トップ猫の文化猫の浮世絵美術館歌川国芳展猫のおどり

猫のおどり

 江戸時代に活躍した浮世絵師・歌川国芳の残した猫の登場する作品のうち、猫のおどりについて写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名猫のおどり
  • 制作年代1841年(江戸・天保12)
  • 落款朝桜楼国芳画
  • 板元印なし
猫のおどりのサムネイル写真

作品解説

 「猫のおどり」は3匹の猫が踊っている姿を描いたうちわ絵です。同じく国芳作の錦絵「舞奏いろの種蒔」(まうておりそえいろのたねまき)と多くの共通点が見られることから、これが元になった絵ではないかと推察されます。
国芳作の錦絵「舞奏いろの種蒔」
国芳作の錦絵「舞奏いろの種蒔」(まうておりそえいろのたねまき)  さて元絵と思(おぼ)しき「舞奏いろの種蒔」ですが、右から順に「二代目・市川九蔵」・「四代目・中村歌右衛門」・「十二代目・市村羽左衛門」と並び、場面は大黒舞(だいこくまい)へと転じたところが描かれています。大黒舞とは大黒天の姿を模して面や頭巾をかぶり、三味線や太鼓に合わせて歌い踊る芸です。
大黒舞(だいこくまい)
 以下でご紹介するのは伝統芸能「大黒舞」の映像です。扇と小槌をもって大黒天に扮し、太鼓と笛に合わせて踊っています。国芳の頭の中では大黒舞を踊る猫たちの姿が躍動していたのでしょうか? 元動画は→こちら
 猫の持っている扇には文字と不思議な絵が混在していますが、これは「判じ物」(はんじもの)と呼ばれるものです。「判じ物」とは絵の中に言葉を隠した一種のなぞなぞであり、この作品の中で国芳が仕掛けたなぞは以下です。
「猫のおどり」に見られる判じ物・拡大図
「猫のおどり」に見られる判じ物・拡大図
  • 矢の絵→や
  • 魚の絵→とと(魚のことを”とと”と言う)
  • 臼と杵の絵→つく(もちを”つく”から)
  • 砥石(といし)の絵→と
  • 戸をノックする絵→とん(”トン”と叩く音から)
  • 「く」の字に見えるのは通称「踊り字」で”直前を繰り返す”の意
 まとめると「やととんとろつく やととんやととん」となります。「やととんとろつく」とは曲中の囃子詞(はやしことば)で、当時は曲の俗称としても使われたとか。