抜爪術とは?
抜爪術(ばっそうじゅつ)とは、猫の指先を第一関節から切除する外科手術のことです。「除爪」、「爪切除術」、「爪抜き」、「ディクロー(declaw)」などとも呼ばれます。人間では「小指を詰める」という行為がありますが、これを両手にあるすべての指に対して行った状態をイメージすればわかりやすいでしょう。中には、両手と両足にあるすべての指先を切り落とすという人もいます。英語の「declaw」および日本語の「抜爪」は、施術の残酷性を隠すために用いられている婉曲表現であり、本当は「disarticulation」(関節切断術)および「断指術」と呼ぶのが正解です。
抜爪術がいつ生まれたのかに関してはよくわかっていません。おそらく1950年代、動物園などで展示されている大型ネコ科動物に施されていた手術法に目をつけたラボの研究者たちが、実験用の猫による引っかき傷を予防するために開発したものと推測されています(Misener, 1952)。その後1960年代に入ると「declaw」(抜爪術)という用語が医学誌にちらほら登場するようになり、1970年代に入る頃から欧米を中心として急速に広がっていきました。
この手術は21世紀になった今でも根強く残っており、2001年の報告では全米で年間1,400万頭に対して施されていると推計されています。また2014年にノースカロライナのラレインで行われた局地調査では施術率21%との結果が出ており、年間30億ドル近いビッグビジネスに成長しています。日本での統計はありませんが、インターネットで調べる限り十分な情報を提供しないまま「抜爪」や「爪抜き」を看板に掲げている動物病院はけっこうあるようです。
この手術は21世紀になった今でも根強く残っており、2001年の報告では全米で年間1,400万頭に対して施されていると推計されています。また2014年にノースカロライナのラレインで行われた局地調査では施術率21%との結果が出ており、年間30億ドル近いビッグビジネスに成長しています。日本での統計はありませんが、インターネットで調べる限り十分な情報を提供しないまま「抜爪」や「爪抜き」を看板に掲げている動物病院はけっこうあるようです。
抜爪術の方法
猫の指先を切断する方法には大きく分けて「結紮切除」、「ブレード切除」、「レーザー切除」という3つがあります。ターゲットとなるのは神経の通っていない爪ではなく、痛みを感じる指先の骨(末節骨)です。費用・料金は動物病院によって変動します。また医療目的以外での抜爪には保険も効きません。
結紮切除
結紮(けっさつ, ligation)とは、猫の指先を紐状のもので固く結ぶことによって血流を止め、組織を壊死させて切断する方法のことです。
1973年の論文では、研究者がよりスムーズに動物実験を行うという名目の元、「子猫の指先を除去するシンプルな方法」として紹介されています。この調査では、ペントバルビタールで軽く麻酔をかけた子猫7頭(15~30日齢)と麻酔をかけない子猫7頭(3~30日齢)を対象とし、前後にあるすべての指を結紮するという信じられない実験が行われました。その結果、結紮法では指先が14日程度で簡単かつ安全に切断でき、なおかつ施術後1年経過しても爪が再生することはほとんどなかったと言います。また結紮中に軽く麻酔をかけたグループの方が成功率が高かったとも。
しかしこの方法は指が切断されるまでに時間がかかり、また大変な苦痛を伴うということで、「シンプルな方法」という宣伝文句とは裏腹に全く普及しませんでした。ちなみに上記した非人道的な実験を行ったのは日本人です(→出典)。
1973年の論文では、研究者がよりスムーズに動物実験を行うという名目の元、「子猫の指先を除去するシンプルな方法」として紹介されています。この調査では、ペントバルビタールで軽く麻酔をかけた子猫7頭(15~30日齢)と麻酔をかけない子猫7頭(3~30日齢)を対象とし、前後にあるすべての指を結紮するという信じられない実験が行われました。その結果、結紮法では指先が14日程度で簡単かつ安全に切断でき、なおかつ施術後1年経過しても爪が再生することはほとんどなかったと言います。また結紮中に軽く麻酔をかけたグループの方が成功率が高かったとも。
しかしこの方法は指が切断されるまでに時間がかかり、また大変な苦痛を伴うということで、「シンプルな方法」という宣伝文句とは裏腹に全く普及しませんでした。ちなみに上記した非人道的な実験を行ったのは日本人です(→出典)。
ブレード切除
猫たちに全身麻酔をかけた上で肘から下の辺りに止血帯を巻き、メスやギロチンといった鋭利な刃物(ブレード)で指先を切断するという方法です。
メスによる切除
メスを用いた場合は通常、指先の第一関節をすべて切り落とします。ボーンカッターと呼ばれる、工具のニッパーのような医療器具が用いられることもあります。
ギロチンによる切除
ギロチン(犬用の爪切り)を用いた場合は、指先を繋ぎ止めているケーブル(靭帯)が緩んで瘢痕化するのを防ぐため、指先の骨をあえて少し残し、ケーブルをつなぎとめるための土台にしてしまうことがあります。しかし骨の切端による痛みや爪の再生といった別の問題が生じることもしばしばです。
レーザー切除
