多発性嚢胞腎
有病率
2000年12月から2002年4月の期間、フランスの調査チームがリヨンとアルフォールにある動物病院で64頭のエキゾチックを対象として行った調査では、超音波検査で嚢胞が認められなかったネガティブが39頭だったのに対し、少なくとも1つの嚢胞が認められたポジティブが25頭で、有病率は39.1%だったと報告されています(→出典)。
流涙症
流涙症とは眼球で生成された涙をスムーズに排水することができず、絶えず涙目の状態が続いてそのうち目頭が変色してしまう病態。診断は眼球周辺の目視や涙量テストなどを通して下します。治療法は点眼薬の投与や涙小管の洗浄がメインです。
発症メカニズム
ドイツのライプツィヒ大学獣医学部が行った調査では、鼻ぺちゃを特徴とする短頭種では下顎が突き出る→上顎の犬歯が前方にせり出す→鼻がつぶれる→排水システムが圧迫を受ける、というメカニズムを通し、流涙症を発症しやすいと報告されています(→出典)。また英国のプリマス大学とエジンバラ大学からなる共同チームが行った調査では、猫が鼻ぺちゃであればあるほど「呼吸困難」、「活動性の低下」、「涙やけ」(流涙症)の報告率が高まったとも。エキゾチックショートヘアの大きな特徴は「鼻ぺちゃ」ですので、呼吸困難のほか流涙症を発症するリスクも高いと推測されます。
水頭症
水頭症とは脳脊髄膜の中を流れる脳脊髄液の流れが悪くなり、脳内に異常な量の髄液が溜まってしまう病気。診断はエックス線、CTスキャン、MRIなどを通して得た画像、および脳脊髄液検査などで下します。治療法は脳圧を下げるための副腎皮質ホルモン薬や降圧利尿薬の投与がメインです。脳と心臓や腹腔をバイパス手術する方法もあります。
鼻ぺちゃとの関係
ドイツにあるユストゥス・リービッヒ大学ギーセン獣医科学部のチームが行った調査では、ペルシャで見られる極端な鼻ぺちゃが頭蓋骨の形状を変形させ、これが脳室拡大や水頭症の原因になっている可能性が高いと報告されています。エキゾチックもペルシャと同じように鼻ぺちゃを特徴としていますので、同じメカニズムを通して水頭症を発症する確率が高いと推測されます。
短頭種気道症候群
短頭種気道症候群とは、マズルが短いため呼吸に難をきたしてしまう呼吸器系の病気。診断はエックス線による喉頭部の撮影や動脈血酸素飽和度測定などを通して下します。治療法は激しい運動を避ける保存療法がメインですが、重症の場合は鼻腔を拡大する外科手術が行われることもあります。
鼻ぺちゃとの関係
イギリスのプリマス大学とエジンバラ大学からなる共同チームは2015年4月から6月の期間、中国、イギリス、その他の国に暮らす猫の飼い主に対しオンラインのアンケート調査を行うと同時に、正面と真横から撮った猫の顔写真を送ってもらいました。顔写真から「鼻位置比率」(NP)と「マズル長比率」(M)という2つの指標を計算し、猫の生活の質と絡めて調べてみた所、「鼻位置比率」と「マズル長比率」の値が低いほど呼吸に難を抱えている割合が増え、また活動性の低下や涙やけ(流涙症)の報告率も高まったと言います。
シュウ酸カルシウム結石
下部尿路症候群(LUTD)とは、膀胱から尿道口をつなぐまでのどこかに結石などを生じてしまう病気。猫ではシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が大半を占めています。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。
発症リスク
ミネソタ大学の調査チームが1981年から1997年の期間、ミネソタ尿石センターを受診した尿路疾患を抱えた猫(シュウ酸カルシウム結石7,895頭+ストラバイト結石7,334頭)と北米とカナダの動物病院を受診した尿路疾患を抱えていない猫150,482頭のデータを比較したところ、エキゾチックショートヘアがシュウ酸カルシウム結石を発症する確率は標準の3.3倍に達することが明らかになったといいます(→出典)。
眼瞼内反症
眼瞼内反とは、主として下まぶたが眼球の方へ反り返り、被毛が角膜をこすることで炎症や潰瘍などを引き起こしてしまう眼科系の病気。診断は眼球表面の診察やまぶたの内反を視認することで下します。治療法は角膜に接触している被毛の除去や手術によって下瞼の位置をずらす内反矯正手術がメインです。
鼻ぺちゃとの関係
レーベル先天黒内障
レーベル先天黒内障とは、眼球に外見的な異常はないのに生まれつき目が見えない眼科系疾患。診断は眼底検査や視力の電気的な検査(網膜電図)で下します。根本的な治療法はありませんので、猫も飼い主も視力障害と付き合いながら暮らしていくことになります。
疾患遺伝子
2016年、猫の遺伝子を全て解析するプロジェクト「99 Lives Cat Genome Sequencing Initiative」は、3頭の猫を対象とした全ゲノムシーケンス(WGS)を行い、ペルシャでたびたび報告されているレーベル先天黒内障という眼科系疾患の原因遺伝子特定を試みました(→出典)。その結果、「AIPL1」と呼ばれる遺伝子の変異(c.577C>T)が疾患の発症に関わっている可能性が浮上してきたといいます。その後さらに40品種に属する1,700頭の猫を対象として「AIPL1」の変異を調査してみた所、ペルシャの血統が混じった品種でのみ確認され、その保有率は1.15 %であることが明らかになったとのこと。調査チームは具体的な品種名としてペルシャのほか、エキゾチックショートヘア、スコティッシュフォールド、セルカークレックス、ブリティッシュショートヘア、ヒマラヤンを挙げています。