猫のダニ麻痺症の病態と症状
猫のダニ麻痺症とは、メスの成長したダニが、猫の体から吸血する際に分泌した唾液によって、筋肉が麻痺してしまった状態のことです。
唾液腺から強力な神経毒を出すダニの多くは、アメリカとオーストラリアに集中しています。具体的には以下です。なお、犬と比較したとき、猫はアメリカのダニ毒に対してやや抵抗性を持っているとされています。
猫のダニ麻痺の主な症状は以下です。ダニに噛まれた後、6~9日間の潜伏期を経て発症します。筋肉に付着している末梢運動神経が最も多く障害されますが、脳神経(迷走・顔面・三叉)や交感神経が影響を受けることもしばしばです。
唾液腺から強力な神経毒を出すダニの多くは、アメリカとオーストラリアに集中しています。具体的には以下です。なお、犬と比較したとき、猫はアメリカのダニ毒に対してやや抵抗性を持っているとされています。
運動麻痺を起すダニ
- 森林ダニ
正式名称:Dermacentor variabilis
生息地域:アメリカ東部・カリフォルニア州・オレゴン州 - ロッキー山脈森林ダニ
正式名称:Dermacentor andersoni
生息地域:ロッキー山脈~カスケード山脈 - ローンスターダニ
正式名称:Amblyomma americanum
生息地域:テキサス州・ミズーリ州~大西洋沿岸 - 湾岸ダニ
正式名称:Amblyomma maculatum
生息地域:大西洋・メキシコ湾の海岸・高温多湿の地域 - オーストラリア麻痺ダニ
正式名称:Ixodes holocyclus
生息地域:オーストラリア
猫のダニ麻痺の主な症状は以下です。ダニに噛まれた後、6~9日間の潜伏期を経て発症します。筋肉に付着している末梢運動神経が最も多く障害されますが、脳神経(迷走・顔面・三叉)や交感神経が影響を受けることもしばしばです。
猫のダニ麻痺症の主症状
- フラフラ歩く
- 後肢の脱力
- 顔面筋の弛緩
- 発声障害と嚥下困難
- 呼吸筋麻痺
- 瞳孔散大
猫のダニ麻痺症の原因
猫のダニ麻痺症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫のダニ麻痺症の主な原因
- ダニによる吸血 ダニの唾液中に含まれる神経毒が直接の原因です。ダニが吸血を始めてから5~7日目に毒素が最大化すると言われています。麻痺を引き起こすダニの多くは林や森の中に生息していますので、こうした場所に猫を無防備な状態で連れていくことも、間接的な要因と言えます。
猫のダニ麻痺症の治療
猫のダニ麻痺症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫のダニ麻痺症の主な治療法
- ダニの除去 ダニを除去し、毒素の注入を遮断することで症状が回復します。成ダニを目視確認できる場合は、ピンセットなどでゆっくりと引き抜きます。ダニを確認できない場合は殺ダニ効果のある薬剤で薬浴させます。
- 血清の投与 オーストラリアに生息しているマヒダニの神経毒は強力なため、早急な回復を目指して血清が投与されることもあります。
- 安静 ダニの神経毒が代謝されるまで運動を制限して安静を心がけます。もし横隔膜や肋間筋と言った呼吸筋にまで麻痺が広がり、自力で呼吸できないような場合は人工呼吸器を付けることも必要です。また嚥下困難や食道の蠕動不良が見られる場合は、チューブなどで強制的に給餌を行います。