詳細
スコティッシュフォールドは1966年に品種として登録された純血品種の一種。折れ曲がった耳を最大の特徴としています。骨の変形と歩行障害をメインとした疾患が報告され出したのは1971年になってからで、1974年には品種協会大手のGCCFがイングランド国内における繁殖やキャットショーへの出場を禁止しています。また1975年には早くもJackson OFが6頭の猫に関する症例報告を行い、この品種特有の遺伝子疾患に関する懸念を表明しています。日本では「およげ!たいやきくん」が流行していた頃ですので、どれぐらい昔の事なのかはお分かりいただけるでしょう。
以下でご紹介するのは1999年、上記したJacksonの症例報告と、オーストラリア国内にあるスコティッシュフォールドのキャッテリで行われた調査に関する包括的なレポートです。
生後21週齢のときにレントゲン検査を行ったところ、中足骨、中手骨、指骨、尾椎の変形が確認された。とくに尾椎近位は太く可動性が悪かった。
生後6ヶ月齢および11ヶ月齢時のレントゲンでは骨異常が進行しており、関節周辺の骨化、関節腔の狭小化、骨密度の低下が見られた。飼い主の話では「だるまさんがころんだ」のように遊んでいる間に突然動きを止めるという。犬向け変形性関節症薬(ポリ硫酸ペントサンナトリウム)で症状は軽快した。
身体検査では足根中足部および手根中手部に触診可能な腫瘤が確認された。また軽度の両側性膝蓋骨脱臼も確認された。関節液の異常は見られなかったものの、レントゲンで中足骨の形状とサイズの異常、下腿部の軽度変形など骨軟骨形成不全の徴候が見られた。
10ヶ月後、症状の悪化で再受診。飼い主によると、寒い日の朝に痛みが悪化しているようだという。ジャンプもできなくなりウォームアップしても動くのがつらそうとのこと。レントゲンで四肢の硬直など症状の悪化が確認されたため、飼い主の希望で安楽死となった。
レントゲン検査では骨変形は見られなかったものの関節周辺部に骨形成が確認された。ポリ硫酸ペントサンナトリウムでも症状は軽減せず症状はその後1年間継続。後ろ足の爪が異常な伸び方を示した。
検査の結果、立ち耳に異常は見られなかったものの、折れ耳個体では全頭で骨軟骨形成不全の徴候が確認された。最も症状が重かった4歳のメスは、耳の折れ方も極端だった。3頭ではしっぽの硬直化と付け根の拡大が見られた。 Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cat
R Mrlik, GS Allan et al., Aust Vet J Vol 77, No 2, February 1999
ポイント
- 折れ耳同士の交配ではほぼ確実に骨軟骨形成不全の個体が生まれる
- 折れ耳と立ち耳の交配でも、加齢とともに高い確率で骨軟骨形成不全を発症する
- 要するに遺伝型にかかわらず耳が折れている時点で疾患のリスクを抱えているということ
- 品種協会は「折れ耳」という外見自体をスタンダードから取り除くべき
- ブリーダー(ペットショップ)は飼い主に対して筋骨格系の疾患を発症するリスクを告知すべき
症例1:折れ耳メス
初診時は14週齢で1.3kg。その5週後には左後ろ足の荷重不全で再受診。体重は1.8kgに増加していた。飼い主によると朝方の症状がとりわけひどいとのこと。検査では下腿(膝から下)が短く形もおかしかった。また爪の異常なカーブも見られた。生後21週齢のときにレントゲン検査を行ったところ、中足骨、中手骨、指骨、尾椎の変形が確認された。とくに尾椎近位は太く可動性が悪かった。
生後6ヶ月齢および11ヶ月齢時のレントゲンでは骨異常が進行しており、関節周辺の骨化、関節腔の狭小化、骨密度の低下が見られた。飼い主の話では「だるまさんがころんだ」のように遊んでいる間に突然動きを止めるという。犬向け変形性関節症薬(ポリ硫酸ペントサンナトリウム)で症状は軽快した。
症例2:折れ耳オス
初診は6ヶ月齢のとき。3週間前から現れた歩行異常を主訴として受診した。背中には不自然なアーチが保たれており、歩き方はぎこちなくまるで竹馬に乗っているようだった。足根部には触診可能な腫れが両側性で見られた。飼い主の希望により最終的には安楽死となった。
