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猫の前庭神経炎~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の前庭神経炎の病態と症状

 猫の前庭神経炎とは、脳神経の一種である前庭神経(ぜんていしんけい)に炎症が発生し、主に平衡バランス感覚が障害を受けた状態を言います。 猫の蝸牛と三半規管の位置関係  猫の耳の奥には「内耳」と呼ばれる部分があり、そこにカタツムリのような形をした「蝸牛」(かぎゅう)と呼ばれる器官と、プレッツェルのような形をした、「三半規管」(さんはんきかん)と呼ばれる器官が、骨の中にすっぽりと収まっています。「蝸牛」には「蝸牛神経」がつながっており、音を脳に伝える役割を果たしています。一方、「三半規管」には「前庭神経」(ぜんていしんけい)がつながっており、体の位置情報を脳に伝える役割を果たしています。この2つを合わせたものが「内耳神経」(ないじしんけい, 第8脳神経)です。「前庭神経炎」といった場合は、内耳神経のうち、主に「前庭神経」の方に炎症が発生し、頭や体の位置を適正にコントロールできなくなった状態のことを意味します。
 猫の前庭神経炎の主な症状は以下です。人間で言うと、イスに座ってぐるぐる回った直後に近い状態と言えるでしょう。頭が傾くのは障害がある方で、目が揺れるのはその逆側です。
猫の前庭神経炎の主症状
  • 意味もなく頭をかしげる
  • ぐるぐる回る
  • ふらふら歩く
  • 横に倒れる
  • 眼振(眼球があちこち動く)
 以下でご紹介するのは、前庭神経炎を患った猫の動画です。常時、意味もなく首をかしげている様子が観察できます。 元動画は→こちら

猫の前庭神経炎の原因

 猫の前庭神経炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の前庭神経炎の主な原因
  • 炎症  耳の奥にある内耳で発生した炎症が、前庭神経に波及することで発症します。 外耳炎中耳炎内耳炎のほか、耳腫瘍などが原因として挙げられます。
  • 未知の要因  炎症の原因がよく分からないこともしばしばです。ストレス、環境、外気圧など、様々な要因が複合した可能性が考えられます。こうした場合、原因がわからないときに用いられる「特発性」(とくはつせい)という言葉を付けて、「特発性前庭疾患」とも呼ばれます。

猫の前庭神経炎の治療

 猫の前庭神経炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の前庭神経炎の主な治療法
  • 対症療法  症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には副腎皮質ホルモン薬やビタミン、抗めまい薬などが投与され、およそ1週間程度で回復に向かいます。通常は目が回るため自発的に運動を制限しますが、猫が怪我をしないよう、症状があるうちは注意深く行動を見守るようにします。
  • 基礎疾患の治療 外耳炎中耳炎内耳炎など、他の疾患が明らかな場合は、まずそうした疾患の治療が管理されます。