トップ猫の文化猫の浮世絵美術館歌川国芳展七婦久人・寿老人

七婦久人・寿老人

 江戸時代に活躍した浮世絵師・歌川国芳の残した猫の登場する作品のうち、七婦久人・寿老人について写真付きで解説します。

作品の基本情報

  • 作品名七婦久人・寿老人
  • 制作年代1847年(江戸・嘉永元年)
  • 落款一勇斎国芳画
  • 板元遠州屋彦兵衛
七婦久人・寿老人のサムネイル写真

作品解説

 「七婦久人・寿老人」(しちふくじん・じゅろうじん)は、ご存知「七福神」(しちふくじん)の一人「寿老人」をご婦人に見立てた大判錦絵です。本家の絵とパロディの絵を同一の画面に配置し、両者の対比を楽しむ「絵兄弟」の一種で、この場合は右上のコマ絵が「本家」、手前の女性が「パロディ」ということになります。
 さて、本家の寿老人は中国の伝説上の人物で、七福神の一人に数えられています。頭が長くて背が低く、巻物をつけた杖と桃、そして長寿や平和のシンボルである鹿を引き連れている、というのが代表的なスタイルです。
 当作品では着物を着た女性を寿老人に見立てていますが、「杖の巻物」が「読み終えた手紙」に置き換わり、「鹿」が「菓子袋を頭にかぶった猫」という具合に置き換わっているようです。背景の文字は 飼猫に かふせる菓子のふくろ角 鹿毛の筆に文の巻物 と読めます。猫の頭にいたずらでかぶせた菓子袋は、鹿の角のつもりなのでしょうか。優しげに微笑む女性の表情が印象的です。着物の模様をよく見ると、1匹を挟んで鹿が向かい合っているデザインになっており、また三毛猫のしっぽは短く、今で言うジャパニーズボブテイルを彷彿(ほうふつ)とさせます。