トップ猫の健康と病気抜爪術の真実抜爪術を受ける前の注意点

抜爪術を受ける前の注意点~知らないと絶対後悔する基礎知識

 これから猫に抜爪術を施そうとお考えの方は、最低限以下のような知識を持っておく必要があります。より詳しい情報は、各項目に貼ってあるリンク先をご参照ください。

抜爪術は爪切りでは無い

 「抜爪」という文字からは、「爪を深めに切って生えてこなくする」という印象を受けますが、実際に行っているのは指先の切断です。神経が通っていない爪を切るのではなく、痛覚が豊富に分布した骨膜、腱、靭帯、皮膚を切り落とすわけですから痛くないわけはありません。 抜爪術の方法・流れ 犬用のギロチン型爪切りによる抜爪の様子

猫だって痛みを感じる

 苦痛を抱えていてもあまり表情や態度を変えないという習性を持っていることから、猫は痛みに鈍感であると思い込んでいる獣医師や飼い主がいます。猫の指先には人間と同じように痛覚が分布していますので、生理学的にも解剖学的にも、猫が痛みを感じにくいとする医学的な根拠はありません。 抜爪術のデメリット 猫は痛みを感じにくいというのは医学的な根拠のない都市伝説

爪とぎ行動自体はなくならない

 抜爪術を施すことによって猫の爪とぎ行動がなくなると思い込んでいる人がいますが、実際にはなくなりません。1987年、ニューヨークにある小動物病院で過去2年間のうちに抜爪術を受けた猫の飼い主を対象とした調査では、手術を受ける前に家財道具を引っかく割合はおよそ56%で、この値は抜爪術を受けた後でもほぼ変わらなかったと報告されています(→出典。この事は、指先を切り落とすことによって「爪をとぐ」という本能に刻まれた行動をしっかりと発現できなくなり、猫がストレスを溜め込んでしまうという可能性を示しています。 抜爪術のデメリット 猫の幸福とストレス

猫に対するメリットは無い

 抜爪術を施すことによって猫の健康が増進したり、猫の福祉が向上するという事はありません。得られるのは「家具へのダメージを防ぐ」とか「引っかき傷を防ぐ」という飼い主の側のメリットだけです。不妊手術を引き合いに出して「同じでしょ?」と反論する人がたまにいますが、不妊手術には「ストレスの軽減」や「生殖器系の疾患予防」といった猫に対するメリットがある点で抜爪術とは決定的に違います。 抜爪術のメリット 猫の去勢と避妊手術

猫のデメリットはたくさんある

 抜爪術を施すことによって猫の健康が悪化したり、猫の福祉が低下したとする研究報告は山ほどあります。爪を生えなくすることで家具へのダメージを予防できたのはいいものの、その代わりにトイレ外での不適切な排泄や噛みつき行動といった他の問題行動が増えてしまっては元も子もありません。 抜爪術のデメリット

予防法はたくさんある

 家財道具へのダメージを防ぐ方法は抜爪術以外にも山ほどあります。これらすべてを試してもうまくいかないという状況はちょっと考えられません。 抜爪術に代わる方法

獣医師の説明はおざなり

 抜爪術を売り上げの大きな柱にしている動物病院があります。そうした動物病院おいては代替案を詳しく説明したり、最新の知見に基づいた副作用の可能性を十分に説明してくれないことがあります。ネットで抜爪術を宣伝している動物病院のホームページを調べてみてください。その情報に出典はありますか?最新ですか?情報量は当サイトと同程度ですか?そもそも情報を提供していますか? 日本における抜爪術

アメリカはお手本にならない

 獣医師の中には「海外(アメリカ)では一般的」という表現を用いて飼い主の良心の呵責を軽減している人がいます。しかし米国の獣医師の中には、「指を切断するわけではない」とあからさまな嘘をついたり、不妊手術と抱き合わせで受けることをわざわざ推奨している人がいます(→出典。20~24%という高い施術率の中には、上記したような悪徳まがいのケースも含まれていますので、そもそも抜爪術に関してアメリカをお手本にしていること自体が奇妙です。 海外における抜爪術

動物虐待とみなされる

 ヨーロッパの多くの国では抜爪術が動物虐待として禁止されています(→出典。また、アメリカ国内においても条例レベルで抜爪術を禁止する地域が徐々に増えつつあります(→出典。重要なのは、「抜爪術=動物虐待」という認識が、今後増える事はあっても減ることはないという点です。5年後、10年後を考えてみましょう。今よりも施術に対して厳しい目を持つ人々が増え、手術を施した猫の写真をネットに出すだけで炎上するようになるでしょう。また「不要な手術だったのではないか?」という疑念が徐々に膨らみ、まるでボディブローのように飼い主の良心を咎めるということも十分に考えられます。 抜爪術に関する法律

猫を飼う時期では無い

 猫の指先よりも大事な家財道具がある時点で、その人は猫を飼育することに向いていないのではないでしょうか。
2008年2月、駅前の厚木サティで母親が1歳10ヶ月の男児を抱いてエスカレーターに乗り、フロアー直前でステップに降ろした時に男児が転倒し指を挟まれ4本を切断した(→出典
 軽く考えている人がいるようですが、抜爪術とは上記したような痛ましい事故を、猫の両手に対して飼い主が意図的に再現することです。麻酔があろうがなかろうが、ペットを家族の一員として考えている人には想像だにできないでしょう。
 抜爪術を施した上でこれから猫を飼おうという方は、「家財道具なんかよりも猫の10本の指の方が大事だ!」と思えるようになったタイミングで飼い始めても、決して遅くはありません。またすでに猫を飼っている方は、抜爪術を施す前に他の飼い主を探すという選択肢を考慮してはいかがでしょう。世の中には、家具がダメになろうが手を引っかかれようが、猫の指先を切り落とすことなく同居できる人はたくさんいます。 抜爪術に代わる方法