レーザーメスを用いて指先を切断するという方法です。切断したそばから傷口を焼き固めていきますので、通常のメスやギロチンに比べて出血が少ないというのが特徴です。しかし代わりに骨や軟部組織に火傷が残るというデメリットもあります。また設備の整っている病院が限られていたり、施術者が短期間の講習やハウツービデオで手術の流れを習っただけということもありえます。
抜爪後の処置
抜爪術の後、患部には外科用接着剤が塗られたり縫合が施されて包帯が巻かれます。しかし周術期の処置に関しては明確に手順が決まっているわけではなく、獣医師によってやり方が違うということがしょっちゅう起こります。また術後の鎮痛や入院期間も獣医師によってまちまちで、人間では全治3ヶ月とされる指先の切断でも、猫の場合はなぜかその日の内に退院させられることがあります。
患部のケアと包帯
抜爪術を施した後、患部に対してどのようなケアを行うかとか、どのように止血を行うかといったことは、獣医師の裁量に任されています。
例えば2015年、カナダ・オンタリオ州獣医学協会に所属している獣医師にアンケート調査を行った所、患部の処置に関して外科用接着剤が82.0%、縫合が13.0%、何もしないが4.9%という内訳になっています。また術後の包帯については必ずするが69.5%、しないが16.5%、必要なときだけが14.0%とばらばらです(→出典)。
例えば2015年、カナダ・オンタリオ州獣医学協会に所属している獣医師にアンケート調査を行った所、患部の処置に関して外科用接着剤が82.0%、縫合が13.0%、何もしないが4.9%という内訳になっています。また術後の包帯については必ずするが69.5%、しないが16.5%、必要なときだけが14.0%とばらばらです(→出典)。
周術期の鎮痛
周術期(手術の前後)の鎮痛ケアに関しても獣医師の裁量に任されているという現実があります。指先を切断するという極めて侵襲性が高い手術であるにも関わらず、なぜか鎮痛薬を一切投与しない獣医師がいるようです。
例えば2006年にカナダで行われた調査では、326人の獣医師のうちおよそ12%がいかなる鎮痛薬も投与していないと報告されています。また抜爪術に限ってみると、術前だけの投与が15.4%、術後だけの投与が4.4%、そして手術の前だろうが後だろうが、鎮痛薬で疼痛管理をしない人の割合が2.6%だったとも(→出典)。
さらに2014年に米国で行われた調査では、72.7%(2,503/3441)の獣医師が「抜爪術を行う」と回答し、周術期に鎮痛薬投与を行うと回答した割合はそのうち77.9%(1,933/2,482)だったとのこと。さらに6.6%は術後に鎮痛薬投与を行わず、1.1%は周術期のどの段階においても全く鎮痛薬を投与しないと報告されています(→出典)。
日本の獣医師も例外ではありません。2005年に行われた調査では、猫の去勢手術に際しては40.5%、避妊手術に際しては32.1%もの獣医師が「鎮痛薬を全く使用しない」と回答しています。また手術時における鎮痛薬投与の指標としては、「自分が受けて痛いと思う手術に使用」が33.8%、「文献的に痛みが強いとされる手術に使用」が21.6%、「その他の指標」が8.3%だったとも。抜爪術に関するデータはありませんが、術後の疼痛管理は獣医師による漠然とした判断に任されているということはお分かりいただけるでしょう(→出典)。
「麻酔を用いない」という極端な獣医師の言い分としては、「薬による副作用の危険性を避けたい」とか「痛みを感じていたほうが安静にしている時間が長くなり、傷口の離開を予防できる」といったものがあります。しかしこうした理由があるからといって、猫が味わう痛みが軽減するわけではもちろんありません。
術後の鎮痛ケアと入院
手術後、どのような鎮痛薬をどのくらいの期間投与するかに関しても獣医師によって大きく異なります。
例えば2015年、カナダ・オンタリオ州獣医学協会に所属する獣医師2,800人にアンケート調査を行った所、術後の鎮痛期間に関し386人が回答し、そもそも与えないが0.3%、周術期のみ与えるが0.8%、術後24時間が1.0%、術後48時間が5.2%、術後3~7日間が84.5%、術後1週間以上が8.3%という内訳になりました。
また鎮痛薬の種類に関しては379人が回答し、NSAIDsの経口投与が88.4%、口腔粘膜吸収型ブプレノルフィンが43%、その他のオピオイドが13.7%、フェンタニールパッチが12.7%、ガバペンチン経口投与が5.0%とこれまたばらばらです。
さらに入院期間に関しては388人が回答し、一泊が44.8%、一泊以上が52.8%、入院なしの日帰りが2.3%となっています(→出典)。
例えば2015年、カナダ・オンタリオ州獣医学協会に所属する獣医師2,800人にアンケート調査を行った所、術後の鎮痛期間に関し386人が回答し、そもそも与えないが0.3%、周術期のみ与えるが0.8%、術後24時間が1.0%、術後48時間が5.2%、術後3~7日間が84.5%、術後1週間以上が8.3%という内訳になりました。
また鎮痛薬の種類に関しては379人が回答し、NSAIDsの経口投与が88.4%、口腔粘膜吸収型ブプレノルフィンが43%、その他のオピオイドが13.7%、フェンタニールパッチが12.7%、ガバペンチン経口投与が5.0%とこれまたばらばらです。
さらに入院期間に関しては388人が回答し、一泊が44.8%、一泊以上が52.8%、入院なしの日帰りが2.3%となっています(→出典)。
要するに手術の方法も術後の疼痛管理も獣医師によってバラバラということです。