トップ猫の心を知る猫の習性環境の変化を嫌う

環境の変化を嫌う

 猫の習性の一つである環境の変化を嫌うという点について解説します。
 猫は住み慣れた環境が変化したり、住みかががらりと変わってしまうことを非常に嫌がりますが、猫はなぜこのような特性を持っているのでしょうか?

猫の特性・その理由は?

猫は住空間へ見知らぬものが入ってきたり、住空間事態が変化してしまうことを嫌います。  猫はそもそも、犬は人に付き、猫は家につくという言葉が示すとおり、自分が暮らしている住環境に重きを置いており、環境の変化を極端に嫌います。
 例えば住空間に見知らぬ闖入者(ちんにゅうしゃ)が入ってきたときです。家にお客さんが来たときや飼い主の結婚や出産で同居人が増えたときなど、猫にとって慣れ親しんだ住環境の中に見知らぬ者が入ってくると、「テリトリーに勝手に入ってきて、ずうずうしい奴だな!」という不安な気持ちになるのです。
 また、住んでいる場所自体が変化することも同じように嫌います。例えば野良猫を拾ってきたとき、部屋の隅っこに引きこもって3日ほど身動きをとろうとしないことがありますが、これは住空間が急激に変化したためのリアクションといえるでしょう。人間で言うと、言葉の通じない異国の地に、たった一人で置き去りにされたような不安に近いのかもしれません。
猫にとっての不安材料
  • 住空間に見知らぬものが入ったとき
  • 住空間自体が変化したとき
 さて、猫は住環境の変化に伴う不安を解消するための方法として、侵入者の靴やかばんにおしっこをひっかけ、「ここは私のテリトリーだ!」と誇示することがあります。猫が突然トイレ以外の場所におしっこをした場合は、住環境に何らかの変化がなかったかどうかを確認するとよいでしょう。ちなみに、おしっこの代わりにうんちを用いることもあるので、来客があるときは猫をケージに入れるなどの配慮が必要となります。
 また、旅行先、ペットホテル、引越し、部屋の模様替えなどで周囲の環境が変わると、ストレスで下痢、脱毛、食欲不振、特発性膀胱炎などの症状を示したり、ひどい場合は家出してしまうこともあります。このように猫は「環境の変化を嫌う」という習性がありますので、飼い主としては充分な配慮が必要です。 猫を飼う室内環境
エドワード・リアと猫
「The Owl and the Pussy-Cat」に描かれたFossの挿絵 エドワード・リア(Edward Lear)は、1800年代にイギリスで活躍した画家・詩人です。猫好きとして知られており、イギリスからイタリアのサンレーモに引越した際は、大工に対して前の家と同じ作りにするよう指示を出したそうです。理由は、飼い猫の「フォス」(Foss)が、なるべくストレスを感じないようにするためだったとか。彼も「猫は家に付く」という格言を知っていたのでしょう。ちなみにフォスは、リアの「The Owl and the Pussy-Cat」という作品の中に登場します。

猫の性格と「猫派」の性格

 2010年に行われた調査では、猫好きな人は、ちょうど環境の変化を嫌う猫と同じようにやや引きこもりがちで繊細な感情を持っているという可能性が示されました。
 調査の対象となったのは、合計4,565人の男女。事前に自分が「犬派」か「猫派」かを答えてもらい、44の質問からなる「Big Five Inventory」(BFI)と呼ばれる性格テストを受けました。その結果は以下です。 Personalities of Self-Identified “Dog People”and “Cat People” 「犬派」と「猫派」の性格傾向  両者の性格傾向を比較するため、犬派のグラフ上に猫派の数値をプロットしてみます。 「犬派」か「猫派」の性格傾向・比較図
 全ての項目においてわずかな差が見られますが、特にその開きが大きいのは「外向性」と「神経質」という項目です。性格を示す各用語の簡単な意味を以下に記します。
5大性格特性(Big Five)
  • 外向性 積極的に人と関わったりコミュニケーションをとることができること。
  • 協調性 他の人と協力してチームプレーができること。
  • 誠実性 向上心があり、目的を達成するために努力を惜しまないこと。勤勉性とも。
  • 神経質 感情の触れ幅が小さく、精神的に安定していること。情緒安定性とも。
  • 開放性 新しい物事や経験に対して物怖じしないこと。
 上記した性格特性から考えると、「外向性」の度合いが低く、「神経質」の度合いが高い猫派の人は、やや内にこもりがちで、繊細な感情を持っていると言えるのかもしれません。この事実は、容易に人になつかず、環境の変化を極端に嫌う猫の特性と、奇妙に重なる部分があります。
 「類は友を呼ぶ」とか「ペットはだんだんと飼い主に似てくる」というフレーズはよく聞きますが、人間は自分と同じ性格傾向を持った動物を、知らないうちにパートナーに選んでいるのかもしれません。なお、「5大性格」(Big Five)に関してはネット上で簡易テストもできますので、本当にこの仮説が正しいのかどうかをご自身で試してみてはいかがでしょうか。 5つの性格診断