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猫の先端肥大症~症状・原因から予防・治療法まで

 猫の先端肥大症(せんたんひだいしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い猫の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

猫の先端肥大症の病態と症状

 猫の先端肥大症とは、脳の奥深くに位置している「下垂体」(かすいたい)と呼ばれる部位に腫瘍が発生し、そこから分泌される「成長ホルモン」(GH)が過剰になってしまう病気です。「末端肥大症」、「アクロメガリ」とも呼ばれます。 猫の脳の断面と下垂体の位置  成長ホルモン(GH)は、炭水化物、タンパク質、脂質といった栄養素の代謝を促すと同時に、血液中の糖分を細胞内に導く「インスリン」の作用を抑制して、血糖値を上昇させる働きを持っています。また肝臓に作用することで、そこに貯蔵されている肝グリコーゲンの分解を促し、「インスリン様成長因子」(IGF-1)と呼ばれる特殊な物質を分泌させる働きも持っています。一方、成長ホルモンの刺激を受けて分泌された「インスリン様成長因子」は、筋肉、骨、神経、内臓といったあらゆる組織に作用し、組織を構成している細胞の成長とDNAの合成を調節します。
 先端肥大症の症状を引き起こす要因は主に3つです。1つ目は、腫瘍自体が引き起こす症状。2つ目は、腫瘍から分泌される過剰な成長ホルモン(GH)が引き起こす症状。そして3つ目は、過剰な成長ホルモンによって肝臓から分泌が促される、インスリン様成長因子(IGF-1)が引き起こす症状です。
猫の先端肥大症の主症状
人間と猫における先端肥大症の比較写真
  • IGF-1による症状 組織を肥大させることによってさまざまな症状を見せるようになります。「咽頭の肥大」ではいびき・無呼吸・パンティング・疲れやすいといった症状が出ます。「骨の肥大」では、下顎がしゃくれる・口元が肥大する・顔幅が広くなる・体全体が一回り大きくなる・変形性関節症といった症状が出ます。「内臓の肥大」では、心肥大による心不全・腎肥大による腎不全・肝肥大による腹部膨満といった症状が出ます。
  • 腫瘍による症状 下垂体前葉にできた腫瘍が大きくなると、正常な脳の機能を邪魔しててんかんのような発作を引き起こすことがあります。
  • GHによる症状 インスリンの働きを邪魔することで糖分が血液中にとどまるようになり、糖尿病を引き起こします。その結果、水をたくさん飲む、エサをたくさん食べる、おしっこが多いといった、糖尿病によくある症状を見せるようになります。ただし、食べているのにやせていく糖尿病とは違い、だんだん太っていくことが特徴です。その他、高タンパク血症や高窒素血症、高リン酸血症、高コレステロール血症といった随伴症状も見られるようになります。

猫の先端肥大症の原因

 猫の先端肥大症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
猫の先端肥大症の主な原因
  • 性別(?) 先端肥大症の9割近くはオスに発症します。明確なメカニズムは不明ながら、性別が何らかの関わりを持っていると推測されます。
  • 加齢(?) 当症の発症年齢は8~14歳で平均10歳程度とされています。加齢に伴う細胞分裂の異常が、下垂体腺腫の原因かもしれません。
  • 不明 先端肥大症は、多くの場合原因不明です。なお、犬では性ホルモンの一種であるプロゲステロンと因果関係があるとされていますが、猫では無関係です。

猫の先端肥大症の治療

 猫の先端肥大症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
猫の先端肥大症の主な治療法
  • 対症療法  疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には心肥大による心不全、腎肥大による腎不全に対する管理がメインです。糖尿病に関しては、仮にインスリンを人為的に投与したとしても細胞の方が反応してくれないため、なかなか血糖値が下がってくれません。そのためかなり大量の投与が必要となりますが、その反動として現れる低血糖発作には十分な注意が必要となります。
  • 放射線治療  下垂体は外科手術が難しい部位ですので、内部の腫瘍を減らす際は放射線療法が選択されます。しかしこの治療法は、短期的な回復は見込めるものの、腫瘍を根治することまではできません。一般的に、先端肥大症の診断が下されてからの余命は1.5~3年程度とされています。