症例3:折れ耳オス
3週間前から現れた右前足の荷重不全を主訴として16ヶ月齢のときに初診。このときの体重は4kg。触診で痛みの徴候を示し、レントゲン検査でも骨軟骨異形成の兆候が確認された。具体的には中手骨の変形、中足骨と関節周辺の骨形成など。ポリ硫酸ペントサンナトリウムで症状は軽快した。不慮の事故で死亡した後解剖に回され、四肢の短縮化が見られた。
症例4:折れ耳オス
足の引きずりを主訴として11ヶ月齢のときに初診。その3ヶ月前、8ヶ月齢で不妊手術を受けたときに異常は見られなかったという。飼い主によると、高い場所からジャンプするのを拒むようになったとのこと。身体検査では足根中足部および手根中手部に触診可能な腫瘤が確認された。また軽度の両側性膝蓋骨脱臼も確認された。関節液の異常は見られなかったものの、レントゲンで中足骨の形状とサイズの異常、下腿部の軽度変形など骨軟骨形成不全の徴候が見られた。
10ヶ月後、症状の悪化で再受診。飼い主によると、寒い日の朝に痛みが悪化しているようだという。ジャンプもできなくなりウォームアップしても動くのがつらそうとのこと。レントゲンで四肢の硬直など症状の悪化が確認されたため、飼い主の希望で安楽死となった。
症例5:折れ耳メス
数日前から始まった右前足の荷重不全を主訴として1歳のときに初診。触診で痛みの兆候が見られ、レントゲン検査では中手骨の短縮化と弯曲など骨軟骨形成不全の所見が確認された。
症例6:折れ耳オス
歩行障害を主訴として6歳のときに初診。しっぽの動きが硬く、指が不自然に広がっていた。抱き上げると尻込みして鳴き声を上げるという。レントゲン検査では骨変形は見られなかったものの関節周辺部に骨形成が確認された。ポリ硫酸ペントサンナトリウムでも症状は軽減せず症状はその後1年間継続。後ろ足の爪が異常な伸び方を示した。
キャッテリの症例
オーストラリア国内にあるスコティッシュフォールドの商業キャッテリで、症状を示していない5頭のレントゲン検査を行った。5頭のうち4頭は折れ耳(メス4歳 | メス5歳 | メス11歳 | オス15ヶ月齢)、1頭は立ち耳(オス9歳)。検査の結果、立ち耳に異常は見られなかったものの、折れ耳個体では全頭で骨軟骨形成不全の徴候が確認された。最も症状が重かった4歳のメスは、耳の折れ方も極端だった。3頭ではしっぽの硬直化と付け根の拡大が見られた。 Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cat
R Mrlik, GS Allan et al., Aust Vet J Vol 77, No 2, February 1999
解説
Jacksonの症例1~5およびキャッテリ由来の4頭はすべて「折れ耳×立ち耳」の交配から生まれた猫でした。立ち耳の交配相手はスコティッシュショートヘア(立ち耳のスコ)7頭、ブリティッシュショートヘア1頭という内訳です。耳折れ個体に関しては6ケースがメス、残り3ケースがオスでした。一部では血縁関係が認められましたが、まったく関係のない猫も含まれています。
症状が発現する年齢や進行の度合いは個体によってバラバラでしたが、共通して見られた臨床所見をまとめると以下のようになります。
こうした事実から筆者は、ブリーダーは飼い主に対して筋骨格系の疾患を発症する可能性を告知すべきであると強く主張しています。また折れ耳自体を品種のスタンダードから取り除き、スコティッシュショートヘア(立ち耳)を標準とすべきとも。品種協会がこの英断を下せば、数世代でスコティッシュフォールドが抱えている遺伝的な問題も解決に向かうだろうとしています。
スコティッシュフォールドの人気が高い日本においては、2017年の人気ランキング2位で14.4%とされています(アイペット調べ)。折れ耳同士の繁殖は禁忌ですので、理屈の上では「折れ耳×立ち耳」の繁殖が行われているはずです。結果として、生まれてきた猫たちのおよそ半分は立ち耳です。さて、市場価値が低いとされるこれらの「立ち耳」猫たちにはすべて購入者が見つかっているのでしょうか?高い確率で折れ耳を生むため、折れ耳同士の交配を行ってるブリーダーは一人もいないのでしょうか??
