猫を原因とする人の白癬症例
「白癬症」は動物にも人にも感染する人獣共通感染症の代表的疾患。原因菌としては犬小胞子菌で知られるM. canisのほか、Trichophyton mentagrophytesやTrichophyton verrucosumなどが報告されています。
調査対象
調査対象となったのは2017年1月から2022年7月までの期間、ポーランドにあるポズナン大学付属の真菌学ラボにおいて猫から人への白癬菌感染が確認された56症例。年齢は2~63歳と幅広く中央値は14.5歳。75%(42名)は女性という内訳です。
調査結果
調査の結果、56名の患者で合計86ヶ所の病変部が確認され、以下のような内訳となりました。カッコ内はM. canisとT. mentagrophytesの症例数比率です。
また病変の好発部位は以下のような内訳となりました。
最も感染が多かった頭部における原因菌を比較したところ、T. mentagrophytesよりもM. canis(犬小胞子菌)の確率が有意に高く、患者全体では他の部位に比べて7.15倍(体幹のみと比べた場合は9.6倍)となりました。また患者を小児に限定すると、他の部位に比べて15.6倍(体幹のみと比べた場合は25.4倍)となりました。
Superficial Zoonotic Mycoses in Humans Associated with Cats.
Piorunek, M.; Kubisiak-Rzepczyk, H.; Danczak-Pazdrowska, A.; Trafas, T.; Walkowiak, J. J. Fungi 2024, 10, 244. https://doi.org/10.3390/jof10040244
Piorunek, M.; Kubisiak-Rzepczyk, H.; Danczak-Pazdrowska, A.; Trafas, T.; Walkowiak, J. J. Fungi 2024, 10, 244. https://doi.org/10.3390/jof10040244
撫で回しの「はしご」はNG!
白癬症のリスクファクターは免疫系疾患、免疫抑制状態、長期の抗生剤治療、角質層の悪性変化などです。当調査では免疫力が弱い6歳前後の症例のほか、60歳を過ぎた老人でも症例が確認されました。
猫はどこで菌をもらう?
ペットとして飼われているはずの猫が、なぜ白癬菌症の感染源になったのでしょうか?
人に感染するタイプの白癬菌としてはM. canis、T. mentagrophytes、T. verrucosumなどが報告されています。M. canisは感染動物、感染媒介物(ブラシ・敷物・ケージ・食器・トイレ・おもちゃ・毛布・寝具・ソファー・ベッド・椅子・家具 etc)、胞子を含んだエアロゾル、菌を含んだ寄生虫との直接・間接的な接触で感染が成立するとされています。またT. mentagrophytes およびTrichophyton quinckeanumはげっ歯類との接触、T. verrucosumは家畜牛との接触が主な感染ルートと考えられています。
いずれにしても、猫を完全室内飼いをしている限りそう簡単に菌をもらってしまうとは思えません。当調査では飼育スタイルまでは明記されていないものの、おそらく屋外へのアクセスを大なり小なり許容していたものと推測されいます。
放し飼いが猫の感染率を数倍に跳ね上げることは先行調査で報告されていますが、病原体が人獣共通の場合、猫だけでなく猫と接する人間にまで感染が広がりますので、「完全室内飼い」という適正飼養の重要性が改めて痛感されます。
人に感染するタイプの白癬菌としてはM. canis、T. mentagrophytes、T. verrucosumなどが報告されています。M. canisは感染動物、感染媒介物(ブラシ・敷物・ケージ・食器・トイレ・おもちゃ・毛布・寝具・ソファー・ベッド・椅子・家具 etc)、胞子を含んだエアロゾル、菌を含んだ寄生虫との直接・間接的な接触で感染が成立するとされています。またT. mentagrophytes およびTrichophyton quinckeanumはげっ歯類との接触、T. verrucosumは家畜牛との接触が主な感染ルートと考えられています。
いずれにしても、猫を完全室内飼いをしている限りそう簡単に菌をもらってしまうとは思えません。当調査では飼育スタイルまでは明記されていないものの、おそらく屋外へのアクセスを大なり小なり許容していたものと推測されいます。
放し飼いが猫の感染率を数倍に跳ね上げることは先行調査で報告されていますが、病原体が人獣共通の場合、猫だけでなく猫と接する人間にまで感染が広がりますので、「完全室内飼い」という適正飼養の重要性が改めて痛感されます。
外猫はすべて菌陽性と想定
病変部として多かったのは毛髪を含む頭皮で、患者14名中13名までもが子供でした。また毛髪頭部に首まで含めた頭頚部ではその割合が25.6%にまで跳ね上がり、感染パターンとしては抱っこ、猫を触った手で自分の頭を触る、猫が頭部をこすりつけるなどが考えられます。
菌によって脱毛が生じる「真菌性脱毛症(tinea capitis)」は初期の脱毛が目立たないため気づくのが遅れてしまうことがままあります。また多感な子供の場合、羞恥心から周囲の大人に相談しないこともしばしばです。診断の遅れは病原菌の蔓延につながりますので、菌を保有している可能性がある猫を少しでも触った場合は、速やかに手を洗う習慣をつけておきましょう。
猫における好発部位は顔面、耳、四肢先端で、わかりやすい病変は円形脱毛、落屑(ふけ)、中央の治癒領域を囲む紅斑性辺縁部などです。
感染していても症状を示さない無症候性キャリアがいます。来歴のわからない猫に触れたときは、たとえ病変が視認できなくても菌を保有していると想定し、自分が飼っている猫に触れる前に念入りに手洗いしましょう。