猫を捕まえる前の注意点
病院に行くことは、猫にとっても飼い主にとってもストレスに満ち溢れたイベントです。双方のストレスを最小限に食い止めるため、いくつか守らなければならない約束事があります。
妥協しない
「猫が嫌がるから病院はまた今度にしよう」という先延ばしは、時に重大な疾患を見落とすことにつながります。猫は痛みや体調不良を隠すことに関してはエキスパートで、わずか1ヶ月前までは普段と変わりなく生活していたのに、急に食欲がなくなってあっという間に帰らぬ猫となった、ということがよくあります。たとえ猫が健康そうに見えても定期的に健康診断を受けることは重要です。妥協や先延ばしをした結果、猫の病気を見落としてしまい、重大なペットロスに陥ることは避けなければなりません。

トイレ中は避ける
おとなしくしていることをいいことにトイレ中の猫を捕まえるという行為は絶対に行わないでください。
猫がトイレ嫌いになり、粗相の原因になってしまうことがあります。猫を健康にするために病院に連れて行った結果、トイレが嫌いになっておしっこを我慢するようになり、膀胱炎になってしまっては本末転倒です。猫を捕まえるタイミングは、トイレに入っているとき以外が鉄則となります。

キャリーを用いる
猫を病院へ連れていく際は丈夫なキャリーに入れるようにします。
段ボールなど破損しやすいもので済ませようとすると、ふたの隙間から脱走したり、壁を突き破って逃げ出してしまうことがあります。逃げ出した場所にもよりますが、ひとたび脱走した猫を再びとらえることは非常に困難です。不測の事態を避けるためにも、猫を運ぶ時は、必ず丈夫なキャリーに入れるようにします。
なお動物病院に行く前に猫をキャリーでの移動に慣らせておくと、ストレスレベルが低くなると同時に診察時間が短くて済むことが判明していますので、すべての飼い主がマスターすべき必須項目と言えるでしょう。

なお動物病院に行く前に猫をキャリーでの移動に慣らせておくと、ストレスレベルが低くなると同時に診察時間が短くて済むことが判明していますので、すべての飼い主がマスターすべき必須項目と言えるでしょう。
キャリーに慣らしておく

注意点やデメリット
「閉じ込められた」という経験を境にして、それまで好きであったキャリーを嫌いになってしまう可能性があります。その場合は1からしつけをやり直すか、潔くキャリーを別のものに交換します。
おびき寄せる

注意点やデメリット
猫が狭い場所で暴れ、危険な場所に登ってしまう可能性があります。例えば調理器具を置いてある台所の上などです。拘束場所からはあらかじめ、猫にとって危険なものを完全に取り除いておきましょう。また、どこかにぶつかって怪我をしないよう、尖った物や角張った物も全て片付けておきます。
だまし討ちをする

また、膝には乗ってくれるけれど抱っこが嫌いな猫の場合は、あらかじめ膝の上に座布団を敷いておき、その座布団を両脇から挟んで拘束するようにします。ちょうど、バインダーで書類を挟むようなイメージです。
網に入れる

また玉網(たまあみ)を使うというバリエーションもあります。玉網とは、魚をすくい上げるときに用いる柄のついた丸い網のことで、「たもあみ」とか「たも」とも呼ばれます。逃げ回る猫をいったん玉網で拘束し、動かなくなったところで抱き上げ、そのままキャリーの中にストンと落とせば完了です。
注意点やデメリット
洗濯ネットに関しては、「そもそもネットを被せることができるくらいなら、最初からキャリーに入れているだろう!」というツッコミどころがあります。また動き回る猫を一人で捕まえ、ネットの中に入れる事はやや難しいでしょう。非常に古くからあり、多くの書籍で言及されている方法ですが、それほど万能というわけではありません。
玉網に関しては、「猫を虫や魚のように扱うのはイヤ!」と抵抗を示す人がいます。そういう場合は、他の方法を優先して行い、どうしてもうまくいかない時だけ用いるようにすれば、良心の呵責も軽減されるでしょう。
玉網に関しては、「猫を虫や魚のように扱うのはイヤ!」と抵抗を示す人がいます。そういう場合は、他の方法を優先して行い、どうしてもうまくいかない時だけ用いるようにすれば、良心の呵責も軽減されるでしょう。
人工フェロモンを使う
猫のフェイシャルフェロモンを人工的に生成した「フェリウェイ®」という商品があります。2006年に行われた実験では、「フェイシャルフェロモンは見知らぬ環境におかれた猫を幾分か落ち着かせる作用を持つ」という結果が出ていますので、キャリーの中に適量をスプレーしておくと効果が見られるかもしれません。
注意点やデメリット
フェイシャルフェロモンの効果に関しては、上記したように「猫を幾分か落ち着かせる」という結果は出ているものの、「注射を受ける直前の”いやいや”を軽減する効果までは見られなかった」という結果も同時に出ています。フェロモンは決して万能薬ではありませんので、あくまでもおまじない程度に考えておいた方が無難でしょう。
PIBIを活用する
「PIBI」(ピビ)とは「つまみ誘発性行動抑制」の略であり、簡単に言うと「猫の首をつまむとおとなしくなる」現象のことです。飼い主が猫のうなじをやや強めに握ったり、PIBI専用のクリップ(クリップノシス®)を用いると、楽に拘束できることがあります。
注意点やデメリット
PIBIとスクラッフィングを混同しないよう注意が必要です。スクラッフィングとは首をつかんだ状態で持ち上げたり揺さぶったりする荒っぽい手技のことで、成猫に対してやってはいけない拘束方法の一つです。片手でうなじに圧力を加えたら、そのまま強引に持ち上げようとするのではなく、必ずもう片方の手で猫の体重を支えるようにしてください。