石灰沈着症の病態と症状
猫の石灰沈着症(calcinosis)とは、本来あるべきでない部位にカルシウムが高密度で沈着してしまう病気のことです。発症部位として一番多い肉球のほか、まれなケースとして頬粘膜、肩甲骨間、顔面などが報告されています。また体内でも血管、肺、消化管粘膜、腎臓に石灰が沈着することが確認されています。
主な症状は限局性の硬い腫瘤で、文献では以下のような特徴が報告されています。
主な症状は限局性の硬い腫瘤で、文献では以下のような特徴が報告されています。
石灰沈着症の主症状
- 肉眼的特徴色は充血で赤味がかっている~多中心性プラークで白味がかっている。形は輪郭のはっきりとした円形が多い。表面は不成形で隆起して硬い。
- 顕微鏡的特徴結合組織の間質で仕切られた複数の断片化した小房から構成される。小房の中心部は明るい赤色で非細胞性の結晶物質が含まれる。小房の周辺部は密度の濃い不規則なミネラルが含まれる。
石灰沈着症の原因
ジストロフィー性
転移性
医原性
特発性
上記したどのパターンにも当てはまらないときは「特発性(とくはつせい)」、すなわち原因不明の石灰沈着症と分類されます。
石灰沈着症の検査・診断
猫の石灰沈着症は症例自体が少ないため明白な診断基準はまだ確立していません。犬における知見を転用しつつ、肉眼所見、顕微鏡所見、病歴、持病などから総合的に判断されます。
石灰沈着症の治療
石灰沈着症の治療には以下のようなものがあります。血中カルシウム濃度を高めるあらゆる病気が基礎疾患になりえますが、過去の文献報告では腎臓病を併発しているケースが圧倒的に多いようです。
基礎疾患の治療
外科切除
肩甲骨の間や脇腹など、外科的にアプローチできると判断される場合は病変部の組織学的な検査を兼ねて切除してしまうことがあります。
よく歩く猫の肉球表面がやや固くなることがありますが、これは石灰沈着ではなく単なる角化です。赤く変色してコブ状に盛り上がっている場合は異常ですので病院を受診してください。