作品の基本情報
作品解説
「鼠よけの猫」(ねずみよけのねこ)は、家からネズミを追い出すためのお守り的な意味を持つ作品です。江戸時代にはネズミをペットとして飼うことが一部で流行し、「養鼠玉のかけはし」(国立国会図書館・江戸時代の博物誌より)などネズミの飼い方を指南(しなん)するハウツー本まであったようです。
これを家内に張おく時には鼠もこれをみれば
おのずとおそれをなし次第にすくなくなりて出る事なし
たとへ出るともいたずらをけっしてせず誠に妙なる図なり
福川堂記 とあります。「これは猫の絵に関しては他の追随を許さない国芳の絵だ。これを家の中に張っておけば鼠も出てくることはない。たとえ出てきたとしても、妙ないたずらをすることはない。とても秀逸な絵だ。」と語っています。「福川堂」とは、実は版元である川口屋宇兵衛のことで、彼が国芳にこれを描かせたことがうかがえます。
ネズミの飼育ハウツー本
しかしペットとして飼われるネズミがいる一方、蓄えてある米や穀物を食い荒らす害獣(がいじゅう)としてのネズミも当然いたわけで、こうしたネズミを追い払うための一種のまじないとして、「鼠よけの猫」を家に貼る人がいました。「鼠よけの猫」の絵はそもそも富山の薬売りがお得意さんへのおまけとして配る「売薬版画」(ばいやくはんが,富山絵ともいう)の一種として流行したものです。
江戸後期の売薬版画
ただ、江戸後期に流行したこの版画は、主として富山の版元によって富山内で摺られていたものですから、江戸で作成された国芳の当作品は、単なる薬のおまけとして富山で作られたわけではないようです。作品上部の文章は
此図は猫の絵に妙を得し一勇斎の写真の図にしてこれを家内に張おく時には鼠もこれをみれば
おのずとおそれをなし次第にすくなくなりて出る事なし
たとへ出るともいたずらをけっしてせず誠に妙なる図なり
福川堂記 とあります。「これは猫の絵に関しては他の追随を許さない国芳の絵だ。これを家の中に張っておけば鼠も出てくることはない。たとえ出てきたとしても、妙ないたずらをすることはない。とても秀逸な絵だ。」と語っています。「福川堂」とは、実は版元である川口屋宇兵衛のことで、彼が国芳にこれを描かせたことがうかがえます。