品種を越えて発症した骨瘤の症例
スコティッシュフォールドは丸っこい顔と前方に折れた耳を特徴とする猫の品種の一つです。耳折れを作り出すTRPV4遺伝子の変異(c.1024G>T)はスコティッシュフォールド骨軟骨異形成(SFOCD=骨瘤)と呼ばれる品種特有疾患の原因にもなっていると考えられています。2020年10月、東京都にある猫専門病院が品種特有疾患であるはずの骨瘤が、どういうわけかマンチカンとアメリカンカールに発症した症例を報告しましたのでご紹介します。
Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cross-breed cats
The Japanese Society of Veterinary Science (2020), Masamine Takanosu, Yuki Hattori, DOI:10.1292/jvms.20-0299
The Japanese Society of Veterinary Science (2020), Masamine Takanosu, Yuki Hattori, DOI:10.1292/jvms.20-0299
症例1:マンチカン
5ヶ月齢のときに食欲不振で受診した避妊済みのメスで体重は1.65kg。血統書上の登録はマンチカンだが両親の血統書は未確認。純粋なマンチカンでは見られない表現型である前方への耳折れ、およびエックス線所見で指骨端の不整形が確認されたため、全血を用いた遺伝子検査でTRPV4の変異を調べたところ、TTというホモ型だった。7ヶ月後、1歳になったタイミングで重度の骨瘤が後肢踵骨および中足骨に発症。指骨の近位端は癒合し、指骨遠位端は不整形を呈した。
症例2:アメリカンカール
不妊手術のため来院した13ヶ月齢のメスで体重は2.4kg。血統書上の登録はアメリカンカールだが両親の血統書は未確認。耳をよく観察してみると、耳の付け根部分が前方に曲がり、上部分が後方にカールするという変則的な表現型を示していた。来院した時点ですでに触知できるほどはっきりした後肢の骨瘤が確認され、指骨の骨端は不整形を呈していた。遺伝子検査でTRPV4の変異を調べたところ、純粋なアメリカンカールではありえないTTというホモ型だった。
ブリーダーによるデタラメな繁殖
TRPV4遺伝子における塩基配列の変異(c.1024G>T)はスコティッシュフォールド固有のものです。軽度の耳折れ個体の場合は対立遺伝子上に1つ、重度の耳折れ個体の場合は両方の対立遺伝子にこの変異を有しています。ではなぜ本来スコティッシュフォールドにしか見られないはずの遺伝子変異が別の品種で見られたのでしょうか?
とんだ遺伝子プールの拡大
考えられるのは、アメリカンカールにしてもマンチカンにしても両親の中にスコティッシュフォールドの血が混じっていたということです。猫の入手先がペットショップだったのかブリーダーだったのかまでは記載されていませんが、デタラメな繁殖計画により疾患関連遺伝子が別の品種に取り込まれたという図式が見て取れます。症例1の血統書上マンチカンに至っては、被毛パターンを見る限りアメリカンショートヘアの血統も用いられているようです。
特定品種内の疾患遺伝子を希釈するため、他の品種と掛け合わせることで遺伝子プールを拡大することはよく行われることです。しかし拡大に使う血統に疾患遺伝子が含まれていたのでは全く意味がないばかりか逆に病気の発症率が高まってしまいます。繁殖に関わっている人間がいかに無知で倫理観がなく、金儲けを優先してデタラメな繁殖を行っているかがお分かりいただけるでしょう。
特定品種内の疾患遺伝子を希釈するため、他の品種と掛け合わせることで遺伝子プールを拡大することはよく行われることです。しかし拡大に使う血統に疾患遺伝子が含まれていたのでは全く意味がないばかりか逆に病気の発症率が高まってしまいます。繁殖に関わっている人間がいかに無知で倫理観がなく、金儲けを優先してデタラメな繁殖を行っているかがお分かりいただけるでしょう。
繁殖屋による動物実験と虐待繁殖
猫たちには血統書が付いていたようですが、それほど価値はありません。にわか作りの自称品種協会が、申請者から送られてきた基本データだけから血統書を乱発し、姿かたちを実地に確認しないことが少なくないからです。その結果が今回のような、品種の垣根を越えた固有疾患の越境遺伝なのでしょう。両症例ともホモ型でしたので、母猫と父猫が少なくとも1本ずつ疾患遺伝子を保有した(=両親ともにスコティッシュフォールドの血が混じっていた)ことを意味しています。
繰り返しになりますが、日本国内で非常に人気のあるスコティッシュフォールドは人間の金儲けのため疾患遺伝子を背負わされた品種です。耳が折れている時点ですでに骨瘤遺伝子を少なくとも一本抱えています。拝金主義のブリーダー(繁殖屋)たちが、まるでモンタージュ写真を組み合わせるように「スコマンチ」とか「スコアメショ」などと言う狂気じみた乱繁殖を繰り返すと、品種固有疾患がこれからもどんどん越境遺伝してしまいます。
繰り返しになりますが、日本国内で非常に人気のあるスコティッシュフォールドは人間の金儲けのため疾患遺伝子を背負わされた品種です。耳が折れている時点ですでに骨瘤遺伝子を少なくとも一本抱えています。拝金主義のブリーダー(繁殖屋)たちが、まるでモンタージュ写真を組み合わせるように「スコマンチ」とか「スコアメショ」などと言う狂気じみた乱繁殖を繰り返すと、品種固有疾患がこれからもどんどん越境遺伝してしまいます。
猫を愛する人がまずスコが置かれている現状を知って下さい。「スコ座りかわいい~!」とか言っている場合じゃないんです。