海外における抜爪術
ヨーロッパでは「ペット動物の保護に関する欧州協定」(The European Convention for the Protection of Pet Animals)によって犬に対する断尾や断耳、および猫に対する抜爪といった慣習の廃絶が推奨されており、この協定を批准した国の多くでは抜爪術が法的に禁止されています(→出典)。
アメリカでは抜爪術が30億ドル近いビッグビジネスに成長しており、圧力団体が数多く存在していることから、全国一律で禁止するまでには至っていません。その結果、「若いうちに行ったほうが苦痛が小さい」といった理屈を建前に、去勢や避妊手術とパッケージにして割安で抜爪術を宣伝している動物病院すらあります。一方、獣医師によるこうした好き勝手な商売の仕方に対し、「条例」という一回り小さい形で抜爪術を禁じるところが少しずつ増えてきました。例えば以下です(→出典)。
抜爪術禁止・地方条例
- 2002年カリフォルニア州・ ウエストハリウッド市
- 2009年カリフォルニア州7都市=ロサンゼルス、サンフランシスコ、バーバンク、サンタモニカ、バークリィ、ビバリーヒルズ、カールバーシティー
- 2014年ロードアイランド州・家主が賃貸契約者に対し、犬の声帯切除や猫の抜爪術を強制することはできない
日本における抜爪術
日本国内においては現在、抜爪術を禁ずる法律も条例も存在していません。
全国に適用される法律というレベルでは「動物の愛護及び管理に関する法律 」(通称:動物愛護法)が制定されています。例えば以下は動物愛護法の基本原則(第2条)からの引用です。
この「適否について飼育者と十分に協議」という条件と、日本獣医師会の「獣医師の誓い-95年宣言」が掲げる「獣医学の最新の知識の吸収と技術の研鑽、普及に励み、関連科学との交流を推進する」という目標を合わせて考えてみましょう(→出典)。すると、抜爪術を行おうとする獣医師は最新の知識を飼養者に提供し、施術の適否を協議しなければならないとなります。
さて、参考文献・出典一覧でも示したように、当サイト内のコンテンツは1980年代から現在に至るまでのあらゆる資料を網羅した最新の内容になっています。果たして抜爪術を担当する獣医師は、臨床の現場で当サイトと同程度の情報を飼い主に提供してくれるのでしょうか?少なくともネット上では、メリット、デメリット、代替法についてしっかりと説明している動物病院のサイトを見つけることはできませんでした。
もし臨床の現場でも、おざなりな問診だけで十分な情報提供を行わず、抜爪術が指先を切断する手術であるという事実すら明言しないような場合は、「動物愛護・福祉上の問題」を気にかけているとは言えませんし、「獣医学の最新の知識を飼養者に提供」しているとも到底言えません。私だったら、自分の子供とも言える猫をこのような獣医師に預けたりはしないでしょう。
全国に適用される法律というレベルでは「動物の愛護及び管理に関する法律 」(通称:動物愛護法)が制定されています。例えば以下は動物愛護法の基本原則(第2条)からの引用です。
動物が命あるものであることにかんがみ、何人(なんぴと)も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、 人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。このように、漠然と「動物を傷つけてはいけない」としているものの、明示的に抜爪を禁止する条文はどこにも見当たりません。よって、抜爪術を行うかどうかは、「小動物医療の指針・第11項」にのっとり、最終的に担当獣医師と飼い主の判断に任されます(→出典)。下記文章中「爪除去術」が抜爪術のことです。
飼育者の都合等で行われる断尾・断耳等の美容整形、あるいは声帯除去術、爪除去術は動物愛護・福祉の観点から好ましいことではない。したがって、獣医師が飼育者から断尾・断耳等の実施を求められた場合には、動物愛護・福祉上の問題を含め、その適否について飼育者と十分に協議し、安易に行わないことが望ましい。しかし、最終的にそれを実施するか否かは、飼育者と動物の置かれた立場を十分に勘案して判断しなければならない。要するに、飼い主が最終的に「やります!」と判断し、獣医師がその施術の正当性に合意すれば、それを禁止する法もルールもないということです。ただし「適否について飼育者と十分に協議」することが前提条件となります。
この「適否について飼育者と十分に協議」という条件と、日本獣医師会の「獣医師の誓い-95年宣言」が掲げる「獣医学の最新の知識の吸収と技術の研鑽、普及に励み、関連科学との交流を推進する」という目標を合わせて考えてみましょう(→出典)。すると、抜爪術を行おうとする獣医師は最新の知識を飼養者に提供し、施術の適否を協議しなければならないとなります。
さて、参考文献・出典一覧でも示したように、当サイト内のコンテンツは1980年代から現在に至るまでのあらゆる資料を網羅した最新の内容になっています。果たして抜爪術を担当する獣医師は、臨床の現場で当サイトと同程度の情報を飼い主に提供してくれるのでしょうか?少なくともネット上では、メリット、デメリット、代替法についてしっかりと説明している動物病院のサイトを見つけることはできませんでした。
もし臨床の現場でも、おざなりな問診だけで十分な情報提供を行わず、抜爪術が指先を切断する手術であるという事実すら明言しないような場合は、「動物愛護・福祉上の問題」を気にかけているとは言えませんし、「獣医学の最新の知識を飼養者に提供」しているとも到底言えません。私だったら、自分の子供とも言える猫をこのような獣医師に預けたりはしないでしょう。
「どうせ知らないだろう」とたかをくくり、抜爪術を勧めてくる獣医師がいます。一度やってしまうと取り返しが付きませんので、くれぐれも引っかからないようご注意ください。