詳細
調査を行ったのは、ドイツにあるユストゥス・リービッヒ大学ギーセン獣医科学部のチーム。極端な鼻ぺちゃを特徴とする「ピークフェイス」と呼ばれるペルシャ(47頭)と、通常の短毛種(10頭)、および両者の中間にある「ドールフェイス」(45頭)と呼ばれるペルシャを対象とし、MRI画像やCTスキャン画像から頭蓋骨の形、脳室の容積、脳実質の容積にどのような違いが見られるかを検証しました。
複数の大学のデータベースに残っている医療記録を後ろ向きに調査すると同時に、ドイツ国内で飼育されているペルシャを対象とした前向き調査を行ったところ、骨奇形、上顎の不正咬合、顎前突症(受け口)、脳室拡大、脳ヘルニアといった疾患は全てピークフェイスと連関していることが明らかになったといいます。
こうした結果から調査チームは、ペルシャで見られる極端な鼻ぺちゃが頭蓋骨の形状を変形させ、これが脳室拡大や水頭症の原因になっている可能性が高いという結論に至りました。重い神経症状から安楽死を余儀なくされる子猫が「ピークフェイス」でだけ認められたことから、猫の福祉を改善するためには、品種標準から極端な鼻ぺちゃを取り除くことを含めた抜本的な解決が必要だとしています。 The Relationship between Brachycephalic Head Features in Modern Persian Cats and Dysmorphologies of the Skull and Internal Hydrocephalus.
Schmidt, M.J., Kampschulte, M., Enderlein, S., Gorgas, D., Lang, J., Ludewig, E., Fischer, A., Meyer-Lindenberg, A., Schaubmar, A.R., Failing, K. and Ondreka, N. (2017), J Vet Intern Med. doi:10.1111/jvim.14805
こうした結果から調査チームは、ペルシャで見られる極端な鼻ぺちゃが頭蓋骨の形状を変形させ、これが脳室拡大や水頭症の原因になっている可能性が高いという結論に至りました。重い神経症状から安楽死を余儀なくされる子猫が「ピークフェイス」でだけ認められたことから、猫の福祉を改善するためには、品種標準から極端な鼻ぺちゃを取り除くことを含めた抜本的な解決が必要だとしています。 The Relationship between Brachycephalic Head Features in Modern Persian Cats and Dysmorphologies of the Skull and Internal Hydrocephalus.
Schmidt, M.J., Kampschulte, M., Enderlein, S., Gorgas, D., Lang, J., Ludewig, E., Fischer, A., Meyer-Lindenberg, A., Schaubmar, A.R., Failing, K. and Ondreka, N. (2017), J Vet Intern Med. doi:10.1111/jvim.14805
解説
ドイツ国内では「ドールフェイス」の血統が長らく維持されてきましたが、キャットショーに出場するため徐々に鼻の低い「ピークフェイス」との交配が行われるようになり、水頭症を発症する子猫の割合が増えて新生子死亡率が高まってしまったという経緯があります。これに対する獣医師や品種協会の説明は、「水頭症は胎子の成長過程における障害であり、短頭とは直接的な関係がない」というものでした。
今回の調査では、ピークフェイスの3分の1で水頭症が認められ、残りの猫も段階は違えど脳室拡大症が確認されました。また犬においては短頭種で水頭症や脊髄空洞症が多発することが確認されています。さらに人間を対象とした調査では、頭蓋骨癒合症の50%で脳室膨張と水頭症が見られるそうです。こうした事実と照らし合わせると、ペルシャで多発する水頭症と鼻ぺちゃという外見的な特徴が全く無関係であるという説明は、いくらなんでも強引というものでしょう。 以下は、通常の短毛種、ドールフェイス、ピークフェイスの頭蓋骨の形状です。ピークの頭蓋骨が大きく歪められ、頭蓋内の容積が目減りしていることがおわかりいただけると思います。詳細なメカニズムはわからないものの、調査チームは鼻が低くなるにつれて脳頭蓋の横幅が増加し、頭蓋容積が減少して水頭症につながっていると推測しています。また上顎骨の成長不全から歯茎の上方突出が起こり、これが不正咬合(歯並びの悪さ)につながっているとも。 水頭症は先天的な疾患で、多くの場合子猫の頃から発症します。今調査でも4~5週齢の子猫が5頭、絶えず泣きわめくといった神経学的な兆候を示していたため、人道的な観点から安楽死が選択されました。仮に水頭症を免れ子猫時代を生き延びたとしても、拡大した脳室のせいで知覚が鈍麻してしまう可能性を否定できません。ペルシャの飼い主が逸話的に報告している「よくものにぶつかったり高い場所から落ちたりする」とか「他の猫と遊びたがらず飼い主との社会的交流に無関心」といった特徴は、頭蓋骨の狭小化に伴う脳への圧迫が原因になってるのではないかと推測されています。 犬の小型化や短頭化が脊髄空洞症の発症リスクを高めている
今回の調査では、ピークフェイスの3分の1で水頭症が認められ、残りの猫も段階は違えど脳室拡大症が確認されました。また犬においては短頭種で水頭症や脊髄空洞症が多発することが確認されています。さらに人間を対象とした調査では、頭蓋骨癒合症の50%で脳室膨張と水頭症が見られるそうです。こうした事実と照らし合わせると、ペルシャで多発する水頭症と鼻ぺちゃという外見的な特徴が全く無関係であるという説明は、いくらなんでも強引というものでしょう。 以下は、通常の短毛種、ドールフェイス、ピークフェイスの頭蓋骨の形状です。ピークの頭蓋骨が大きく歪められ、頭蓋内の容積が目減りしていることがおわかりいただけると思います。詳細なメカニズムはわからないものの、調査チームは鼻が低くなるにつれて脳頭蓋の横幅が増加し、頭蓋容積が減少して水頭症につながっていると推測しています。また上顎骨の成長不全から歯茎の上方突出が起こり、これが不正咬合(歯並びの悪さ)につながっているとも。 水頭症は先天的な疾患で、多くの場合子猫の頃から発症します。今調査でも4~5週齢の子猫が5頭、絶えず泣きわめくといった神経学的な兆候を示していたため、人道的な観点から安楽死が選択されました。仮に水頭症を免れ子猫時代を生き延びたとしても、拡大した脳室のせいで知覚が鈍麻してしまう可能性を否定できません。ペルシャの飼い主が逸話的に報告している「よくものにぶつかったり高い場所から落ちたりする」とか「他の猫と遊びたがらず飼い主との社会的交流に無関心」といった特徴は、頭蓋骨の狭小化に伴う脳への圧迫が原因になってるのではないかと推測されています。 犬の小型化や短頭化が脊髄空洞症の発症リスクを高めている