作品の基本情報
作品解説
「猫のおどり」は3匹の猫が踊っている姿を描いたうちわ絵です。同じく国芳作の錦絵「舞奏いろの種蒔」(まうておりそえいろのたねまき)と多くの共通点が見られることから、これが元になった絵ではないかと推察されます。
国芳作の錦絵「舞奏いろの種蒔」
さて元絵と思(おぼ)しき「舞奏いろの種蒔」ですが、右から順に「二代目・市川九蔵」・「四代目・中村歌右衛門」・「十二代目・市村羽左衛門」と並び、場面は大黒舞(だいこくまい)へと転じたところが描かれています。大黒舞とは大黒天の姿を模して面や頭巾をかぶり、三味線や太鼓に合わせて歌い踊る芸です。
大黒舞(だいこくまい)
猫の持っている扇には文字と不思議な絵が混在していますが、これは「判じ物」(はんじもの)と呼ばれるものです。「判じ物」とは絵の中に言葉を隠した一種のなぞなぞであり、この作品の中で国芳が仕掛けたなぞは以下です。
「猫のおどり」に見られる判じ物・拡大図
- 矢の絵→や
- 魚の絵→とと(魚のことを”とと”と言う)
- 臼と杵の絵→つく(もちを”つく”から)
- 砥石(といし)の絵→と
- 戸をノックする絵→とん(”トン”と叩く音から)
- 「く」の字に見えるのは通称「踊り字」で”直前を繰り返す”の意