猫の急性胃炎の病態と症状
猫の急性胃炎とは、胃の粘膜に突如として炎症が生じた状態のことです。慢性胃炎では症状が1週間以上続くのに対し、急性胃炎では通常1週間以内に収まります。
急性胃炎と似た症状を示すものとしては、のどや食道に引っかかったものをゲーゲーと吐き出す「吐出」(としゅつ)や、エサや水をうまく飲み込めずに口の端からこぼす「嚥下困難」(えんげこんなん)があります。これらの症状と急性胃炎を見分けるときのポイントは、おなかを大きく伸縮させながら胃の内容物を吐き出しているかどうかという点です。胃に炎症が起こっている場合は、横隔膜や腹筋を使って胃の中身を空にしようとします。詳しくは猫の嘔吐をご参照ください。
猫の急性胃炎の主な症状は以下です。自分の吐き出した胃酸で食道が傷つき、「逆流性食道炎」を発症することも少なくありません。
猫の急性胃炎の主な症状は以下です。自分の吐き出した胃酸で食道が傷つき、「逆流性食道炎」を発症することも少なくありません。
猫の急性胃炎の主症状
- 突然の反復性嘔吐
- 脱水症状
- 吐しゃ物の中に血
猫の急性胃炎の原因
猫の急性胃炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられますが、摂取してはいけないものを口に入れたことが最大の要因です。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
例えばペンシルベニア大学獣医学部の調査チームがピロリ菌に感染した24頭の猫たちの胃を組織学的およびウレアーゼマッピングによって解析したところ、噴門、胃底、胃体、幽門部すべてから菌が検出されたといいます(:Handt, 1995)。また24頭中21頭(88%)では中等度~重度のリンパ濾胞性胃炎が見られたとも。胃炎は幽門部でもっとも顕著で、深部粘膜では多中心性のリンパ細胞および形質細胞浸潤が観察されたそうです。重症度はピロリ菌の数と連動していました。 ピロリ菌は猫の胃内部において慢性的な抗原性を発揮して免疫応答を刺激し、リンパ細胞と形質細胞の粘膜固有層への浸潤を特徴とするリンパ濾胞性の胃炎を引き起こすと結論付けられました。一方、同じくヘリコバクター菌に属する「H.heilmannii」「H.bizzozeronii」「H.felis」に関しては明白な病原性が確認されていません。
猫の急性胃炎の主な原因
- 誤飲誤食 急性胃炎の原因として最も多いのが、食べてはいけないものを食べてしまう誤飲や誤食です。具体的には、猫が食べてはいけない食物、毒物、植物などを摂取した可能性が考えられます。
- 寄生虫 大小さまざまな寄生虫が胃炎を引き起こすことがあります。具体的には、回虫、フィサロプテラ(胃虫)、トキソプラズマなどです。
- 感染症 ウイルスや細菌の感染が胃炎を引き起こすことがあります。具体的にはネコヘルペスウイルス-1による好酸球性核内封入体を伴う多中心性・壊死性胃炎の症例や、ピロリ菌によるリンパ球集合体と肥大リンパ節を伴う多中心性胃炎の症例が報告されています。
- 薬剤 ある種の薬が胃炎を引き起こすことがあります。
例えばペンシルベニア大学獣医学部の調査チームがピロリ菌に感染した24頭の猫たちの胃を組織学的およびウレアーゼマッピングによって解析したところ、噴門、胃底、胃体、幽門部すべてから菌が検出されたといいます(:Handt, 1995)。また24頭中21頭(88%)では中等度~重度のリンパ濾胞性胃炎が見られたとも。胃炎は幽門部でもっとも顕著で、深部粘膜では多中心性のリンパ細胞および形質細胞浸潤が観察されたそうです。重症度はピロリ菌の数と連動していました。 ピロリ菌は猫の胃内部において慢性的な抗原性を発揮して免疫応答を刺激し、リンパ細胞と形質細胞の粘膜固有層への浸潤を特徴とするリンパ濾胞性の胃炎を引き起こすと結論付けられました。一方、同じくヘリコバクター菌に属する「H.heilmannii」「H.bizzozeronii」「H.felis」に関しては明白な病原性が確認されていません。
猫の急性胃炎の治療
猫の急性胃炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
例えばテキサス州にある動物病院は発泡スチロールのかけらを飲み込んでしまったオス猫(10歳)の症例を報告しています(:T.D. Obr, 2017)。このケースでは飼い主が自己判断でスプーン一杯(7.5~15mL)の3%過酸化水素水を飲ませましたが、直後に血の混じった嘔吐が止まらなくなったといいます。急いで動物病院を受診し診断的な開腹手術を行なったところ、異物はすでになかったものの粘膜の60%に及ぶ重度の潰瘍が見られたとのこと。症状があまりにもひどかったため、最終的には安楽死という転機を取りました。
上記したような最悪のケースも起こりえますので、よほど急ぎでない場合は医療設備が整った動物病院内で催吐治療をしてもらいましょう。
猫の急性胃炎の主な治療法
- 誤飲への対処 食べてはいけないものを食べてしまった場合は、猫が異物を飲み込んだ場合の処置がとられます。固形物の場合は催吐剤や内視鏡と鉗子(かんし=手術用の小さなマジックアーム)を用いた除去、液体の場合は胃洗浄や吸着剤の投与などです。
- 絶食・絶水 体力のある猫の場合、12時間の絶水と24時間の絶食を行って傷ついた胃を休めます。その後少量の水からスタートし、消化されやすい低脂肪、単一タンパク、単一炭水化物の食事が与えられます。
- 輸液 嘔吐によって失った体液を補うため、輸液が行われます。重症な場合は点滴が施されることもあります。
- 基礎疾患の治療 寄生虫や感染症などが胃炎を引き起こしている場合は、それらを体内から除去するような治療が施されます。
例えばテキサス州にある動物病院は発泡スチロールのかけらを飲み込んでしまったオス猫(10歳)の症例を報告しています(:T.D. Obr, 2017)。このケースでは飼い主が自己判断でスプーン一杯(7.5~15mL)の3%過酸化水素水を飲ませましたが、直後に血の混じった嘔吐が止まらなくなったといいます。急いで動物病院を受診し診断的な開腹手術を行なったところ、異物はすでになかったものの粘膜の60%に及ぶ重度の潰瘍が見られたとのこと。症状があまりにもひどかったため、最終的には安楽死という転機を取りました。
上記したような最悪のケースも起こりえますので、よほど急ぎでない場合は医療設備が整った動物病院内で催吐治療をしてもらいましょう。