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ヒマラヤンに多い病気~原因・遺伝性から検査・治療法まで

 ヒマラヤンがかかりやすい病気を原因、遺伝性、検査法、治療法などに分けて一覧リストでご紹介します。なお出典データには海外のものも含まれているため日本に暮らしている猫には必ずしも当てはまらないことがあります。

尿管結石

 尿管結石とは、腎臓と膀胱とを結ぶ「尿管」と呼ばれる管状の組織内に結石が生じてしまった状態。猫ではシュウ酸カルシウム結石が大半を占めています。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。 腎結石の症状・原因・治療

発症リスク

 2007年4月~2014年3月の期間、麻布大学附属動物病院において尿管結石と診断された猫64例を対象とし、尿管結石の発症リスクを検証しました。その結果、かかりやすさの標準を「1」とした場合、雑種猫のそれが「0.273」と極めて低かったのに対し、ヒマラヤンでは4.477という非常に高い値が確認されたといいます(→詳細)。

下部尿路症候群

 下部尿路症候群(LUTD)とは、膀胱から尿道口をつなぐまでのどこかに結石などを生じてしまう病気。猫ではシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が大半を占めています。診断は尿内の結晶検査やエックス線撮影で下します。治療は結石の除去と食事療法がメインです。 下部尿路症候群の症状・原因・治療

発症リスク

 ミネソタ大学の調査チームが1981年から1997年の期間、ミネソタ尿石センターを受診した尿路疾患を抱えた猫(シュウ酸カルシウム結石7,895頭+ストラバイト結石7,334頭)と北米とカナダの動物病院を受診した尿路疾患を抱えていない猫150,482頭のデータを比較したところ、ヒマラヤンがシュウ酸カルシウム結石を発症する確率は標準の7.9倍、ストラバイト結石を発症する確率は2倍に達することが明らかになったといいます(→出典)。

猫伝染性腹膜炎(FIP)

 猫伝染性腹膜炎(FIP)とは、猫腸コロナウイルスが突然変異を起こして強い病原性を獲得し、腹膜炎を特徴とする激しい症状を引き起こす致死性の高い病気。今現在、病原性の低い「猫腸コロナウイルス」(FECV)と致死性の高い「猫伝染性腹膜炎ウイルス」(FIPV)を事前に見分ける有効な方法は存在していません。ひとたび発症してしまうと効果的な治療法がなく、二次感染を防ぐための抗生物質の投与、免疫力を高めるためのネコインターフェロンの投与、炎症を抑えるための抗炎症薬の投与などで様子を見るというのが基本方針です。猫伝染性腹膜炎の症状・原因・治療

有病率と発症リスク

 1986年12月から2002年12月の16年間、ノースカロライナ州立大学付属の動物病院を受診した11,535頭(純血種2,024頭)の猫を対象とし、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症リスクが検証されました(→出典)。その結果、全体の0.52%に相当する60頭の猫でFIPと診断され、雑種(0.35%)よりも純血種(1.3%)のほうが発症しやすい傾向が確認されたといいます。また品種と発症頻度を統計的に検証したところ、ヒマラヤンの発症頻度が1.1%(4/364)で、雑種より3.2倍も発症しやすいことが明らかになりました。調査チームはFIPの発症メカニズムは多因子的であることを認めつつも、ある特定の品種でかかりやすい傾向がある事実は否定できないとしています。

眼瞼内反症

 眼瞼内反とは、主として下まぶたが眼球の方へ反り返り、被毛が角膜をこすることで炎症や潰瘍などを引き起こしてしまう眼科系の病気。診断は眼球表面の診察やまぶたの内反を視認することで下します。治療法は角膜に接触している被毛の除去や手術によって下瞼の位置をずらす内反矯正手術がメインです。 眼瞼内反症の症状・原因・治療

発症メカニズム

 2009年、イギリスにあるケンブリッジ大学の獣医学チームは2003年から2008年の期間、眼瞼内反症と診断された猫50頭を対象とした後ろ向きの調査を行いました(→出典)。その結果、ペルシャが5頭(10%)、メインクーンが3頭(6%)という高い割合で含まれていたといいます。極端な短頭(鼻ぺちゃ)がまぶたの内反を引き起こし、被毛による眼球表面への擦過傷が増え、違和感を取り除こうと猫が目をこすることでさらに症状が悪化するものと推測されています。ヒマラヤンもペルシャと同様に鼻ぺちゃを特徴としていますので、同じ理由によって眼瞼内反症を発症するリスクが高いものと考えられます。

レーベル先天黒内障

 レーベル先天黒内障とは、眼球に外見的な異常はないのに生まれつき目が見えない眼科系疾患。診断は眼底検査や視力の電気的検査(網膜電図)を通して下します。根本的な治療法はありませんので、猫も飼い主も視力障害と付き合いながら暮らしていくことになります。

疾患遺伝子

 2016年、猫の遺伝子を全て解析するプロジェクト「99 Lives Cat Genome Sequencing Initiative」は、3頭の猫を対象とした全ゲノムシーケンス(WGS)を行い、ペルシャでたびたび報告されているレーベル先天黒内障という眼科系疾患の原因遺伝子特定を試みました(→出典)。その結果、「AIPL1」と呼ばれる遺伝子の変異(c.577C?>?T)が疾患の発症に関わっている可能性が浮上してきたといいます。その後さらに40品種に属する1,700頭の猫を対象として「AIPL1」の変異を調査してみた所、ペルシャの血統が混じった品種でのみ確認され、その保有率は1.15 %であることが明らかになったとのこと。調査チームは具体的な品種名としてペルシャのほか、スコティッシュフォールドセルカークレックスブリティッシュショートヘアエキゾチックショートヘア、そしてヒマラヤンを挙げています。