症状が発現する年齢や進行の度合いは個体によってバラバラでしたが、共通して見られた臨床所見をまとめると以下のようになります。
四肢の短足化
- 指骨間関節は歪んで亜脱臼状態
- 下腿(膝から下)や前腕(肘から下)の関節軟骨は変性
- 軟骨のリモデリングが遅延/軟骨芽細胞は未成熟
強直性関節症
- 四肢の短足化が起こったケースで進行が早い
- 下肢のほうが早く現れる
- 近位中足骨で早い
- 足根骨で形成された新しい骨と癒合する
- 加齢とともに悪化する(進行性)
- 足根中足関節近辺を覆うように癒合が進み、やがて硬直化
- 関節の隙間はバラバラで不鮮明
- 関節の隙間は時間と共に狭小化していく
- やがて前肢にも同様の変化が起こる
- 四肢近位骨、長骨、脊椎の変化は尾椎を除いて顕著ではない
こうした事実から筆者は、ブリーダーは飼い主に対して筋骨格系の疾患を発症する可能性を告知すべきであると強く主張しています。また折れ耳自体を品種のスタンダードから取り除き、スコティッシュショートヘア(立ち耳)を標準とすべきとも。品種協会がこの英断を下せば、数世代でスコティッシュフォールドが抱えている遺伝的な問題も解決に向かうだろうとしています。
スコティッシュフォールドの人気が高い日本においては、2017年の人気ランキング2位で14.4%とされています(アイペット調べ)。折れ耳同士の繁殖は禁忌ですので、理屈の上では「折れ耳×立ち耳」の繁殖が行われているはずです。結果として、生まれてきた猫たちのおよそ半分は立ち耳です。さて、市場価値が低いとされるこれらの「立ち耳」猫たちにはすべて購入者が見つかっているのでしょうか?高い確率で折れ耳を生むため、折れ耳同士の交配を行ってるブリーダーは一人もいないのでしょうか??
【 遺伝病撲滅にご協力ください 】
スコティッシュフォールドは人間の金儲けのために骨軟骨異形成という疾患を背負わされた品種です。この事実は多くの飼い主が知りません。なぜならブリーダーやペットショップ自体がこの事実を知らなかったり、知っていても飼い主(購入者)に積極的に教えようとしないからです。 当サイト内では、スコティッシュフォールドに関して報告されている様々な健康上の問題を日本語でご紹介していきます。目的は、この品種が置かれている苦境を一般の飼い主に広く知ってもらうことです。そして金儲けのことしか頭にない質の悪いブリーダーやペットショップが「そんなこと知らなかった」という言い訳ができないようにすることです。
運良くこのページにたどり着いた方は、なるべく多くの方にこうした事実を教えてあげてください。
スコティッシュフォールドは人間の金儲けのために骨軟骨異形成という疾患を背負わされた品種です。この事実は多くの飼い主が知りません。なぜならブリーダーやペットショップ自体がこの事実を知らなかったり、知っていても飼い主(購入者)に積極的に教えようとしないからです。 当サイト内では、スコティッシュフォールドに関して報告されている様々な健康上の問題を日本語でご紹介していきます。目的は、この品種が置かれている苦境を一般の飼い主に広く知ってもらうことです。そして金儲けのことしか頭にない質の悪いブリーダーやペットショップが「そんなこと知らなかった」という言い訳ができないようにすることです。
運良くこのページにたどり着いた方は、なるべく多くの方にこうした事実を教えてあげてください。
- 品種の歴史スコティッシュフォールドは前方に折れ曲がった小さな耳を特徴とする猫の一種。1960年の初頭、スコットランドの農場で偶然発見された「スージー」という名のメス猫が持っていた突然変異遺伝子を固定し、強引に作られた品種です。
- 耳折れ遺伝子2016年、アメリカ・ミズーリ大学の遺伝学チームが行った調査により、スコティッシュフォールドの耳折れと関節の障害を同時に生み出していると考えられる原因遺伝子が特定されました。
- 遺伝好発疾患スコティッシュフォールドはたった1頭に生じた突然変異を固定して作り出された品種です。遺伝子プールを広げるためさまざまな種類の血統が用いられてきましたが、それでも品種特有の疾患があります。
- 折れ耳と関節疾患折れ耳同士のスコティッシュフォールドを交配させることは禁忌とされています。しかし「折れ耳×立ち耳」のような交配で健康優良児が生まれるかというと、そういうわけではありません。このことは40年以上前から警告されています。このページを冒頭からお読みください。
- 骨瘤の治療スコティッシュフォールドに多い骨瘤は一度発症すると治療法がありません。副作用のある鎮痛薬を一生飲み続けるか、全身麻酔を伴う放射線治療を6回に分けて受ける必要があります。それすらできない場合、痛みを抱えながら「スコ座り」をして生きていかなければなりません。
- 繁殖への非難猫の福祉向上に勤める国際的なチャリティ団体「International Cat Care」(ICC)は、耳が折れたスコティッシュフォールドを繁殖することの非倫理性を改めて強調しました。
- 猫好きの進むべき道これから猫好きたちが目指すべきゴールは、拝金主義のブリーダーやペットショップを駆逐し、スコティッシュフォールドを遺伝病から開放してあげることです。