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ICCが無料公開している月刊小冊子「Intelligent Cat Care」の2017年1月号の中で、「可愛いがゆえに苦しみを強いられて」と題された記事が掲載されました。この記事の中では、スコティッシュフォールドを遺伝学的に研究しているオーストラリアの獣医学者リチャード・マリク氏の発言が取り上げられています。内容を要約すると以下です。
スコティッシュフォールドの耳折れが作り出す丸っこい外観には、コンラート・ローレンツが提唱した「ベビースキーマ」が含まれており、人々に可愛さを感じさせる。これはフクロウを可愛いと感じるのと同じ原理である。
イギリスでは1970年代、遺伝学者オリファント・ジャクソンがスコティッシュフォールドのレントゲン撮影を行い、耳の折れた個体は関節に疾患を抱えやすいとの報告をした。これを機に、イギリスおよびフランス国内では品種の繁殖自体が禁止された。一方、スコティッシュフォールドを輸入した国においてはこうした禁止が行われておらず、アメリカ、アジア、オーストラリアなどではいまだに繁殖が繰り返されている。
1990年代になってからはオーストラリアの獣医師達が調査を行い、スコティッシュフォールドは四肢の先端に異常をきたしやすく、特に手首や足首に若年性骨関節炎を発症しやすいということを例示した。また2016年には耳折れを作り出している遺伝子候補を特定し、これが人間の関節疾患を生み出しているものと同じであることを示した。にもかかわらず、ブリーダーたちはこうした忠告を一切無視していまだに繁殖を続けている。
マリク氏は勇気を持って以下のような発言をし、ブリーダーたちを厳しく糾弾しています。またこの記事を掲載することによりICCもマリク氏と同意見であるという立場を明確化しました。
スコ繁殖の非倫理性
- スコティッシュフォールドの繁殖は倫理的に容認できない
- この品種を繁殖することは残酷で虐待である
- ブリーダーたちは猫を繁殖しているのではなく、病気を固定化しているのだ
- 動物虐待防止協会は、この品種を販売している人間を告発するべきだ
解説
日本国内で「スコティッシュフォールド」と検索をかけると、トップのウィキペディアに続き、遺伝病のことなどおくびにも出していない猫の販売サイトが上位表示されてしまいます。また、安易に視聴率を稼ごうとするテレビ局と自称猫好きの芸能人が、軽薄な動物番組を通じてバンバンとこの品種を宣伝しています。どうやら日本においては、もはやスコティッシュフォールドが一大ビジネスになってしまっているようです。嘘か本当かはわからないものの、この品種の病気の事を声高に叫んだら剃刀が送られてきたという逸話も存在しています(→出典)。
丸っこい顔や丸っこい手足に可愛いと感じるのは本能的なものです。しかしその可愛さを作り出しているのが病気だとわかったら、もはや同じ目で見ることはできなくなるでしょう。剃刀が送られてくるかもしれませんが、スコティッシュフォールドを含めた猫の手をフィーチャーし、「クリームパンみたいで可愛い」といった売り方をしている写真集を見ると、激しい不安を覚えます。
猫の福祉を最優先に考えて繁殖を行うブリーダーのことを「シリアスブリーダー」と言いますが、猫のことを真剣に考えているならば当然、この品種が持つ負の側面のことも知っているはずです。にもかかわらず「高く売れるから」という理由で耳折れ個体の繁殖を続けているのだとすると、もうその時点でシリアスでもなんでもありません。ペットショップで猫を買おうとしている方はこのページを読んで熟考する事をお勧めします。