれぞれの微妙な特徴を自動的に抽出してくれるようにかもしれません。ただし、長年に渡って猫と関連した仕事についている人でさえ正答率は偶然レベルですので、かなり難易度は高いと言えます。 判定テストで用いられたのは背景がはっきりしない二次元の画像です。実際の猫を四次元空間で見たり触ったりすると、体の大きさがより正確に把握できますので、いくらか正当率は高まると考えられます。また体重や体型よりも確実な「しっぽの付け根」を観察できますので、少なくとも正答率が5~6割という赤点レベルにはならないと思います。
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正答率が7割以上の被験者にアンケート調査を行ったところ、以下のようなポイントが決定因になったいいます。
見分けるときにどこを見た?
- オス猫攻撃的 | 警戒 | 意地悪そう | 全体的に大きい | 耳が離れている | 顔幅が大きい | 顔が長い
- メス猫可愛らしい | 怖気づいた様子 | 穏やかな雰囲気 | 野性味がある | 人間っぽい | こじんまりしている | 悪賢い印象
また以下は正答率が高かった画像(上4枚)と、逆に低かった画像(下4枚)のサンプルです。こうした具体例をたくさん見ることにより脳の中で「深層学習」(ディープラーニング)が促され、オスとメスそれぞれの微妙な特徴を自動的に抽出してくれるようにかもしれません。ただし、長年に渡って猫と関連した仕事についている人でさえ正答率は偶然レベルですので、かなり難易度は高いと言えます。 判定テストで用いられたのは背景がはっきりしない二次元の画像です。実際の猫を四次元空間で見たり触ったりすると、体の大きさがより正確に把握できますので、いくらか正当率は高まると考えられます。また体重や体型よりも確実な「しっぽの付け根」を観察できますので、少なくとも正答率が5~6割という赤点レベルにはならないと思います。
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猫の性別当てクイズ
以下でご紹介する猫たちの性別を写真だけから当ててみてください。性別と強く連動した三毛猫や茶トラ猫は省いてあります。また体が十分に成長していない子猫はメス猫との区別が難しいため省いてあります。何問正解できるでしょうか?
性別クイズ・第1問
性別クイズ・第2問
性別クイズ・第3問
性別クイズ・第4問
性別クイズ・第5問
性別クイズ・第6問
性別クイズ・第7問
性別クイズ・第8問
性別クイズ・第9問
性別クイズ・第10問
顔が長かったり鼻ぺちゃな品種の場合、オスとメスの見分けはさらに難しくなると考えられます。猫たちが性別判定に利用しているのは、見た目ではなく匂いなのでしょう。私たちも鼻を鍛えたほうが早いかもしれません。