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猫の鼻腔狭窄~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の鼻腔狭窄(びくうきょうさく)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の鼻腔狭窄の病態と症状

 猫の鼻腔狭窄とは、鼻の穴とそれに続く「鼻腔」と呼ばれる空間が狭まった状態を言います。 猫の正常な外鼻孔と狭窄を起こした外鼻孔の比較  この「鼻腔狭窄」と「長すぎる軟口蓋」、「声門の狭窄」といった他の症状が複合した場合は、特に短頭種気道症候群と呼ばれることもあります。先頭に「短頭種」とついているのは、この病変が主に鼻先が短い短頭猫種に発症するためです。
 猫の鼻腔狭窄の症状としては以下のようなものが挙げられます。
鼻腔狭窄の主症状
  • 鼻の穴が狭まっている
  • 普段から鼻をグーグーならす
  • 鼻水をよく飛ばす
  • 呼吸が荒くなる
  • 呼吸困難に伴うチアノーゼ(酸素不足)
  • 熱中症にかかりやすい

猫の鼻腔狭窄の原因

 猫の鼻腔狭窄の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
鼻腔狭窄の主な原因
  • 先天性の奇形
 2016年に行われた調査では、猫が鼻ぺちゃであればあるほど呼吸に難があることが確認されました(→詳細)。この関連性の背後にあるのは、人為的に強調された鼻腔の構造です。マズルが短い短頭猫種は、極めて短期間で選択繁殖されてきたため、骨が短くなったにもかかわらず、その上を覆っている軟部組織が短くなっていません。その結果、体の小さな子供が大人の洋服を着たときと同じ状況が発生します。すなわち、外を覆っている服がブカブカで所々の生地が余ってしまうのです。こうした内側と外側におけるサイズのミスマッチが猫の体で起こると、「皮膚のたるみ」、「軟口蓋の垂れ下がり」、「鼻腔の狭窄」といった文字通り「皺寄せ」として現れてしまいます。その複合が「短頭種気道症候群」です。
 具体的な猫種としては、ペルシャヒマラヤンエキゾチックショートヘアなどが挙げられます。

猫の鼻腔狭窄の治療

 猫の鼻腔狭窄の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
鼻腔狭窄の主な治療法
  • 保存療法 症状が軽い場合は、現状維持を基本とした保存療法が行われます。
     飼い主としてまず念頭に置くべきは、呼吸をするのに通常の猫より努力が必要なため、パンティング(あえぎ呼吸)による体温調整が苦手という点でしょう。つまり熱中症にかかりやすいという意味です。特に夏場は室温管理を注意深く行わなければなりません。
     鼻腔狭窄と軟口蓋の下垂が併存している場合は、睡眠時無呼吸への注意も必要となります。特に猫が仰向けで寝ているときは、自分自身の軟口蓋が気道をふさいでしまい、息ができなくなってしまいますので要注意です。
  • 外科手術 症状が重く、呼吸困難が明らかな場合は永続的な治療効果を狙って外科手術が行われることがあります。猫の鼻腔狭窄に対する鼻翼切除術  外鼻孔を広げる場合は、鼻の軟骨と周辺皮膚を切除して強引に鼻の孔を広げます。軟口蓋が長すぎて呼吸を邪魔している場合は、炭酸ガスレーザーを用いて扁桃の後ろから切除してしまいます。その他、喉頭や気管がつぶれているような場合は、気管を切開したりします。
     2023年に台湾の汎亜動物医院が行った報告では、鼻部背外側の軟骨を切除してスペースを確保してから鼻翼を上方に牽引して縫合するという形成手術により、合併症もなく長期的な改善が認められたとされています。 猫の鼻腔狭窄(短頭種気道症候群, BOAS)に対する鼻孔形成術の成果 猫のBOASに対する鼻孔形成術の術式模式図