詳細
調査を行ったのは、ブラジル・サンパウロ大学獣医学部のチーム。サンパウロの中心街にある猫の繁殖施設から61頭のペルシャ(オス猫18+メス猫43/平均37.7ヶ月齢)をランダムで選別し、被毛から白癬菌(水虫と同系列の菌, 皮膚糸状菌とも)が検出されるかどうかを調べました。その結果、収集されたサンプルの83.6%(51個)で菌が検出され、それらは全てイヌ小胞子菌(Microsporum canis)だったと言います。また年齢や性別と感染率とは無関係だったとも。
さらに、猫と密接に接触する機会がある18人を対象としてアンケート調査を行ったところ、44.4%(8人)が体部白癬(水虫が体に出るバージョン)の既往歴があり、16.7%(3人)は調査時点で体部白癬の症状を保有していたそうです。これらの人々は他の動物と密接に触れあった経歴がなかったため、感染源は猫であると推定されました。
こうした結果から調査チームは、たとえ症状を示していなくてもペルシャ猫は高い確率で白癬菌を保有しており、身近にいる人間への感染源になりうるという可能性を明らかにしました。 Isolation of dermatophytes from the hair coat of healthy Persian cats without skin lesions from commercial catteries located in Sao Paulo metropolitan area, Brazil
Cayo Yuji Nitta et al., Acta Scientiae Veterinariae, v. 44, n. 0 (2016)
こうした結果から調査チームは、たとえ症状を示していなくてもペルシャ猫は高い確率で白癬菌を保有しており、身近にいる人間への感染源になりうるという可能性を明らかにしました。 Isolation of dermatophytes from the hair coat of healthy Persian cats without skin lesions from commercial catteries located in Sao Paulo metropolitan area, Brazil
Cayo Yuji Nitta et al., Acta Scientiae Veterinariae, v. 44, n. 0 (2016)
解説
人間における白癬菌感染症のうち、およそ15%には動物との接触が関わっていると推定されています。そのうち最も感染源になりやすい動物として挙げられているのが猫です。猫の白癬菌保有率に関しては、世界中で調査が行われており、以下のような結果になっています。頭数は調査対象数です。
日本を含めた世界中からの報告を参照する限り、繁殖施設出身の長毛種に関してはいったん病院に行って白癬菌の有無を確認した方がよいかもしれません。不治の病ではないものの、人間に感染してしまうと体の目に見える場所が変化してしまうため、精神的に辛い思いをすることになります。
猫の白癬菌保有率
- ブラジル(1985)=104頭/88.5%
- ブラジル(2014)=191頭/8.4%
- ブラジル(2016)=50頭/22%
- アメリカ(1991)=172頭/9.3%
- アメリカ(2000)=200頭/5.5%
- メキシコ(1986)=100頭/26%
- アルゼンチン(2012)=37頭/10.8%
- イタリア(2006)=248頭/28.2%
- イタリア(1997)=173頭/49.7%
- ポルトガル(2010)=136頭/29.5%
- イギリス(1994)=181頭/2.2%
- イギリス(1982)=45頭/36%
- イギリス(2005)=169頭/5.3%
- ニュージーランド(1973)=200頭/39%
- ニュージーランド(1977)=199頭/19%
- トルコ(2016)=264頭/7.1%
- トルコ(2009)=100頭/11%
- イラン(2006)=100頭/4%
ペルシャの白癬菌脆弱性
- 毛が長い短毛種に比べてグルーミングを通して被毛から機械的に菌が除去される割合が減ってしまう。また短毛種よりもブラッシングする機会が多いため、生じた静電気が空気中を漂っている胞子を引き寄せてしまう可能性がある。
- 感染源への暴露品評会などへの参加により、菌を保有した他の猫と接する機会が多くなる。
- 密飼い多数の猫を一箇所で飼育する繁殖施設では、他の猫と接する機会が多くなり、衛生管理がおろそかになりやすい。また密飼い、度重なる出産、品評会への参加によるストレスから免疫力の低下が引き起こされると同時に、グルーミングが少なくなる可能性がある。
日本を含めた世界中からの報告を参照する限り、繁殖施設出身の長毛種に関してはいったん病院に行って白癬菌の有無を確認した方がよいかもしれません。不治の病ではないものの、人間に感染してしまうと体の目に見える場所が変化してしまうため、精神的に辛い思いをすることになります。