年齢別に見た猫の腸内細菌叢
調査を行ったのは東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部のチーム。臨床上健康な猫50頭を「離乳食前=12~13日齢」「離乳直後=7~8週齢」「若齢=2~3歳」「高齢=10~14歳」「老齢=16~19歳」という年齢層に10頭ずつ区分し、便サンプル内部の微生物群を培養することで腸内細菌叢がどのような特徴を有しているのかを検証しました。
その結果、各年齢層によって異なるバランスになっていることが明らかになったといいます。具体的には以下です。
離乳前の子猫に関しては腸内細菌科とエンテロコッカスが大勢を占め、真正細菌が離乳直後や若齢猫より少ないという特徴が見られました。全年齢層ではバクテロイデスと真正細菌が生涯を通じて最も大きな割合を占めていましたが、腸内細菌科とエンテロコッカスは加齢とともに減少する傾向が確認されました。ラクトバチルス(乳酸桿菌)は離乳直後の子猫では見られず、その他の年齢層でも半数の猫たちは保有していなかったそうです。ビフィズス菌に至っては高齢猫1頭と老齢猫3頭以外、全く検出されませんでした。
こうした結果から調査チームは、構成バランスは全く違うものの、猫にも犬や人間と同じように「腸内細菌の老化」と呼ばれる現象があるようだとの結論に至りました。 Transition of the intestinal microbiota of cats with age.
Masuoka H, Shimada K, Kiyosue-Yasuda T, et al. PLoS One. 2017;12(8):e0181739. Published 2017 Aug 16. doi:10.1371/journal.pone.0181739
その結果、各年齢層によって異なるバランスになっていることが明らかになったといいます。具体的には以下です。
年齢層 | 離乳前 | 離乳後 | 若齢 | 高齢 | 老齢 |
メガスファエラ | 0 | 0 | 6.9 | 0 | 5.9 |
真正細菌 | 8.3 | 10.5 | 9.6 | 9.5 | 9.4 |
クロストリジウム属 | 8 | 7.3 | 8.7 | 5.2 | 8.9 |
ビフィズス菌 | 0 | 0 | 0 | 7.3 | 8.6 |
バクテロイデス | 9.7 | 10.4 | 9.8 | 10 | 9.7 |
ラクトバチルス | 7.3 | 0 | 4.4 | 9.3 | 5.3 |
腸内細菌科 | 9.4 | 6 | 6.8 | 5.9 | 6.6 |
エンテロコッカス属 | 8.8 | 7 | 7.1 | 7.8 | 6.1 |
ブドウ球菌 | 0 | 0 | 3.8 | 0 | 4.3 |
トータル | 10.1 | 10.8 | 10.1 | 10.2 | 10.1 |
こうした結果から調査チームは、構成バランスは全く違うものの、猫にも犬や人間と同じように「腸内細菌の老化」と呼ばれる現象があるようだとの結論に至りました。 Transition of the intestinal microbiota of cats with age.
Masuoka H, Shimada K, Kiyosue-Yasuda T, et al. PLoS One. 2017;12(8):e0181739. Published 2017 Aug 16. doi:10.1371/journal.pone.0181739
猫の細菌バランスは人や犬とは違う
猫においても犬や人間と同様、腸内細菌の老化現象というものがあるようです。しかし微生物群の構成バランスは動物種が違えば全く違った様相を呈します。
例えば人間の場合、ビフィズス菌は子供の頃は多く保有しているものの、中年期以降になると徐々に減り始め、逆にウエルシュ菌、ラクトバチルス、エンテロコッカス、腸内細菌科は増え始めるといいます(:Mitsuoka, 2014)。 また犬の場合、離乳前や離乳直後の子犬の腸内においてラクトバチルスが豊富に検出されるものの、加齢とともに少なくなっていくといいます(:Masuoka, 2017)。 今回の調査により猫の腸内でおいては一般的に善玉菌と呼ばれているビフィズス菌がほとんど確認されないという大きな特徴が発見されました。 また同じく善玉菌として扱われることが多いラクトバチルス(乳酸桿菌)に関しても、そもそも腸内に保有していない個体が半数近く見られました。その代わりすべての年齢層において豊富に観察されたのが真正細菌とエンテロコッカスです。調査チームは猫の腸内において乳酸の生成をメインで行なっているのはラクトバチルスやビフィズス菌ではなくエンテロコッカス属なのではないかと推測しています。ただしリアルタイムPCRと呼ばれる精度の高い検出法で腸内細菌を調べた過去の報告では、ラクトバチルスが100%、ビフィズス菌が70%の確率で検出されたとされていますので、解析手法によって結果が異なるという現象はあり得るかもしれません(:Deusch, 2015)。
キャットフードや猫向けに作られたサプリメントにはビフィズス菌、ラクトバチルス、エンテロコッカスのさまざまな菌株が使われています。犬や人間と比べたときの腸内細菌バランスの特徴や、加齢とともに変化するという事実を考え合わせると、そもそも上記したようなサプリメント(プロバイオティクス)が猫の健康増進につながっているのかどうかは甚(はなは)だ怪しくなってきます。「なんとなく健康に良さそう」という思いつきから、猫にヨーグルトを食べさせていませんか? 必ずしも人間と同じ効果は発揮しませんので下痢や便秘などの消化器系症状にご注意ください。
例えば人間の場合、ビフィズス菌は子供の頃は多く保有しているものの、中年期以降になると徐々に減り始め、逆にウエルシュ菌、ラクトバチルス、エンテロコッカス、腸内細菌科は増え始めるといいます(:Mitsuoka, 2014)。 また犬の場合、離乳前や離乳直後の子犬の腸内においてラクトバチルスが豊富に検出されるものの、加齢とともに少なくなっていくといいます(:Masuoka, 2017)。 今回の調査により猫の腸内でおいては一般的に善玉菌と呼ばれているビフィズス菌がほとんど確認されないという大きな特徴が発見されました。 また同じく善玉菌として扱われることが多いラクトバチルス(乳酸桿菌)に関しても、そもそも腸内に保有していない個体が半数近く見られました。その代わりすべての年齢層において豊富に観察されたのが真正細菌とエンテロコッカスです。調査チームは猫の腸内において乳酸の生成をメインで行なっているのはラクトバチルスやビフィズス菌ではなくエンテロコッカス属なのではないかと推測しています。ただしリアルタイムPCRと呼ばれる精度の高い検出法で腸内細菌を調べた過去の報告では、ラクトバチルスが100%、ビフィズス菌が70%の確率で検出されたとされていますので、解析手法によって結果が異なるという現象はあり得るかもしれません(:Deusch, 2015)。
キャットフードや猫向けに作られたサプリメントにはビフィズス菌、ラクトバチルス、エンテロコッカスのさまざまな菌株が使われています。犬や人間と比べたときの腸内細菌バランスの特徴や、加齢とともに変化するという事実を考え合わせると、そもそも上記したようなサプリメント(プロバイオティクス)が猫の健康増進につながっているのかどうかは甚(はなは)だ怪しくなってきます。「なんとなく健康に良さそう」という思いつきから、猫にヨーグルトを食べさせていませんか? 必ずしも人間と同じ効果は発揮しませんので下痢や便秘などの消化器系症状にご注意ください。
最近は猫の腸内細菌叢を調べてくれる簡易検査キットも市販されています。病気の診断には使えませんが試してみてはいかがでしょう。詳しくは「猫の腸内細菌叢」というページで解説してあります。