猫カフェの病原体 in タイ
調査対象
調査対象となったのはタイの首都圏で営業している猫カフェ11店舗(バンコク5 | パトゥムターニー2 | ナコーンパトム4)。2017年8月から2018年3月の期間、内部寄生虫(線虫・条虫・吸虫・虫卵・シスト・オーシスト)を調べるため合計268の便サンプルを2日かけて採取、歯ブラシ状の専用器具を用いて198の被毛サンプルを採取しました。
調査結果
便サンプルを遠心分離で調べた結果、11店舗中2店舗で内部寄生虫の陽性反応が出ました。1店舗では4頭からToxocara(回虫)、Ancylostoma(鉤虫)、Physaloptera(旋尾回虫)、もう1店舗では1頭からEucoleus aerophilus(線虫)が検出されました。なおこれら2店舗はどちらも猫の屋外アクセスを許容していました。
被毛サンプルを調べた結果、11店舗中4店舗で白癬菌の陽性反応が確認され、全体では16.2%(32/198)でした。検出されたのはすべてイヌ小胞子虫で、保菌しているにも関わらず症状が見られなかった無症候性の割合が81.3%(26/32)に達し、統計的には皮膚病変(痂皮・ふけ・紅斑・部分脱毛)が見られる場合のオッズ比が3.25、猫の来歴が繁殖施設である場合のそれが18と算出されました。また陽性猫のいる店舗スタッフの1人で白癬症が確認されました。 Zoonotic Enteric Nematodes and Dermatophytes in Cat Cafes: An Investigation in the Bangkok Metropolitan Area, Thailand
Phakjira Sanguansook, Siwaporn Tuangpermsub, et al., Vet. Sci. 2024, 11(8), 358; DOI:10.3390/vetsci11080358
被毛サンプルを調べた結果、11店舗中4店舗で白癬菌の陽性反応が確認され、全体では16.2%(32/198)でした。検出されたのはすべてイヌ小胞子虫で、保菌しているにも関わらず症状が見られなかった無症候性の割合が81.3%(26/32)に達し、統計的には皮膚病変(痂皮・ふけ・紅斑・部分脱毛)が見られる場合のオッズ比が3.25、猫の来歴が繁殖施設である場合のそれが18と算出されました。また陽性猫のいる店舗スタッフの1人で白癬症が確認されました。 Zoonotic Enteric Nematodes and Dermatophytes in Cat Cafes: An Investigation in the Bangkok Metropolitan Area, Thailand
Phakjira Sanguansook, Siwaporn Tuangpermsub, et al., Vet. Sci. 2024, 11(8), 358; DOI:10.3390/vetsci11080358
猫スタッフを病気から守る
寄生虫にしても白癬菌にしても、人と動物両方に感染する人獣共通性をもっています。店内から病原体を駆逐することは人と動物双方の健康を守る上で重要です。
内部寄生虫予防
寄生虫卵が確認された2店舗はどちらも猫スタッフの屋外アクセスを許可していました。状況が不確かですが、おそらく屋外の一部に囲いのようなものを作り、ガーデンスタイルカフェもしくは「キャティオ(Catio)」のような形式で自由行動させていたものと推測されます。虫卵は汚染された土壌を経由して経口的に体内に入りますので、猫たちを屋外に出していた店で陽性反応が出たのは自明です。
一方、完全店内飼養の猫たちに感染リスクがないわけではありません。先行調査ではたとえ猫が屋外に出なくても、人間の靴裏に付着した虫卵が屋内に入り込む危険性が示されています。猫が玄関を行き来できるレイアウトだと、「屋外の虫卵→客の靴裏に付着→来店→脱着時に玄関に散乱→猫の足に付着→グルーミング時に体内に取り込む」というルートを通じて感染してしまう可能性を否定できません。 感染予防法としてはまず当然ながら猫を屋外に出さないこと、さらに猫が玄関にアクセスできないようにすることが重要です。また玄関に虫卵が持ち込まれたことを想定し、こまめに清掃を行うこと、猫の駆虫を定期的に行うことなども有効でしょう。「人→猫」だけでなく「猫→人」という方向での水平感染も確認されていますので、人と猫双方の健康を保つ上でも予防措置は必須となります。 驚くべきことに、動物取扱業「展示」登録をしているにも関わらず猫を屋外に出している猫カフェが日本国内にあります。また展示登録すらせず「看板猫」と称して逸走予防もせず違法営業している旅館なども散見されます。こうした店舗では猫の健康も客の健康もないがしろにしていますので、「猫好きにはたまらない」などという安易なポジティブレビューは控えましょう。カーペットや布団に寄生虫卵が付着しているかもしれません。
一方、完全店内飼養の猫たちに感染リスクがないわけではありません。先行調査ではたとえ猫が屋外に出なくても、人間の靴裏に付着した虫卵が屋内に入り込む危険性が示されています。猫が玄関を行き来できるレイアウトだと、「屋外の虫卵→客の靴裏に付着→来店→脱着時に玄関に散乱→猫の足に付着→グルーミング時に体内に取り込む」というルートを通じて感染してしまう可能性を否定できません。 感染予防法としてはまず当然ながら猫を屋外に出さないこと、さらに猫が玄関にアクセスできないようにすることが重要です。また玄関に虫卵が持ち込まれたことを想定し、こまめに清掃を行うこと、猫の駆虫を定期的に行うことなども有効でしょう。「人→猫」だけでなく「猫→人」という方向での水平感染も確認されていますので、人と猫双方の健康を保つ上でも予防措置は必須となります。 驚くべきことに、動物取扱業「展示」登録をしているにも関わらず猫を屋外に出している猫カフェが日本国内にあります。また展示登録すらせず「看板猫」と称して逸走予防もせず違法営業している旅館なども散見されます。こうした店舗では猫の健康も客の健康もないがしろにしていますので、「猫好きにはたまらない」などという安易なポジティブレビューは控えましょう。カーペットや布団に寄生虫卵が付着しているかもしれません。
白癬菌予防
白癬菌の陽性率に関して行われた先行調査では、バンコク(2009~2010)で動物病院を受診した猫および繁殖施設の猫が28.2%(24/85)、チェンマイ(2021)が20.3%(28/138)だったと報告されています。また世界的に見ても繁殖施設内で飼養されている商業用の猫における高い陽性率が報告されています。
当調査でも繁殖施設経由の猫におけるオッズ比がその他経由に比べ13倍という無視できない数値が浮かび上がってきました。不衛生、過密、密閉空間で飼養されている猫たちの間で身体的な接触が起こり、菌が容易に移ってしまうものと推測されます。 スタッフの1人で陽性反応が出たことから、「猫→人」という方向の人獣共通感染も危惧されます。代表的な予防法としては来歴のわからない外猫を触った手で猫カフェに行かないこと、猫スタッフを触ったらよく手を洗うことなどが挙げられます。くれぐれも人の手を経由して菌を家庭内に持ち帰り、ペット猫に移してしまわないよう気をつけましょう。
当調査でも繁殖施設経由の猫におけるオッズ比がその他経由に比べ13倍という無視できない数値が浮かび上がってきました。不衛生、過密、密閉空間で飼養されている猫たちの間で身体的な接触が起こり、菌が容易に移ってしまうものと推測されます。 スタッフの1人で陽性反応が出たことから、「猫→人」という方向の人獣共通感染も危惧されます。代表的な予防法としては来歴のわからない外猫を触った手で猫カフェに行かないこと、猫スタッフを触ったらよく手を洗うことなどが挙げられます。くれぐれも人の手を経由して菌を家庭内に持ち帰り、ペット猫に移してしまわないよう気をつけましょう。