ペルシャの特徴的な頭蓋縫合
調査を行ったのはドイツにあるユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのチーム。調査とは全く無関係な理由で死亡した後、献体に回された猫たちの骨格を対象とし、鼻ぺちゃ短頭種で知られるペルシャと普通の短毛種の間で、頭蓋縫合にどのような違いがあるのかを比較しました。
こうした発見から調査チームは、冠状縫合の早期癒合によって骨の正常な成長が妨げられた結果、ピークタイプの極端な短頭が作り出されるのではないかと推測しています。 Closure times of neurocranial sutures and synchondroses in Persian compared to Domestic Shorthair cats.
Schmidt, M.J., Farke, D., Staszyk, C. et al. Sci Rep 12, 573 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-04783-1
- 頭蓋縫合
- 立体パズルのような構造をしている頭蓋骨のつなぎ目のこと。場所によって矢状縫合、冠状縫合、前頭縫合、人字縫合などと命名されている。
こうした発見から調査チームは、冠状縫合の早期癒合によって骨の正常な成長が妨げられた結果、ピークタイプの極端な短頭が作り出されるのではないかと推測しています。 Closure times of neurocranial sutures and synchondroses in Persian compared to Domestic Shorthair cats.
Schmidt, M.J., Farke, D., Staszyk, C. et al. Sci Rep 12, 573 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-04783-1
鼻ぺちゃ短頭の繁殖は虐待
調査チームは極端な短頭を選択繁殖することは動物保護法に明白に違反していると、かなり強い口調で明言しています。その理由は以下です。
頭蓋骨の早期癒合は病気
調査チームが言及した頭蓋骨の早期癒合とは、人間や犬において確認されている骨格系疾患の一種「頭蓋縫合早期癒合症」のことで、頭や顔面の変形を主症状としています。例えば人医学で明らかになっている特徴は以下です。
頭蓋縫合早期癒合症の主症状
- 後頭部の盛り上がり
- 額の突出
- 目の間隔が広い
- 眼球突出
- 上顎形成不全
- 下顎突出
早期癒合とペルシャの短頭種
そもそも頭蓋骨はガチガチに固まっているわけではなく、縫合部に存在する靭帯結合
が遊びとなって意外と柔軟な構造をしています。しかし頭蓋底の軟骨結合に関し、短毛種では18~29ヶ月齢で骨化するのに対しペルシャではドールでもピークでも12~14ヶ月齢というかなり早い段階で骨化するとされています。この早期癒合が頭蓋骨の長軸方向への成長を妨げることで、品種特有の短頭種が形成されると考えられています。
さらにピークタイプでは冠状縫合の早期癒合も確認されましたので、骨化していない部分に代償性拡大が起こるのは必然です。猫においては生後6ヶ月になるまで脳が発育を続けるのに、生後10日くらいで頭蓋骨が柔軟性を失えば、頭蓋内圧が高まって額が盛り上がってデコッパチになったり、後頭部が不自然なほどドーム状を呈するようになります。
その証拠に、ピークタイプの矢状縫合、人字縫合でウォルム骨で発見されました。これは機械的なストレスによってできる独立的な骨化中心ですので、頭蓋骨全体に異常な方向から圧力が加わっていることがうかがえます。
その証拠に、ピークタイプの矢状縫合、人字縫合でウォルム骨で発見されました。これは機械的なストレスによってできる独立的な骨化中心ですので、頭蓋骨全体に異常な方向から圧力が加わっていることがうかがえます。
短頭種は虐待繁殖の産物
調査チームは「極端な短頭を選択繁殖することは動物保護法に明白に違反している」とかなり強い口調で明言しています。疾患を抱えた個体をわざわざ増やしているのですから当然といえば当然です。
日本でも「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」が策定され、遺伝性疾患(骨軟骨異形成)を抱えた猫種としてスコティッシュフォールドが明記されたことは記憶に新しいところです。一方、当たり前のように受け入れられているペルシャやエキゾチックショートヘアといった極端な短頭種もまた、遺伝疾患を固定された虐待繁殖の犠牲動物であるという事実は特筆に値するでしょう。実際、短頭という形態的な特徴が鼻腔狭窄(短頭種気道症候群)だけでなく歯並びの悪化、眼球の疾患、水頭症を引き起こしていることが確認されています。
日本でも「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」が策定され、遺伝性疾患(骨軟骨異形成)を抱えた猫種としてスコティッシュフォールドが明記されたことは記憶に新しいところです。一方、当たり前のように受け入れられているペルシャやエキゾチックショートヘアといった極端な短頭種もまた、遺伝疾患を固定された虐待繁殖の犠牲動物であるという事実は特筆に値するでしょう。実際、短頭という形態的な特徴が鼻腔狭窄(短頭種気道症候群)だけでなく歯並びの悪化、眼球の疾患、水頭症を引き起こしていることが確認されています。
深く考えず「鼻ぺちゃかわいい」と言っている方は、これを機にぜひ品種の背景を知ってください。