詳細
調査を行ったのは、オーストラリア・クイーンズランド大学の獣医科学チーム。2001~2013年の期間、ブリスベーンにある動物行動クリニックを訪問した合計1,556頭のデータを元に、猫で多く報告される問題行動と、年齢や性別といった猫の特性との関連性が統計的に精査されました。その結果、以下のような事実が浮かび上がってきたと言います。
Agnes A. Wassink-van der Schot et al., Journal of Veterinary Behavior: Clinical Applications and Research, July-August, 2016 Volume 14, Pages 34-40
猫の特性と問題行動
- 問題行動の71%は不適切な排泄(特におしっこ)と攻撃行動(特に同居人への)で占められていた
- ペルシャ系統の猫は同居猫への攻撃リスクが低いが、不適切な排泄のリスクが高い
- ペルシャ、シャム、バーミーズ系統の猫は、その他の猫よりも問題行動を示す割合が高い
- 老猫は親しい人間を許容しやすいが、他の猫に対する拒絶感が強い
- オス猫は過剰な無駄鳴きと不適切な排泄(特におしっこ)のリスクが高いが同居猫とのいがみあいリスクは低い
- 不安や恐怖行動は、飼い主の社会経済的ステータスと連動していた
Agnes A. Wassink-van der Schot et al., Journal of Veterinary Behavior: Clinical Applications and Research, July-August, 2016 Volume 14, Pages 34-40
解説
確認された問題行動を多い順に並べると以下のようになります。排泄に関するものが38%、攻撃性に関するものが33%と大部分を占める結果となりました。オーストラリアは日本に比べて放し飼いの割合が高いため、このデータをそっくりそのまま日本に当てはめることはできませんが、参考にはなるでしょう。
ペルシャ系では「同居猫への攻撃リスクが低いが、不適切な排泄のリスクが高い」という傾向が見出されたことは先述した通りです。一方シャム系では、その他の猫に比べて「不適切なおしっこ」の割合が多かったといいます。またバーミーズ系では「人に対する攻撃性が低い反面、異食症や病的な毛づくろいが多い」という傾向が見出されたとのこと。 1歳未満の子猫と比較した時、1~9歳の成猫は見知らぬ猫に対する攻撃性が強かったといいます。また2~9歳の猫では、同居猫に対しても攻撃的だったとも。一方、猫が9歳以上の老境に差し掛かると、異食症や病的な毛づくろいが減る反面、過剰な無駄鳴きが増える傾向にあったそうです。 不妊手術の有無にかかわらず、オス猫よりもメス猫の方が過剰な毛づくろいや自傷行動に走る傾向が強かったといいます。一方、過剰な無駄鳴きと不適切なおしっこに関してはオス猫の方が上でした。 不安と恐怖行動に関しては、飼い主の社会経済的ステータスが高めの地域において多く観察されました。この理由は、経済的に余裕がある人の方が猫に対する期待が高く、クリニックを訪問する確率が高いからだと推測されています。その一方、飼い主の労働スタイルと問題行動との間に明白な関連性は見い出されませんでした。 2000年に行われた調査によると、猫の飼育放棄理由のうち「問題行動」は28%と2番目に多く、特に不適切な排泄、他のペットとの相性、各種の攻撃行動、破壊行動、咬傷、不服従、恐怖行動、過剰な活動性、過剰に関心を求める行動などが多かったと言います(→出典)。また1995~1996年の期間、アメリカ国内6つの州における1,361件の飼育放棄ケースを調査した所、人への攻撃が5%、他のペットへの攻撃が6%という高い割合を占めていたとも(→出典)。数ある問題行動のうち、猫にだけ影響が及ぶもの(例:過剰な毛づくろい)よりも、飼い主に対しても影響を及ぼすもの(例:カーペットでのおしっこ)の方が深刻視されると言いますので(→出典)、今回の調査で多く報告された「不適切な排泄」と「攻撃行動」は、猫の飼育放棄を食い止める上で何としても解決しておきたい問題行動と言えるでしょう。
猫に多い問題行動
- 不適切なおしっこ=25%
- 同居人への攻撃=13%
- 同居猫への攻撃=8%
- 不安や恐怖行動=8%
- 過剰な無駄鳴き=6%
- 不適切な糞尿=6%
ペルシャ系では「同居猫への攻撃リスクが低いが、不適切な排泄のリスクが高い」という傾向が見出されたことは先述した通りです。一方シャム系では、その他の猫に比べて「不適切なおしっこ」の割合が多かったといいます。またバーミーズ系では「人に対する攻撃性が低い反面、異食症や病的な毛づくろいが多い」という傾向が見出されたとのこと。 1歳未満の子猫と比較した時、1~9歳の成猫は見知らぬ猫に対する攻撃性が強かったといいます。また2~9歳の猫では、同居猫に対しても攻撃的だったとも。一方、猫が9歳以上の老境に差し掛かると、異食症や病的な毛づくろいが減る反面、過剰な無駄鳴きが増える傾向にあったそうです。 不妊手術の有無にかかわらず、オス猫よりもメス猫の方が過剰な毛づくろいや自傷行動に走る傾向が強かったといいます。一方、過剰な無駄鳴きと不適切なおしっこに関してはオス猫の方が上でした。 不安と恐怖行動に関しては、飼い主の社会経済的ステータスが高めの地域において多く観察されました。この理由は、経済的に余裕がある人の方が猫に対する期待が高く、クリニックを訪問する確率が高いからだと推測されています。その一方、飼い主の労働スタイルと問題行動との間に明白な関連性は見い出されませんでした。 2000年に行われた調査によると、猫の飼育放棄理由のうち「問題行動」は28%と2番目に多く、特に不適切な排泄、他のペットとの相性、各種の攻撃行動、破壊行動、咬傷、不服従、恐怖行動、過剰な活動性、過剰に関心を求める行動などが多かったと言います(→出典)。また1995~1996年の期間、アメリカ国内6つの州における1,361件の飼育放棄ケースを調査した所、人への攻撃が5%、他のペットへの攻撃が6%という高い割合を占めていたとも(→出典)。数ある問題行動のうち、猫にだけ影響が及ぶもの(例:過剰な毛づくろい)よりも、飼い主に対しても影響を及ぼすもの(例:カーペットでのおしっこ)の方が深刻視されると言いますので(→出典)、今回の調査で多く報告された「不適切な排泄」と「攻撃行動」は、猫の飼育放棄を食い止める上で何としても解決しておきたい問題行動と言えるでしょう。