猫の胸骨異常保有率
調査を行ったのはオランダにあるユトレヒト大学獣医学部のチーム。猫における胸骨異常の保有率を調べるため、大学付属のクリニックを受診した患猫を対象とした大規模なスクリーニングを行いました。
調査対象
調査対象となったのは2019年1月から2021年1月までの期間にクリニックを受診し、胸部エックス線画像がデータベースに保管された合計183頭の猫たち。「胸骨に関連した症状で受診していない」ことが条件とされました。
猫たちの平均年齢は7.3歳、品種はバラバラで短毛種(=非純血種)が112頭含まれていました。また去勢オス89頭、未去勢オス16頭、避妊メス66頭、未避妊メス12頭という内訳でした。
猫たちの平均年齢は7.3歳、品種はバラバラで短毛種(=非純血種)が112頭含まれていました。また去勢オス89頭、未去勢オス16頭、避妊メス66頭、未避妊メス12頭という内訳でした。
調査結果
胸骨を構成している骨(胸骨片)の正常数を「8」としてスクリーニングしたところ、何らかの異常が29%(53頭)という高い割合で見つかったといいます。具体的な内訳は以下です。「漏斗胸」は胸骨が体腔内にめり込んだ状態、「鳩胸」は逆に外側に突き出た状態を指します。
Dirk H. N. van den Broek, Siemone C. Vester, Mauricio Tobon Restrepo, Stefanie Veraa, Animals 2023, 13(7), 1233, DOI:10.3390/ani13071233
X線で見た胸骨異常
- 退行性変性・骨新生=10
・硬化症=5 - 数の異常・胸骨片が9個=7
・胸骨片が7個以下=20 - 形状異常・漏斗胸=6
・鳩胸=2 - 外傷性病変・偏位=3
Dirk H. N. van den Broek, Siemone C. Vester, Mauricio Tobon Restrepo, Stefanie Veraa, Animals 2023, 13(7), 1233, DOI:10.3390/ani13071233
注意すべき胸骨の異常は?
当調査ではおよそ3頭に1頭という高い割合で胸骨の異常が認められました。猫たちは「胸骨に関連した症状を示していない」ことを条件に選別されていましたので、少なくとも飼い主が認識できるレベルの大きな悪影響が即座に出ることはないのかもしれません。とは言え、心配な項目もいくつかあります。
先天異常
生まれつき持っている先天的な異常には数の異常、漏斗胸、鳩胸があります。
胸骨片の多少が健康被害を引き起こす可能性はちょっと考えづらいですが、漏斗胸や鳩胸といった胸郭全体の変形を伴う異常の場合は、肋骨の上下動に影響が出ますので呼吸機能への悪影響が懸念されます。
猫は犬のように散歩をしないので「運動を嫌がる」とか「すぐバテる」などの徴候から胸郭の異常に気づくのは難しいですが、多くの猫はマッサージが好きですので、腹部や胸部を触れるくらいまで親密になれば触診によって早期発見できるでしょう。
仮に胸郭の形状異常が見つかった所で、重症例以外に対してはそれほどできることがありません。無理に運動をさせないなど、猫の体質に合わせたライフスタイルを維持することが重要になります。
胸骨片の多少が健康被害を引き起こす可能性はちょっと考えづらいですが、漏斗胸や鳩胸といった胸郭全体の変形を伴う異常の場合は、肋骨の上下動に影響が出ますので呼吸機能への悪影響が懸念されます。
猫は犬のように散歩をしないので「運動を嫌がる」とか「すぐバテる」などの徴候から胸郭の異常に気づくのは難しいですが、多くの猫はマッサージが好きですので、腹部や胸部を触れるくらいまで親密になれば触診によって早期発見できるでしょう。
仮に胸郭の形状異常が見つかった所で、重症例以外に対してはそれほどできることがありません。無理に運動をさせないなど、猫の体質に合わせたライフスタイルを維持することが重要になります。
後天異常
生後に発生する後天的な異常には退行性変性、外傷性病変、病的変性があります。
退行性変性(骨新生・骨棘 etc)や病的変性(圧潰 etc)は通常、長い時間をかけて徐々に進行するものですので、飼い主が異常に気づくのは容易ではありません。
一方、外傷性病変は「ある日突然」という形で急に症状が出ますので、比較的気づきやすいと思われます。例えば「急に胸元を触られるのを嫌がるようになった」とか「急に香箱座りができなくなった」などです。 当調査では偏位(亜脱臼・脱臼)が3例ほど見つかりましたが、飼い主が気づかないうちに治癒していたようです。胸の中央には胸骨という複数の片からなる骨があり、関節と同じように脱臼や骨折をするという認識があれば、病的な行動の変化にも気づきやすくなるでしょう。
退行性変性(骨新生・骨棘 etc)や病的変性(圧潰 etc)は通常、長い時間をかけて徐々に進行するものですので、飼い主が異常に気づくのは容易ではありません。
一方、外傷性病変は「ある日突然」という形で急に症状が出ますので、比較的気づきやすいと思われます。例えば「急に胸元を触られるのを嫌がるようになった」とか「急に香箱座りができなくなった」などです。 当調査では偏位(亜脱臼・脱臼)が3例ほど見つかりましたが、飼い主が気づかないうちに治癒していたようです。胸の中央には胸骨という複数の片からなる骨があり、関節と同じように脱臼や骨折をするという認識があれば、病的な行動の変化にも気づきやすくなるでしょう。