トップ猫の文化猫の浮世絵美術館国芳以外の浮世絵師猫鼠合戦

猫鼠合戦

 猫の登場する江戸時代の浮世絵作品のうち、猫鼠合戦について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名猫鼠合戦
  • 制作年代1859年(江戸・安政6)
  • 作者月岡芳年
  • 板元遠州屋彦兵衛
猫鼠合戦のサムネイル写真

作品解説

 「猫鼠合戦」(ねこねずみかっせん)は、同名の赤本昔ばなしを題材にしたと思われる中判2丁掛け、計6図の錦絵です。作者は月岡芳年(つきおかよしとし)。なお、赤本昔ばなし版「猫鼠合戦」は国立国会図書館デジタル化資料内で確認することができます。 猫鼠合戦
1図  猫の頭に菓子袋をかぶせ、指をさして笑っているネズミ兵の姿が描かれています。巨大なハリセンのような物を構えて、今にもバシッと猫の頭を引っぱたきそうです。
2図  猫の反撃が描かれています。のぼりには「いわみぎんざん」(石見銀山)と染められていますが、これは当時石見銀山で銀の副産物として取れた「砒石」(ひせき=ヒ素を含んだ石)が、殺鼠剤(さっそざい)の原料として用いられたことを示します。一目散に逃げ出すネズミたちの姿がユーモラスです。
3図  ネズミたちの反撃です。罠として仕掛けたまたたびの匂いにつられた猫たちが、よだれをたらして腰砕けになっています。それを遠巻きに見ながらまたしてもネズミたちが勝ち誇った様子です。
4図  猫が人事不省(じんじふせい)に陥っているのを尻目に、ネズミたちが猫のエサを盗み食いしています。アワビの貝殻は当時、猫のエサ入れとして用いられていました。左端のネズミは、いやしくもおかわりを要求しているようです。
5図  おなかを満たして勢いを得たネズミたちが、張子の犬に乗って攻め入ってきます。多勢に無勢で分の悪い猫たちは、すっころびながらの敗走です。
6図  「さあつかまえたぞ!」としたり顔の猫の後ろでは、ネズミたちが指をさしながら馬鹿にしています。
 なお、猫とネズミを擬人化した同じような趣向の作品としては、芳年と同門の歌川芳艶(うたがわよしつや)の「猫子つみどうけかつせん」が挙げられます。