不適切な爪とぎ行動の危険因子
調査を行ったのはトルコにあるアンカラ大学獣医学部を中心とした共同チーム。猫と人の絆を時として大きく損ない、飼育放棄にまで発展しうる「不適切な爪とぎ行動」の危険因子を探るため、ネットを介した大規模なアンケート調査を行いました。
調査対象
調査対象となったのはフランス国内に暮らす猫の飼い主。条件は「18歳以上」「猫が少なくとも1ヶ月にわたり不適切な爪とぎ行動(週に2回以上)を見せている」「単頭飼い」「爪とぎやキャットツリーなどの爪とぎ用品を少なくとも1つ室内に備えている」とされました。ここで言う「不適切」とは望ましくない物品もしくは望ましくないタイミングでガリガリと爪とぎを行うことです。
回答はウェブアンケート方式で、過去1週間を振り返って爪とぎ行動を実際に目撃したり、状況から爪とぎが強く疑われる回数をカウントして0から6までの7段階で評価してもらうと同時に、行動の強度をVAS(つまみを調整してしっくりくる場所で止める)で評価してもらいました。
回答はウェブアンケート方式で、過去1週間を振り返って爪とぎ行動を実際に目撃したり、状況から爪とぎが強く疑われる回数をカウントして0から6までの7段階で評価してもらうと同時に、行動の強度をVAS(つまみを調整してしっくりくる場所で止める)で評価してもらいました。
調査結果
参加条件を加味し、最終的に猫1,211頭分の回答が得られました。データ解析の結果、以下の項目が不適切な爪とぎ行動の危険因子になっていることが明らかになったといいます。
Yasemin Salgirli Demirbas, Joana Soares Pereira, et al., Frontiers(2024), DOI:10.3389/fvets.2024.1403068
不適切な爪とぎ・危険因子
- 子供の存在家庭内に少なくとも1人の子供がいる
- 遊びの質遊び時間が長い・猫が遊び好き・夜間行動が活発
- 爪とぎ用具の位置用具と同じ室内で不適切行動が起こりやすい
Yasemin Salgirli Demirbas, Joana Soares Pereira, et al., Frontiers(2024), DOI:10.3389/fvets.2024.1403068
不適切な爪とぎの予防策
猫の不適切な爪とぎ行動に焦点を絞った先行調査では、行動増悪の因子として若齢、爪とぎ対象の欠落、猫の習性に関する飼い主側の理解の欠如、行動に際しての正の弱化(罰を与える)が挙げられています。今回の調査では上記とは別のリスクファクターが候補として浮上してきました。
子供の存在
家庭内に子供がいる場合、猫の不適切な爪とぎ行動が増えることが明らかになりました。メカニズムとしては「子どもの存在→猫のストレス増悪→転位行動としての爪とぎ増加」などが考えられます。
しかし今回の調査では猫を迎えたタイミング(子供のいる家庭に猫が来たのか、それとも猫のいる家庭で子供が生まれたのか)、子どもの年齢、猫と子どもの接触の仕方などが深堀りされていません。調査チームもこの点に関しては今後のさらなる追跡が必要であると言及しています。
人と猫との交流は猫から開始したときに長くなりますので、基本的に子どものテンションで猫を追い回すのではなく、猫の誘いに応じる形で交流を始め、猫の気分に合わせて交流を終えてあげるとストレスも少なくなると考えられます。猫に対する子供の扱い方に問題が見られる場合は、大人である保護者が注意・リードしてあげましょう。
しかし今回の調査では猫を迎えたタイミング(子供のいる家庭に猫が来たのか、それとも猫のいる家庭で子供が生まれたのか)、子どもの年齢、猫と子どもの接触の仕方などが深堀りされていません。調査チームもこの点に関しては今後のさらなる追跡が必要であると言及しています。
人と猫との交流は猫から開始したときに長くなりますので、基本的に子どものテンションで猫を追い回すのではなく、猫の誘いに応じる形で交流を始め、猫の気分に合わせて交流を終えてあげるとストレスも少なくなると考えられます。猫に対する子供の扱い方に問題が見られる場合は、大人である保護者が注意・リードしてあげましょう。
遊びの量と質
猫の遊びの質が不適切な爪とぎ行動に関連していることが明らかになりました。具体的には「遊び時間が長い」「猫が遊び好き」「夜間行動が活発」という側面です。
メカニズムとしては遊びによって交感神経が活性化し、「闘争」に関連した神経回路が優位になった結果として爪とぎ行動が増えるという可能性が考えられます。また交感神経とは無関係に狩猟に関連した神経回路のスイッチが入り、その延長線上で爪とぎ行動が出てしまうのかもしれません。あるいはレーザーポインターを使用した遊びに興じた場合、獲物を物理的に捕獲できないことがストレスとなり、代償行動としてしっかりとした手応えのある対象物を破壊してしまうというルートも考えられます。
いずれにしても、遊び自体は猫のストレス解消に不可欠ですが、度が過ぎたり(30分以上)やり方を間違えると(レーザーポインター使用)別の問題行動を引き起こしうることは覚えておいたほうが良いでしょう。正しい遊び方に関しては以下のページをご参照ください。
メカニズムとしては遊びによって交感神経が活性化し、「闘争」に関連した神経回路が優位になった結果として爪とぎ行動が増えるという可能性が考えられます。また交感神経とは無関係に狩猟に関連した神経回路のスイッチが入り、その延長線上で爪とぎ行動が出てしまうのかもしれません。あるいはレーザーポインターを使用した遊びに興じた場合、獲物を物理的に捕獲できないことがストレスとなり、代償行動としてしっかりとした手応えのある対象物を破壊してしまうというルートも考えられます。
いずれにしても、遊び自体は猫のストレス解消に不可欠ですが、度が過ぎたり(30分以上)やり方を間違えると(レーザーポインター使用)別の問題行動を引き起こしうることは覚えておいたほうが良いでしょう。正しい遊び方に関しては以下のページをご参照ください。
爪とぎの場所
不適切な爪とぎ行動は、爪とぎ用具が設置してあるのと同じ室内で起こりやすいことが判明しました。
段ボールがボロボロになっているとか、スクラッチポストの麻紐がボロボロになっているような場合、満たされない指先への「手応え」を求めて近くにあるものを欲求不満のはけ口にしてしまうのかもしれません。
これらの知見を応用すれば、「爪とぎ用具がある部屋に大事なものを置かない」「爪とぎ用具は常に新鮮さを保つ」「爪とぎ用具は複数用意する」という単純な心がけで、これまで不適切な爪とぎだったものが単なる爪とぎになってくれるでしょう。
段ボールがボロボロになっているとか、スクラッチポストの麻紐がボロボロになっているような場合、満たされない指先への「手応え」を求めて近くにあるものを欲求不満のはけ口にしてしまうのかもしれません。
これらの知見を応用すれば、「爪とぎ用具がある部屋に大事なものを置かない」「爪とぎ用具は常に新鮮さを保つ」「爪とぎ用具は複数用意する」という単純な心がけで、これまで不適切な爪とぎだったものが単なる爪とぎになってくれるでしょう。