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猫の胆管肝炎症候群~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の胆管肝炎症候群(たんかんかんえんしょうこうぐん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の胆管肝炎症候群の病態と症状

 猫の胆管肝炎症候群とは、互いに連結している胆管と肝臓が炎症を起こした状態を言います。 胆嚢と肝臓の接合部  胆嚢は総肝管(そうかんかん)を通して上にある肝臓と接続し、総胆管(そうたんかん)を通して下にある膵臓や十二指腸と接続しています。「胆管」とは、肝臓、胆嚢、十二指腸の間にあって胆汁を通す役割を果たしているパイプ状構造物の総称ですので、「総肝管」も「胆嚢管」も「総胆管」も、全て「胆管」の一部ということになります。
 上図からもわかる通り、胆管と肝臓は互いに密接に連結していますので、どちらか一方で生じた炎症はその場所だけにとどまらず、他方にも広がろうとします。このようにして胆管と肝臓の両方に炎症が生じてしまった状態が「胆管肝炎症候群」です。
 猫の胆管肝炎症候群の症状としては以下のようなものが挙げられます。5日ほどの間に急速に症状が悪化する場合は「化膿性」、3週間以上だらだらと軽い症状が続く場合は「非化膿性」と呼ばれます。
猫の胆管肝炎症候群の主症状
猫の眼球結膜と歯茎に出現した黄疸の外観
  • 食欲不振
  • 黄疸(歯茎や白目が黄ばむ)
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 脂肪肝の併発

猫の胆管肝炎症候群の原因

 猫の胆管肝炎症候群の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。ヒマラヤンシャムペルシャにやや多いとされます。
猫の胆管肝炎症候群の主な原因
  • 化膿性胆管肝炎症候群の原因  化膿性の病変は、肝臓や胆管が細菌に感染することで発生します。原因菌として多いのは大腸菌、β溶血性レンサ球菌、クレブシエラ、アクチノミセス、クロストリジウムなどです。
  • 非化膿性胆管肝炎症候群の原因  非化膿性の病変は、胆石、胆管閉塞といった胆嚢障害膵炎、慢性間質性腎炎と言った、別の臓器で発生した感染に続発する形で発症します。

猫の胆管肝炎症候群の治療

 猫の胆管肝炎症候群の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の胆管肝炎症候群の主な治療法
  • 化膿性胆管肝炎症候群の治療  化膿性の胆管肝炎は急性症状を引き起こしますので、取り急ぎ輸液などで脱水症状を防ぎます。その後約2ヶ月にわたり、原因菌に対する抗菌薬と、胆汁の分泌を促すための薬が投与されます。処置が適切であれば治癒することもありますが、不適切な場合は糖尿病胆嚢障害、非化膿性胆管肝炎、脂肪肝に進行してしまうこともありますので要注意です。なお、胆管が閉塞している場合は緊急の手術が必要です。
  • 非化膿性胆管肝炎症候群の治療  猫が脱水気味の場合は輸液などによって体液バランスを是正します。多くの場合、他の臓器における基礎疾患が原因ですので、それらの疾病に対する管理が優先されます。治癒する可能性はあまりなく、免疫調整剤、抗酸化剤、肝臓保護剤などの投薬治療が一生涯続くこともしばしばです。