猫の白癬の病態と症状
猫の白癬とは、真菌の一種である「皮膚糸状菌」(ひふしじょうきん)が皮膚に広がった状態のことです。毛が円形に抜け落ちることか「リングワーム」の異名を持ちます。
非常にたくさんの種類がある皮膚糸状菌の中で、猫に感染するものはイヌ小胞子菌(ミクロスポラムカニス, M.canis)、石膏状小胞子菌(ミクロスポラムギプセム, M.gypseum)、トリコフィトンメンタグロフィテス(T.mentagrophytes)の3種です。このうちイヌ小胞子菌による感染が全体の98%を占め、残りの2%が他の2種によるものという内訳になっています。
猫の白癬の主な症状は以下です。猫の免疫力が正常な場合、たとえ保菌していても8週間以内に自然治癒すると言われています。
非常にたくさんの種類がある皮膚糸状菌の中で、猫に感染するものはイヌ小胞子菌(ミクロスポラムカニス, M.canis)、石膏状小胞子菌(ミクロスポラムギプセム, M.gypseum)、トリコフィトンメンタグロフィテス(T.mentagrophytes)の3種です。このうちイヌ小胞子菌による感染が全体の98%を占め、残りの2%が他の2種によるものという内訳になっています。
猫の白癬の主な症状は以下です。猫の免疫力が正常な場合、たとえ保菌していても8週間以内に自然治癒すると言われています。
白癬の主症状
- 円形の脱毛
- 脱毛部にかさぶた(痂皮)
- 脂漏症
- 爪の変形と炎症(爪真菌症)
猫の白癬の原因
猫の白癬の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
白癬の主な原因
- 白癬菌との接触 猫に感染する皮膚糸状菌にはイヌ小胞子菌、石膏状小胞子菌、トリコフィトンメンタグロフィテスがあり、これらの病原菌を保有している他の犬や猫と接触することで感染します。イヌ小胞子菌は猫同士の接触、石膏状小胞子菌は地面をひっかくなど土壌との接触、そしてトリコフィトンメンタグロフィテスは野生動物との接触によって感染するというのが主なルートです。その他、野良犬や野良猫に触った飼い主が、手洗いをしないまま家の飼い猫を触ることでも感染する可能性があります。
- 免疫力の低下 免疫力が正常な猫の場合、皮膚糸状菌に感染していても自然治癒力によって2ヶ月ほどで撃退することができます。しかし何らかの理由によって免疫力が低下した状態だと、菌の増殖を抑えることができず、発症してしまうことがあります。免疫力を低下させる要因としては、過密飼育などによるストレス、若齢、猫白血病ウイルス感染症や猫エイズウイルス感染症といった感染症、免疫力を落とす薬などが挙げられます。
- 長毛 短毛種よりも長毛種における発症率が高いと言われています。これは、長毛の方が菌が付着しやすく、また菌にとって好都合な湿度を含みやすいということが関係しています。特にペルシャでは、菌が皮膚の表層から深層へともぐりこんで結節を作る「皮膚糸状菌偽菌腫」という病変が散見されます。
猫の糸状菌保有率
ペットショップで売られている猫は一般的に「繁殖施設→ペットショップ→家庭」というルートを通じてペット猫となりますが、すべての流通過程において皮膚糸状菌に感染していることが確認されています。具体的には以下で、検出されたのは全て「イヌ小胞子菌」(Microsporum canis)です。
流通過程と糸状菌保有率
- 繁殖施設 ブラジル・サンパウロ大学獣医学部のチームが、サンパウロの中心街にある猫の繁殖施設から61頭のペルシャ(オス猫18+メス猫43/平均37.7ヶ月齢)をランダムで選別し、被毛から皮膚糸状菌が検出されるかどうかを調べた所、収集されたサンプルの83.6%(51個)で菌が検出され、それらは全てイヌ小胞子菌だった(→詳細)。
- ペットショップ 2015年3月から7月の期間、日本国内で営業している8つのペットショップに協力を仰ぎ、店内で管理されている合計101頭の猫(1~6ヶ月齢)から被毛のサンプルを採取して皮膚糸状菌の保有率を調査したところ、約4%にあたる4頭で検出され、それらは全て「イヌ小胞子菌」であることが判明した(→出典)。
- 一般家庭 2017年、日本国内の一般家庭で飼育されている猫216頭を対象に皮膚糸状菌の保有率を調査したところ、1.4%に相当する3頭で菌が検出された。検出された菌は遺伝子検査の結果、ほぼ「イヌ小胞子菌」で間違いないと判定された(→出典)。
猫の白癬の治療
猫の白癬の治療法としては、主に以下のようなものがあります。そもそも猫が感染してしまわないよう、猫を放し飼いにしない、外猫を触った手で飼い猫を触らない、第三者に触らせるときは手洗いや消毒を徹底させるといった予防策を講じることも重要です。
白癬の主な治療法
- 局所治療 病変部が小区画にとどまっているような場合は、外用薬や薬浴による局所治療を行います。薬を塗りやすくするために被毛を剃ることもありますが、剃った毛をしっかりと処分しないとそれ自体が感染源になってしまうため要注意です。
- 全身療法 病変部が広範囲に広がっているような場合は、殺菌効果のある内服薬を適用します。一般的には45日以上経過観察が必要です。なおアメリカではイヌ小胞子菌に対するワクチンがありますが、その効果に関してはいまだに賛否両論です。
- 環境の清浄化 感染動物から抜け落ちたフケや被毛を環境中から一掃するようにします。表面が滑らかなものなら家庭用漂白剤で消毒し、カーペットなら掃除機で入念に感染源を吸い取ります。イヌ小胞子菌は人間にも感染する人獣共通感染症の一つですので、飼い主の健康を守るという意味でも重要です。
- ストレス管理 ストレスによる免疫力の低下が日和見感染を引き起こすことがありますので、ストレス管理は重要です。日和見感染(ひよりみかんせん)とは、宿主の免疫力低下を見計らって病原体が暴れだし、症状を現してしまう現象のことです。