基本的な予防法
猫に抜爪術を施す二大目的は「家具へのダメージを防ぐ」と「人や動物への引っかきを防ぐ」というものですが、その両方に共通して有効な予防法をご紹介します。
爪を切る
猫の爪をあらかじめ切っておけば、たとえ家財道具や体が引っかかれても大きな傷が付く事はありません。家族が複数人いる場合は、1人が猫を抑え、もう1人が爪を切るという協力体制を敷くことで比較的簡単に猫の爪を切ることができます。協力者がいない場合は、猫を定期的に動物病院へ連れて行き、そこで切ってもらうというのも手です。通院が猫にとってストレスになる場合は、ペットシッターを自宅に呼んで協力してもらうという選択肢だってあります。要するに、頑張れば猫の爪くらい切れるのです。
そもそも猫を飼わない
猫の指先よりも家財道具の方が大事という人は、猫を家庭内に迎え入れるよりも、猫カフェにでも行ってたまに猫と触れ合っている方が向いています。たとえ抜爪術を施して家財道具への引っかき傷を予防できたとしても、猫を家族の一員として考えていないのであれば、どこかの段階で無責任な放し飼いや飼育放棄の誘惑に負けてしまうことでしょう。
例えば1996年、アメリカ国内で猫を飼育放棄した世帯を対象として行われた調査では、「猫を家族のメンバーとみなしている」と回答した割合に関し、飼育放棄グループが36.7%、非飼育放棄グループが65.3%だったと報告されています(→出典)。
例えば1996年、アメリカ国内で猫を飼育放棄した世帯を対象として行われた調査では、「猫を家族のメンバーとみなしている」と回答した割合に関し、飼育放棄グループが36.7%、非飼育放棄グループが65.3%だったと報告されています(→出典)。
他の家庭に譲り渡す
世の中には、家財道具を傷つけられようが多少ひっかかれようが、猫の指先を切り落とさずに同居できる人がたくさんいます。養子縁組を仲介しているサイトはたくさんありますので、そうした家庭に譲り渡してはいかがでしょうか。
1996年に米国で行われた調査では、家庭内における猫への不適切な期待がなければ、67%もの猫が飼育放棄を免れていたのではないかと推計されています。逆の言い方をすれば、「家具で爪とぎしてほしくない」といった非現実的な期待を猫に対して抱いていることが飼育放棄の原因になっているということです(→出典)。
猫に関する無理解と不適切な期待がある限り、たとえ抜爪術を施したとしても「粗相」や「噛みつき」といった他の問題行動によって飼育放棄の危険性は延々とつきまといます。根本的な解決は猫の指先を切り落とすことではなく、飼い主が猫の生態をしっかりと把握してすべてを「仕方のないこと」として受け入れることです。
1996年に米国で行われた調査では、家庭内における猫への不適切な期待がなければ、67%もの猫が飼育放棄を免れていたのではないかと推計されています。逆の言い方をすれば、「家具で爪とぎしてほしくない」といった非現実的な期待を猫に対して抱いていることが飼育放棄の原因になっているということです(→出典)。
猫に関する無理解と不適切な期待がある限り、たとえ抜爪術を施したとしても「粗相」や「噛みつき」といった他の問題行動によって飼育放棄の危険性は延々とつきまといます。根本的な解決は猫の指先を切り落とすことではなく、飼い主が猫の生態をしっかりと把握してすべてを「仕方のないこと」として受け入れることです。
腱切除術は代わりにならない
抜爪術に代わる手術法として「深指屈筋切除術」を行う獣医師もいます。これは、爪を出すときに用いる深指屈筋腱(しんしくっきんけん)と呼ばれるケーブルを5~10mmほど切り取り、筋肉の収縮力が指先に伝わらないようにして爪を出せなくする手術のことです。ちょうど、滑車のロープを切った状態をイメージすればわかりやすいでしょう。
手術によって猫が爪を自由に出せなくなることは確かですが、抜爪術の場合と同様、爪とぎ行動自体がなくなるわけではありません。また爪母細胞が指先に残っているため、定期的に爪切りをしなければどんどん爪が伸び、しまいには肉球に食い込んでしまいます。指先の怪我を予防するためには爪切りをする必要がありますが、爪を切れるのであれば、そもそも手術を受ける必要はないでしょう。
それ以前に、この手術法には医療的な目的がないため、獣医学校で教えていません。つまり手術を行える獣医師の数自体が極めて少ないのです。2015年にカナダのオンタリオで行われた調査では、407人の回答者のうち49.1%(200名)の獣医師が、屈筋腱切除術を行わない理由として「そもそもやり方を知らない」と回答しています(→出典)。日本での統計はありませんが、恐らくもっと少ないものと推測されます。
それ以前に、この手術法には医療的な目的がないため、獣医学校で教えていません。つまり手術を行える獣医師の数自体が極めて少ないのです。2015年にカナダのオンタリオで行われた調査では、407人の回答者のうち49.1%(200名)の獣医師が、屈筋腱切除術を行わない理由として「そもそもやり方を知らない」と回答しています(→出典)。日本での統計はありませんが、恐らくもっと少ないものと推測されます。
家財道具への引っかきを予防する
抜爪術を施す理由の中で最も多いのが「家財道具へのダメージを防ぐ」というものです。
大事な家財道具を置かない
傷がついて困るような大事な家財道具をそもそも置かなければ問題は解決します。それができないようなら、家財道具がある部屋だけ猫を立ち入り禁止にするという方法もあるでしょう。あるいは家財道具にシールドを設けて引っかき傷を予防することもできます。例えば壁の場合は保護シートを貼るとか、レザーチェアの場合は使っていない時に毛布をかけておくなどです。
しかし何らかの方法で仮に引っかき傷を予防できたとしても、猫のゲロまでは予防できません。結局ベストは「猫と同居するなら家財道具へのダメージをそもそも覚悟しておく」ということになります。
しかし何らかの方法で仮に引っかき傷を予防できたとしても、猫のゲロまでは予防できません。結局ベストは「猫と同居するなら家財道具へのダメージをそもそも覚悟しておく」ということになります。
魅力的な爪とぎを用意する
猫は家財道具をひっかいてしまう大きな理由は、適切な爪とぎが用意されていないことです。魅力的な爪とぎがあるのに、わざわざ引っ掛かりの悪い壁紙やソファを選ぶという事はまずありません。
ネイルキャップを用いる
爪の先にある鋭利な部分をカバーするネイルキャップが市販されています。キャップをかぶせて接着するタイプや、爪に接着剤を塗って固めてしまうというタイプがあります。爪を引っ込めることができなくなるとか、定期的にメンテナンスしないと取れてしまうというデメリットありますが、指先を切り落とされるよりはマシというものです。
人間や動物への引っかきを予防する
猫が人間や同居動物を攻撃するのには理由があります。様々なパターンをあらかじめ知っておき、適切な対策を講じていれば、大抵の場合は予防が可能です。詳しくは以下のページをご参照ください。
なお抜爪術を施す理由として「猫ひっかき病を予防する」ことを挙げる人がいますが、免疫力が弱った患者に症状を引き起こす感染症は猫ひっかき病だけではありません。同居人が外から持ち込む風邪やインフルエンザによって肺炎が誘発される危険性だってあります。もし絶対病気に罹りたくないというのであれば、根本的な解決法は猫の指先を切り落とすことではなく、完全無菌の部屋で孤独に暮らすことです。