猫の変形性関節症・調査法
猫の変形性関節症に関する疫学調査を行ったのはイギリス国内にある複数の大学からなる共同チーム。特定の猫たちを長期に渡ってモニタリングする大規模コホート調査「ブリストル・キャット・スタディ」に参加している799人の飼い主を対象とし、猫が6歳を過ぎたタイミングで動作の病的な変化に関するアンケートを行いました。具体的な内容は、動作障害を示す12項目からなる質問に対し、飼い主が「いいえ=0ポイント」「たぶん=1ポイント」「はい=2ポイント」と回答することで、猫の動作障害指数を「全く問題ない=0」~「重度の問題を抱えている=24」に区分するというものです。
Associations between early neutering, obesity, outdoor access, trauma and feline degenerative joint disease
Evangelia Maniaki, Jo Murrell, Sorrel J Langley-Hobbs, Emily J Blackwell, Journal of Feline Medicine and Surgery, DOI:10.1177/1098612X21991456
得られた動作障害指数と「2~4ヶ月齢時」「6ヶ月齢時」「12ヶ月齢時」「18ヶ月齢時」「2.5歳時」「4歳時」「6歳時」のタイミングで行った猫の基本属性に関するアンケートを照合し、動作の異常と関わっていそうな因子を統計的に精査した所、多変量解析で以下のような項目が残ったといいます。なお解析に際しては、不備があった回答や「動作障害指数=1」というどっちつかずの回答が除外され、740だけが対象となっています。
Evangelia Maniaki, Jo Murrell, Sorrel J Langley-Hobbs, Emily J Blackwell, Journal of Feline Medicine and Surgery, DOI:10.1177/1098612X21991456
猫の変形性関節症・危険因子
猫において「原発性」の変形性関節症と言った場合はスコティッシュフォールド骨軟骨異形成やムコ多糖症が含まれます。それに対し「二次性」の変形性関節症と言った場合は、関節以外にあるすべての原因が含まれます。以下はコホート調査を通じて見えてきた、二次性変形性関節症の発症因子として有力な項目です。
6ヶ月齢の時点で不妊未手術
6ヶ月齢の時点で不妊未手術の場合、手術済みの場合に比べてオッズ比が1.97(p=0.003)となりました。これは1.97倍発症しやすいという意味です。
犬においては生後6ヶ月齢以前における不妊手術が変形性関節症リスクになっている可能性が示唆されています。また5.5ヶ月齢時のタイミングで手術を受けた猫においては喘息や口内炎の有病率が低くなるという現象が報告されています。
不妊手術が炎症性病変のリスクファクターになっているとは医学的に証明されていないものの、当調査においては早期手術が変形性関節症に対して予防的に働いている可能性が示されました。
犬においては生後6ヶ月齢以前における不妊手術が変形性関節症リスクになっている可能性が示唆されています。また5.5ヶ月齢時のタイミングで手術を受けた猫においては喘息や口内炎の有病率が低くなるという現象が報告されています。
不妊手術が炎症性病変のリスクファクターになっているとは医学的に証明されていないものの、当調査においては早期手術が変形性関節症に対して予防的に働いている可能性が示されました。
6歳以前に外傷歴あり
6歳の時点で何らかの外傷歴がある場合、ない場合に比べてオッズ比が1.85(p=0.001)となりました。
外傷は25.8%(206/799)の割合を占め、そのうち53.4%(110/206)が「犬や猫による咬傷と膿瘍」、24.3%(50/206)が「交通事故 or 落下 or 脱臼・骨折」、22.3%が「軟部組織の怪我 or 原因不明」という内訳でした。
過去に行われた別の疫学調査では、関節の脱臼や骨折に関し、交通事故に遭遇した猫たちの60%、落下事故にあった猫たちの65%で報告されています。人間においては外傷が二次性変形性関節症のリスクファクターになっていますので、猫においても同様の因果関係があるのかもしれません。また過半数を占める「犬や猫による咬傷と膿瘍」に関しては、動物の口内に含まれる様々な嫌気性 or 好気性微生物が細菌性の関節炎を引き起こし、運動不全につながっている可能性も考えられます。
外傷は25.8%(206/799)の割合を占め、そのうち53.4%(110/206)が「犬や猫による咬傷と膿瘍」、24.3%(50/206)が「交通事故 or 落下 or 脱臼・骨折」、22.3%が「軟部組織の怪我 or 原因不明」という内訳でした。
過去に行われた別の疫学調査では、関節の脱臼や骨折に関し、交通事故に遭遇した猫たちの60%、落下事故にあった猫たちの65%で報告されています。人間においては外傷が二次性変形性関節症のリスクファクターになっていますので、猫においても同様の因果関係があるのかもしれません。また過半数を占める「犬や猫による咬傷と膿瘍」に関しては、動物の口内に含まれる様々な嫌気性 or 好気性微生物が細菌性の関節炎を引き起こし、運動不全につながっている可能性も考えられます。
6歳の時点で屋外アクセスあり
6歳の時点で屋外アクセスできる場合、ない場合に比べてオッズ比が1.67(p=0.07)となりました。
屋外にアクセスできる猫(=放し飼いの猫)の方が外傷歴が多いという関係性は認められなかったものの、飼い主の目を離れて外を自由に出歩いていると、他の動物との接触による怪我、虐待被害、交通事故、落下事故などに遭遇する危険性が高まります。犬、馬、人間においては肉眼では確認できないほど小さな外傷でも、累積すると変形性関節症の危険因子になることが確認されていますので、猫の関節でも飼い主が気づかないレベルの小さな病変が生じていた可能性はあるでしょう。
屋外にアクセスできる猫(=放し飼いの猫)の方が外傷歴が多いという関係性は認められなかったものの、飼い主の目を離れて外を自由に出歩いていると、他の動物との接触による怪我、虐待被害、交通事故、落下事故などに遭遇する危険性が高まります。犬、馬、人間においては肉眼では確認できないほど小さな外傷でも、累積すると変形性関節症の危険因子になることが確認されていますので、猫の関節でも飼い主が気づかないレベルの小さな病変が生じていた可能性はあるでしょう。